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その83『交わらぬ想い その6』

 ←拍手のお返事など(H24.8.1) →9話『団らん室にて』
あらすじ
同じリンクシェルに所属するタルタルの男の子、サインとノレン。
リンクシェル活動のスキル上げにて、ふとしたアクシデントからノレンはサインに「何でも言う事を聞く」と約束してしまう。
サインのレンタルハウスにてノレンは唇を奪われ、その敏感な身体を弄られ‥戸惑いながらも悦びの声を上げてしまう。
最初は頑なに拒んでいたノレンだったが、受ける快楽に‥あるいは興味の為に‥徐々にサインを受け入れていく。
やがて、二人は身体を重ね‥そして共に達する。
しかし、達した後の二人は、その気持ちよさに反して心が晴れることはなく‥共に何かを思い悩むのだった。

  

「やっぱり‥‥‥居ない‥」
サインやノレンが参加するリンクシェルの‥定期的に行われる活動‥その最中に。
どこか切なそうに‥そんな言葉を漏らすタルタルが居た。
‥他の誰でもない、サインである。
リンクシェルの活動が始まり、最初は忙しさもあって考えないようにしていたのだが‥
ふと、一息ついたその瞬間に‥脳裏に蘇ってきたのだろう。
‥そう、いつもなら必ず参加しているハズのノレンが、この場に居ない事に。
「‥ごめん、ちょっと気分が悪くて‥少しだけ、休んでいても良いかな‥」
サインは、みんなに声を掛けると‥ゆっくりとその場を離れていく。
丁度場所的にも危うい所ではなく‥単独行動をしても問題は無い。
「‥‥はぁ‥‥やっぱり、僕が‥」
その場を離れつつも‥自然と漏れてしまうため息。
それは‥この場にノレンが居ない事を認識する度に‥漏れてしまうもの。
そして、誰に聞かせる訳でも無く‥まるで、自分に言い聞かせるような‥そんな独り言。
そんな独り言を‥こっそりと聞いていた人が居た。
その人もまた、サインがリンクシェルメンバ-の元から離れた時に、同じ様に離れ‥サインの後を付ける。
当のサインはというと、ノレンの事を考えながら歩を進めていたせいか‥
後ろから付いてくる人が居るのに、気付かなかった。


あの夜‥そう、サインがノレンと一夜を共にした日。
あの日‥ノレンはシャワーを浴びるなりサインのレンタルハウスを後にした。
用があるから、と言ったノレンを‥サインは引き留めようとはせず、そのまま見送ったのだ。
その時は‥まだなんとも思わなかったのだが‥
時間が経つにつれ、サインの心に「不安」という名の影が覆い被さってきた。
‥ノレンは自分の事を、嫌ったのではないか‥
‥明日以降、リンクシェル内でも、冷たく当たってくるのではないか‥
‥それどころか、相手にすらされないのではないか‥
そんな嫌な考えが不安となり、サインの心を苛んでいく。
翌朝になっても不安は払拭されず‥朝、リンクパールの装着を一瞬躊躇った程だった。
深呼吸を繰り返し、勇気を出してなんとか付けたリンクパールだったが‥
‥そこからノレンの声は‥いや、ノレンの声だけが聞こえてこなかった。
一番聞きたい、ノレンの声だけが。
しかも‥その日だけではなく、翌日も‥ノレンはリンクパールを付けなかったのだ。
一日や二日、リンクパールを付けなかった位で‥と思われる方も居るかもしれない。
だが‥サインにとってはそのように容易く思う事などできなかった。
サインが今までこのリンクパールを付けていて、この様な事‥ノレンがリンクパールを付けない日は無かったのだ。
しかし‥現にこうして、二日続けてノレンはリンクパールを付けていない。
‥しかも、それは「ノレンと夜を共にした日」の翌日から‥である。
やはり、ノレンはあの事が原因で‥リンクシェルを付けないのだろうか。
自分では薄々解っていても‥それを認めたくない自分も居て。
結局サインは、ノレンの事を翌日である「今日」まで持ち越す事にしたのだ。
そう‥「今日」はあの夜から三日目‥リンクシェルの活動日にあたる。
いつもはリンクパール上の会話でだけ、やりとりしているメンバー達も‥
活動日の今日は、一堂に会する事になる‥ノレンだって勿論の事だ。
先程、ノレンはリンクパールを付けない日は無い‥と言ったが、活動日にしてもそうだ。
いつもは活動日を大事に思い、他の何よりも優先して参加していた。
だから、サインも‥活動日ならばノレンは必ず来る‥そう信じて、今日という日を迎えたのだ。
しかし‥‥思いに反して今日もノレンは来なかった。
そもそも、このリンクシェルの活動は、絶対参加ではなく‥希望者のみの参加制をとっている。
だから‥と言ってしまえばそれまでだが、過去のノレンを知っているサインにとっては、やはり「おかしい」としか思えない。
他のメンバーからも「珍しくノレンが居ないね」という声は聞こえてきたが‥
どうして来ないのか、という所まで話題にする者は無い‥。
いつも参加しているノレンが、今日は参加していないのに‥みんな、話題に取り上げようともしない事に。
‥みんな薄情だ‥などという考えを、一瞬浮かばせるサイン。
しかし、そんな考えは‥自分がしてしまった事を棚上げしているからにすぎない。
そう、みんながひどい、と言う前に‥自分の方がもっとひどい事をしていたのだから。
ひどい事‥そう、自分は‥
自分はノレンに‥「大罪」を犯してしまったのだから。
だから‥
‥そこまで考えて、サインは足を止める。
ずっとノレンの事を考えて歩いていたせいか‥リンクシェルメンバーが居る場所から相当離れてしまったようだ。
幸いにもここらはまだ危険なエリアではなく、自分一人でも問題は無いが‥
リンクシェルメンバーが探しに来るとなると、迷惑を掛けることになるだろう。
ゆっくりと戻ろうか‥そう考えて、サインが後ろを振り向いたその時。
「やぁ、どうしたの、サイン。‥落ち込んでるみたいだけど」
考えに暮れるあまり、後ろをずっと歩いてきた人物に気付かなかった様だ。
‥もっとも、その人物はシーフをしていて‥音を立てずに歩いていたのかもしれないが。
ともかく‥黙々とここまで歩いてきたサインに対し、「落ち込んでいる」と言って声を掛けてきたのは‥ラケルトだった。
「リーダー‥‥い、いえ、その‥‥僕は‥」
ラケルト‥ラケルト・ハケルト‥勿論サインと同じタルタル族の男の子で、リンクシェルのリーダーをしている。
一見するとのほほんとしていて、頼りなさそうにも見えるが‥その実、根はしっかりとしていて。
いざというときは頼りになり、実際みんなからも頼られているリーダーだった。
「わかった!きっとお腹が減ってるんだよね。ふふ、サインは食いしんぼだから‥」
「ち、ちがいます!」
少々早とちりな所はあったが‥それが素なのか、わざとなのかは解らない‥。
しかし、そんなラケルトの早とちりに、恥ずかしがりながらも慌てて答えたサイン。
少し大きな声を出したからか‥あるいは何か思う所があったのか。
ラケルトの心に「リーダーに聞いてみよう」という思いが浮かび始めていた。
「リーダー、その‥ノレンの事なんですが‥ボク、その‥」
いざ‥リーダーに聞いてみようと思ったものの‥話そうとした途中ですっかり言葉が止まってしまう。
聞くと決めたものの、何と言えば良いのか‥どこまで言って良いのか‥。
流石に「三日前にノレンとえっちして、それ以降リンクシェルに顔を出さないんですが」等と言える訳もない。
そんなサインにラケルトは、「そういえば」とばかりに話し始める。
「ノレンなら‥‥ん‥」
しかし‥ラケルトもまた、そこまで話して‥言葉を詰まらせる。
何かを考える様に、首をかしげると‥何か思い浮かぶことがあったんだろうか。
ややあって、続きを話し出した。
「‥ここの所、リンクシェルに来ないね。どうしたのかな‥‥サインは何か知ってる?」
まるで「サインは何か心当たりがあるでしょ」とでも言う様に‥探りを入れてくるラケルト。
そんなラケルトの言葉に対し‥サインは正に「核心を突かれた」とでも言う様にうなだれてしまう。
うなだれたサインを襲う「自分のせいだ」という思い‥。
自分が全て悪いのだ、自分があのような‥あのような卑劣なことをしたから‥あの様な結果になったのだ、と。
やがて‥サインはうなだれたまま、ぼそぼそと話し始める。
「その‥ボク‥‥ノレンに酷い事を‥しちゃったから‥‥‥だから‥ボク‥」
その声は、少しくぐもっていて‥時々嗚咽の様な声さえ混じっている。
サインは俯いたままで、その表情は見えないが‥もしかしたら泣いているかもしれない。
事実、ラケルトが「サインとノレンとの間の出来事」を知っていたかといえば‥そうではなくて。
単にノレンがリンクシェルに顔を出さなくなった前日に‥そう、二人の間であった出来事を覚えていて‥の勘ぐりだったのだ。
だから‥先程のサインの言葉から、明確に「何をしたのか」まではラケルトにも解らなかったが‥
なにやらサインがノレンに悪い事をしたようだ、という事までは解ったらしい。
ラケルトは、一瞬考えを挟むと‥サインの‥震えている肩に、ぽんと手を乗せる。
肩に触れられても、俯いたままのサインに‥ラケルトは優しい声で話し始めた。
「サインがノレンに何をしたのかは‥解らないけど。‥でも、サインは充分‥反省しているんだろう?
 酷い事や‥悪い事をしたと思うなら、謝ればいい。謝って‥それでもダメなら‥それから考えればいい」
ラケルトの言葉に‥サインはしかし、顔を上げることは出来なくて。
涙をぽろぽろと流しながらも‥何度も何度も、頷いていた‥。


「こんな時間に‥ノレン、驚くかな‥‥ううん、会って‥くれるのかな‥」
ラケルトの言葉を受けて‥サインはそのままジュノへと戻ってきた。
本来なら、リンクシェル活動が終わってから‥と思っていたサインだったが‥
ラケルトに「ほらほら、早く行った」と背中を押されて‥言われるままに飛んできたのだ。
しかし‥ノレンの居るレンタルハウス、その前まではまっすぐ来る事が出来たのだが‥
‥そこから先の一歩が踏み込めなかった。
扉を開けることが出来ない。
扉をノックすることができない。
声を掛けることも出来ない。
それは‥ノレンに断られてしまったら、という不安が‥サインを押しとどめていたのだろう。
もし拒絶されたら。
もし「会いたくない」と言われたら。
自分は‥‥と、サインはそこまで考えて、慌てて首を振る。
まだ会ってもいないのに、最初からそんな弱気でどうするんだ、と。
例え「会いたくない」と言われても、「ごめん」と必ず言おう、必ず謝ろう‥サインはそう考えて‥
‥レンタルハウスの扉をノックした。
自分のノックする、「トントン」という音が高く響き‥
ややあって「はーい」という声が返ってくる。
‥声で解る‥ノレンの声だ。
やがて、扉の方へと近づいてくる音が聞こえ‥そして‥扉が開かれる。
「どちらさ‥‥ん、サインじゃないか。こんな時間にどうしたんだ?」
自分に対して掛けられる‥その声に。
久しぶりに聞こえた‥その声に。
サインはしかし、返す言葉が出て来ない。
口を開いても、不思議と声が出て来ないのだ。
‥いや、それ以前に‥声ではなく、涙が溢れてくる。
勿論‥悲しみの涙ではなくて‥嬉しい涙が。
それというのも‥ノレンの声が、決して自分を嫌っている様なものではなく‥
いつもの親しみの籠もった声だったから。
ノレンは自分の事を嫌っている、とばかり思っていたサインにとって‥それは嬉しい声だった。
「お、おい、どうしたんだよ‥‥と、とりあえず中に入れよ‥な?」
そんなサインを‥慌てて部屋の中へと入れようとするノレン。
流石に扉の前で泣かれては‥と思ったのだろうか。
慌ててサインを部屋の中へと引き入れると‥ちゃんと扉を閉め、鍵を掛けたのだった。

「‥か‥‥風邪‥?」
居間に通されたサインは、イスに腰掛け、出されたウィンダスティーを飲みつつ‥ノレンの話を聞いていた。
だが、ノレンが話し始めて間もなく‥なんとも間の抜けた声を出してしまう。
それは、ノレンの口から、リンクパールを付けていなかった「本当の理由」を聞いたからで‥
まさかそれが「風邪を引いたから寝ている」などというものだったとは、思いもよらなかったからだ。
「あぁ‥俺も何年かぶりに風邪をひいちまってな。全く‥なんとかは風邪ひかない、って言うもんだけどよ」
サインの驚き様を余所に、ウィンダスティーをすすりつつも明るく言うノレン。
その様子から見ると、風邪はほぼ治りつつあるようだった。
サインもまた、はっきりと「理由」が分かった事で‥安堵のため息をついていた。
てっきり「あの事」が尾を引きずって、ノレンを苦しめていたと‥そう考えていたのに‥
蓋を開けてみれば、当のノレンは‥単なる風邪だったのだから。
「良かった‥ボクはてっきり、ノレンが、その‥ボクを嫌がってリンクパールを付けないのかと‥」
サインは胸をなで下ろすような素振りを見せたあと、穏やかな顔でそう言ってみせる。
その言葉に‥ノレンの顔が一気に赤くなった。
‥恐らく、三日前の「あの事」を思い出したのだろう。
「そ、そんな事は‥無い‥けどよ‥。俺は‥別に‥その‥‥。
 そ、それに‥風邪をひいたのだって‥サインのせいじゃないからな。俺が‥悪いんだから‥」
言葉からも‥そして、顔を赤くして照れながら言うノレンの様子からも‥
決してノレンはサインを嫌っているのではない、というのが解る。
そんなサインの様子に安堵し、そして‥
‥しかし、どこか胸に引っかかるものを感じるサイン。
そう‥胸に大きな「棘」が食い込んでいるかのような‥そんな不快感を感じるのだ。
「でも、ヘンだな‥リーダーにはちゃんと風邪で休む、って言っておいたんだけどな‥聞いてないのか?」
考えるサインに、ノレンは考えつつも、そんな言葉を投げかける。
ノレンのその言葉を聞いて‥サインの脳裏にはひらめくものがあった。
確かに‥サインにはここ数日間、他人の言葉が耳に入って来ない様な‥そんな感覚はあった。
‥ノレンの事ばかりを考えて、上の空だった‥と言っても良い。
そんな様子のサインを、ラケルトとて気付いていたのだろう‥
普段とは様子が違い、ぼーっとしているサインを気遣いながらも‥
ノレンとの事だと目星を付け、そして‥アドバイスを送ってくれたのだ。
そんなラケルトに、サインは感謝しながらも‥
‥改めてラケルトの言葉を思い出した。
そう‥「悪い事をしたなら、謝れば良い」という言葉を。
‥確かに‥ノレンは「サインを嫌った為」にリンクパールを付けなかったのでは無かった。
現に‥ノレンの様子を見ても、サインを嫌ってはいないだろう。
だが‥サインの「ノレンに対する罪」は‥確かにあるのだ。
‥そう、ノレンがどう思おうが‥サインには「抱える罪」があり‥
そしてこれからも、思い出してはサインを苛む事だろう。
そうならないためにも‥そして何より‥
サインは本当にノレンの事が好きだから‥だから‥
‥罪を告白せねばならない。
‥謝らねばならない。
‥例え、どんな怒りを‥どんな罵声を浴びようとも‥
‥ノレンに告げねばならないのだ。
サインは改めて決心すると‥持っていたウィンダスティーを置き、そして‥
‥神妙な面持ちで、ノレンに向けてゆっくりと口を開いた。
「ノレン‥‥聞いて欲しい事が‥あるんだ」

「お‥お、おい、何してるんだ、サイン!」
サインのいきなりの挙動に‥ノレンは慌てて大きな声を出してしまう。
それもそのはずだろう‥いきなりサインがイスから降りると、床に座り‥上半身を折り曲げ、額が床に付く程まで下げて‥
‥所謂「土下座」の体勢を取ったのだから。
ノレンもまた、サインのそばに駆け寄ると、慌てて上半身を起こそうとする。
しかし‥サインの意志は固い、とでも言う様に‥そのままの体勢で話し始めた。
「ボクが‥ボクが全部悪いんだ。だから‥謝らせて欲しいんだ。‥ごめん‥ごめんなさい、ノレン」
静かだが、しっかりとした「意志」を持った声で話すサイン。
‥その様子に「ただごとではない」とノレンも思ったのだろう。
更に慌てながら‥サインを引き起こそうとする。
「解った‥解ったから、とりあえず頭を上げてくれよ。‥話はそれからだ‥な?」
ノレンのその言葉に‥ゆっくりと顔を上げるサイン。
しかしその表情は‥悲しそうな‥辛そうな‥そんな負の感情が混ざり合ったものだった。
先程迄座っていたイスに戻そうと、サインの手を掴んでいたノレンだったが‥
サインが正座のまま動こうとしないのを見ると、仕方無く‥ノレンもまた床の上に座り込んだ。
座ったノレンを見て、サインは「聞く体勢になった」と思ったのだろうか。
サインはぽつりぽつりと話し始めた‥‥己の「罪」を。

 ノレン‥そもそも、事の発端の‥スキル上げのことは覚えてるかな‥
 あの時、ボクはキミに片手剣を貸したね‥そう、お友達に作って貰ったという片手剣を
 あの片手剣はね‥そもそも、最初から壊れていたんだよ‥以前にボクが折ってしまっていたんだ
 でも‥お友達には「壊れちゃった」なんて言えなくて‥仕方無く、ボクが付け焼き刃で直したんだ
 使えなくても‥持っておく位なら問題は無かったから‥
 それから‥スキル上げの時に、ノレンが‥片手剣を持ってない、って聞いて‥ピーンときたんだ
 この片手剣を貸して、ノレンが片手剣を壊したようにすれば‥
 ‥ノレンはボクに‥申し訳なく思って‥その‥興味を持ってくれるかな、って‥
 でも‥ノレンは‥「何でも言う事聞く」って言ったから‥その言葉にボクは‥ボクは‥

「本当‥‥なのか」
それまで、黙ってサインの話を聞いていたノレンだったが‥
サインがそこまで口にしたところで‥横やりを入れるように口を開いた。
穏やかな表情を装い‥口調だって抑えてある。
だが‥まるで「聞かずにはいられない」そんな心を胸にして、サインに尋ねるノレン。
それもその筈だろう‥自分が「罪滅ぼしのために」と行ったことが‥
‥実は、サインの「罠」に掛かっての事だったと解っては。
「‥‥うん‥‥本当‥だよ‥」
勿論、サインとてもう嘘はつけない‥いや、つかないのだろう。
申し訳ない思いを表情にしながらも‥はっきりと呟くサイン。
‥そんなサインの言葉を聞いたノレンは‥
「お前‥!‥‥俺は‥俺は‥‥くうッ!」
先程迄の穏やかな表情を剥がすかのように‥ノレンの表情は怒りのそれへと変わる。
だが‥怒りのみではない‥どことなく‥そう、悲しみを伴う怒りの表情。
そんな複雑な表情をしながらも‥ノレンは叫ぶ。
強く拳を握りしめるその姿は‥まるでこれからサインに殴りかからんとするかの様にも見える。
てっきり「殴られる」と思ったのだろう、サインはぎゅっと目を閉じたが‥いつまで経っても殴られる気配は無かった。
ノレンは、やりきれない何かをぶつけるように、その拳を床へと打ち下ろしたのだ。
床の堅い感触を拳に感じながらも‥もう一度「くそっ!」と言葉を吐き‥
その瞳からはぽろぽろと涙をこぼしていた。
‥その涙は‥勿論、拳に感じる痛みのせいでは無い。
身体に感じる痛みではなく‥心に感じる痛み。
それがノレンの涙となって‥床に雫の粒を降らせていたのだ。
「ノレン‥ごめん‥ごめんなさい、ボク‥」
そんなノレンに対し‥再び謝りの言葉を述べるサイン。
床に拳を打ち付けたまま、動かないノレンに近寄ろうとしたのだが‥
「‥帰れ‥‥‥帰ってくれ」
俯いたまま、静かに‥しかし強く呟くノレンの言葉に‥そして気迫に。
‥サインは近寄ることが出来なかった。
ノレン、サイン‥共に言葉を発することが出来ず‥静かな時間が流れていく。
いや‥正確にはさほどの時間は流れていないのだろう‥
‥ただ‥ノレン、サイン‥共に‥長い時の流れを感じる位に‥空気は張り詰めていて。
そんな中‥サインはゆっくりと腰を上げる。
「‥‥うん‥‥‥ごめんなさい‥でも‥」
「‥俺を‥一人にしてくれ‥」
去り際にもう一度謝ろう‥そう思ったサインの言葉を。
‥ノレンは無下に遮ったのだった‥。

ノレンのレンタルハウスを出た後‥サインは慌てて自分のレンタルハウスへと戻った。
レンタルハウスへと入るなり‥寝室に向かい、ベッドに横になって‥わんわんと声を立てて泣いたのだ。
‥かすかな時間でも、掴むことが出来たと思った‥ノレンの心。
だが、それはたった今‥指の間をすり抜ける砂のように‥手の平からこぼれ落ちてしまった。
‥例えかすかな時間でも、得ることが出来た為に、失ってしまった時の反動が大きかったのだろう。
今、ノレンの心は‥ぽっかりと穴が空いてしまっていた‥何をどうしても、埋められそうにない穴が。
今のサインには‥何も出来はしなかった‥
ただ、泣くことしか‥出来なかったのだ。


  
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