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星芽寮交響曲

9話『団らん室にて』

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4月28日 夜
 

「ごちそうさまでした‥っと」
いつもの夕食‥友達と一緒に食べる、美味しくて楽しいひととき。
‥そんなひとときも、やがては終わる‥当たり前だけどね。
食べ終えたみんなは、それぞれ「ごちそうさま」と手を合わせると‥
ゆっくりとくつろぐ間も無く席を立っていく。
‥いや、別にみんな急いでいる訳じゃないんだよ。
その‥普段からこんな感じだし。
それでも、特別今日は、みんなの動きが早い様に感じる。
それはやっぱり‥うん、今日はみんな普段よりもウキウキしているから‥かな。
だって今日は‥っと、いけない。
まずは食べ終えた後のお皿を片付けよう‥うんうん。
ヤダンやディル、フリストも先に片付けに行っちゃったし‥僕も遅れないようにしないと。
と、言う訳で‥食器を片付けようと、厨房前のカウンターへと来た僕だったけど‥
カウンターの向こうにふと、いつもの微笑みを浮かべている人を見かけて‥僕は声を掛ける。
「ごちそうさまでした。今日の晩ご飯も、美味しかったよ」
食器を返す為に、トレイごとカウンターに置いて‥僕はその人に話しかける。
いつも感じる気持ち‥美味しい料理を作ってくれる事に対しての、感謝の気持ちを込めて‥
僕は毎日、その人に「ごちそうさま」って言うんだ。
「はい、食器の返却ありがとう。それと‥ふふ、フルキキさんも喜ぶわ」
僕の言葉に、そう言って微笑んでくれるのは‥タルタルの女性、コナナ。
コナナは、僕と同い年なんだけど‥こうしてここ、星芽寮で職員として働いている。
もっぱら調理補助とか、あとは売店の店員さんとか‥フルキキさんのお手伝いをしてるんだ。
いつも一生懸命で‥見ている僕だって、応援したくなっちゃう。
あ、でもね‥コナナとは昔からの知り合いで、とかじゃあ無いんだよ?
知り合って仲良くなったのは、そう、少し前の事で‥
‥うーん、まぁ、その話はまた機会があったら話すね。
いや、そんなに大した出来事じゃ無いんだけど‥ね。
それよりも‥
「ホント、何て言うのか解らないけど‥あのサラダ、美味しかったよ」
前にも言ったかもしれないけど、僕は基本的にサラダが苦手で‥いや、ちょっと違うね。
星芽寮に来る迄は苦手だったんだけど、ここ‥星芽寮の食事を食べ始めて‥意識が変わった。
味付けだったり、食感だったり‥それが少し違うだけで、大きくイメージも変わってくるって事に気付いたんだ。
今じゃ、本当に美味しくサラダを食べさせて貰ってる‥うん。
そう考えると、調理師さんって凄いなぁ、なんて思うよね。
「今日のサラダは‥ふふふ、あれは私が作ったのよ。美味しいって言ってくれてうれしいわ」
僕の言葉に、口に手を当てて「ふふふ」って笑うコナナさん。
料理を褒めて貰って嬉しい‥ってところなのかな。
でも、お世辞じゃなくて美味しいもんね‥うんうん。
「そうなんだ!僕も、あのサラダなら毎日‥っと、いけない。
 みんなと待ち合わせしてるから‥ごめんね、コナナ」
そうだ‥この後二階の団らん室で、みんなとお話をする約束‥
‥いや、約束って言い方はおかしいかな‥どちらかというと「定例行事」みたいなものだし。
とにかく、僕はコナナに手を振って食堂を後にしたんだ。
走らない程度に慌てて、食堂を出て‥ね。
‥僕の事を後ろからずっと見つめていた、コナナの視線になんて‥気付きもせずに。

星芽寮のほぼ中央に位置する‥一階から二階に上がる階段。
その階段を上がった目の前にあるのが‥団らん室なんだ。
大体‥そうだなぁ、僕達の部屋、二つ分くらいの広さがあるかな?
それくらいの広さの中に、いくつかのテーブルとソファがセットになって置かれていて‥
それぞれ、何人かで集まってお話とかしているんだよ。
僕達‥えっと、ヤダン、フリスト、ディル、そして僕の計四人も、そんなセットの一つに座っていて。
夕食後は、特別用事が無い限り‥いつもここでしばらくお話とかしてるんだ。
お話の内容?そうだね‥大体お仕事の事とか、遊ぶこととか‥そういうのが多いかな?
「さて、ピノも来たし、まずは‥」
さて、今日のお話は、っていうと‥やっぱりあれだよね。
ヤダンの言葉に、皆が皆‥一同に嬉しそうな顔をしていて。
‥ふふ、だって‥ね?やっぱり嬉しいもの。
「初任給の話、だナ」
ヤダンの言葉に、嬉しそうに言葉を続けたのは‥ふふ、フリストだね。
そう‥今日は4月28日、僕達が貰う初めてのお給料の日!
‥あ、ちょっとだけ注釈を入れておくね。
本来お給料は、毎月の30日に貰うんだけど‥4月は30日と、それに29日もお休みだから‥
だから今日、28日が給料日、って訳なんだ。
「やっぱり‥はじめて貰う給料、っちゅうのはええモンやわなぁ」
ディルの言葉に、みんなが頷いて‥うん、お給料を貰えた喜びを噛みしめてるみたい。
一ヶ月‥僕達が働き始めて、もう一ヶ月になる‥いや、「まだ」一ヶ月、なんだけど‥。
‥僕も、少しは‥お仕事の腕も上がった‥かなぁ。
勿論、先輩方には及ばないし‥胸を張って一人前だ、とは到底言えないし‥。
それでも‥うん、やっぱり給料を貰えるのは嬉しい。
だって‥はじめて自分で稼いだお金だものね。
「ね、ネ、みんなは初めての給料‥どうするんダ?」
皆が喜びの表情に満ちた中、フリストが一つの疑問を掲げる。
初めての給料、何に使う‥かぁ。
僕はやっぱり‥
「俺は‥サンドに居る母さんに仕送りする‥かな。‥うん」
最初にそう言ったのは‥ヤダンだ。
万感の思いを込めて‥なんて言ったら大げさかもしれないけど、とても優しい表情を浮かべながら‥頷いている。
そういえば‥ヤダンの母さんはサンドリアに住んでいるんだっけ。
‥確か、お父さんが亡くなって‥一人で住んでる、って聞いたけど‥
「ね‥ヤダンは、その‥寂しくない?ずっとお母さんと離れてるのって‥」
僕はふと‥思ったんだ、その‥寂しくないのかなって。
‥お母さんも‥それに、ヤダンも。
そんな僕の質問に‥ヤダンは一瞬沈んだ顔をしたけど‥でも、すぐにいつもの顔に戻って話し始めた。
「お‥俺は別に、その‥‥大丈夫だよ、みんなが居るし、さ。
 でも、それを言われると‥母さんはどうだろう、って思ってしまうな‥。
 母さんは一人でサンドリアに住んでいるし‥」
ヤダンの言葉に、僕もまた‥サンドリアに居る筈の両親を思い出してしまう。
お父さんもお母さんも‥元気にしているかな?寂しくしていないかな?
‥きっと大丈夫だよね、大好きな仕事をして‥楽しんでいるよね、きっと。
僕は心の中で「大丈夫」って区切りを付けると‥ふと、周囲を見渡してみる。
見ると、僕だけじゃない‥みんな親の事を考えている‥のかもしれない。
みんな、何も言わずに少しだけ俯いて‥まるで思いに浸っている様にも見えたから。
そんな静かな中、声を上げたのが‥ディルだった。
「ヤダンは優しいんやな。うん、お母さん思いで‥ええやっちゃ」
口調は、どことなくしみじみとしている‥様に聞こえて。
‥決してからかっている訳では無いのは解るんだけど‥改めてそう言われるのが、ヤダンには照れくさかったみたい。
「べ、別に良いだろ‥‥そういうディルはどうするんだ?仕送りとか‥するのか?」
ヤダンは、顔を赤くしながらも‥照れ隠しをするみたいにディルに聞き返していて。
ふふ‥そんな様子を見てると、つい‥微笑みがこぼれちゃうね。
うん、なんていうか‥ヤダンはやっぱり可愛いな、なんて思っちゃって。
対するディルは、っていうと‥うん、予め答えを持っていたみたいだね。
ヤダンの問いに、考える間もなく話し始めたんだ。
「ボクも‥故郷におる両親に送るつもりや。‥やっぱり、今まで世話になってきたんやしなぁ。
 でも、場所が場所やからな‥そう簡単には戻られへん。せめてもうちょっと、交通の弁が良ぅなったらええんやけどな」
ディルも、やっぱり‥どことなく気恥ずかしいんだと思う。
最初はちょっと照れくさそうに答えていたけど‥話の後半になるにつれ、表情は真剣なものになっていった。
‥まるで深刻そうな思い‥いや、切なる願いを思う様に。
でも、確かに‥確かに、そうだよね。
ディルの故郷は、確かオルジリア大陸‥ここ、ミンダルシア大陸からは遠く離れている‥。
それだけじゃない、海路の困難さ、って言うのかな‥僕も良くは知らないんだけど、
今はオルジリア大陸へ向けて出る船は無くて‥一旦エラジア大陸の方へと向かう必要がある。
エラジア大陸の‥アトルガン皇国だっけ、そこで船を乗り換えてオルジリア大陸へ向かう必要があるんだけど‥
‥問題は、そのエラジア大陸に向けて出る船の便だって少ない、って事だ‥。
ディルが故郷に帰るとなると、相当な時間を要する事になるし‥大変だよね‥。
「ディル、その‥」
僕が少し、寂しそうな‥そんな声で話しかけようとしたから‥かな。
ディルは慌ててにっこりと微笑むと、僕の言葉を遮る様にして‥言葉を放つ。
「あ、慰めの言葉とかはいらんで?ボクも別に寂しぅは無いしな。
 それに‥故郷には三人の弟妹が居るんや。両親かて寂しい、いう事は無いやろ、うん」
嬉しそうに‥懐かしそうに‥ディルはそう言ったんだ。
でも‥びっくりした、ディルには三人も兄弟が居たなんて!
‥確かに、言われて見ると‥うん、ディルって時折「お兄さん」っぽく振る舞うときがあるんだよね。
それにしても‥
「凄いな‥三人も兄弟が居るのか‥一人っ子の俺には、羨ましいよ」
僕の言いたかった事をまるまる言ったのが‥ヤダンだ。
僕もやっぱり一人っ子で‥正直言うと、お兄さんやお姉さん、弟や妹に‥憧れてたもんね。
ふふ、子供の頃は「お兄ちゃんかお姉ちゃんが欲しい」って言って、お母さんを困らせてた‥
そんな事をお父さんに言われたっけ‥恥ずかしい話だけどね。
あ、そういえば‥兄弟って言えば‥
「そういえば‥フリストもお兄さん、居たんだっけ」
僕は「そういえば」とばかりに思い出して‥フリストに聞いてみる。
いつかフリストに聞いたんだよね‥冒険者をしてるお兄さんが居る、って。
「あ‥‥ン‥い、居るよ、兄さん‥がネ。でも‥‥」
僕の言葉に、なんとなく歯切れの悪い言葉を返すフリスト。
一瞬見せた、悲しそうな‥切なそうな表情に‥
なんとなく‥その‥フリストはお兄さんの事に触れて欲しくないような‥そんな印象を受けて。
それに、何より‥
「そ、それよりもサ、ピノはどうするんダ?仕送りするのカ?」
慌てて話題を変える‥いや、戻すように、フリストはそう言ったんだ。
‥フリストが嫌がっているなら、無理に聞くのは良く無いし‥
ここは一つ、話に乗るとしよう‥うんうん。
‥とは言ったものの‥。
「あ‥えーっと、僕は‥‥仕送り、したいんだけど‥」
突然話を振られたから、じゃなくて‥
なんていうのか、僕の中には「別の問題」があったから‥
だから、言葉を返すのを戸惑ってしまう。
「ん、どうしたんだ?」
はっきりと答えを言わない僕‥そんな僕の様子を、ヤダンは不思議に思ったみたい。
責める訳でも無く、不思議そうな顔をして聞いてきて‥
‥うん、相談‥してみようかな。
「うん、その‥僕、両親に言われたんだよね‥「仕送りとかしなくていい」って。
 その‥僕をほったらかして好きな仕事をしているんだから、って。‥でも、そう言われても僕は‥」
そうなんだ‥。
両親との別れ際‥なんていう程の間際じゃないけど、両親を見送る少し前に‥僕は言われたんだ。
好きこのんで仕事をしに行く、その為に僕と離れて‥迷惑を掛けるんだから、仕送りなんてしなくていい、って。
‥僕の方から両親に「好きな考古学の仕事をして」と言ったんだから、そう言われるのも違う気はするんだけど‥
でも、両親がそう言ったのも、僕を思っての事なんだと思う。
だから‥いや、それでも‥折角の初任給なんだから、って‥思うんだよね‥。
「なるほどネ‥でも、ピノは別に両親に対して怒ってる‥なんて事は無いよネ?」
フリストは、僕の言葉を聞いたから‥かな。
腕を組んで考えながら‥そう言ってくれてる。
「それは勿論。感謝の気持ちはあるし、だから‥」
勿論‥怒りなんて感じる訳が無いよ。
でも、ああもはっきり「仕送りはしなくていい」って言われたら‥
そう考えると、悩んじゃうんだよね‥。
そんな風に思い悩む僕に、ディルが‥素晴らしい案をくれたんだ。
「せやったら。お金やのぅて、なにか‥うん、お礼の品物を買うて贈る、言うのはどない?」
お礼の品物を‥買って贈る、かぁ。
なるほど、それなら‥うん、それなら!
「なるほど!それなら‥うん、それなら良いよね!きっと‥両親も喜んでくれる‥よね」
そうだ‥それは盲点だった。
なにか記念になる様な‥それでいて両親が喜びそうな‥
む、難しいかな‥い、いや、何か考えて、うん‥贈ろう‥うん!
「うんうん、きっと喜ぶヨ、ピノのお父さんもお母さんモ」
フリストも‥にこにこしながらうんうん、と頷いてくれて。
ふふ、早速明日のお休みの日にでも‥森の区あたりに買い物に出かけようかな。

「そういえばサ‥部屋の話なんだけド‥」
初任給に始まった話も、次々とその内容を変えていって‥
今また、フリストの口から新たな話が振られる。
部屋の話‥って、勿論今僕達の住んでいる部屋、の事だよね。
みると、フリストの様子は‥どことなく真剣そうな表情で‥
‥どうしたんだろう?
「‥そのサ、みんなは困る事とカ‥‥無イ?」
困る事‥かぁ‥。
ふと、一瞬だけ‥その‥前にあった「ひとりえっちの話」を思い出した僕。
‥は、恥ずかしいけど‥その‥男の子にとっては深刻な問題だよね。
ま、まぁ、あの問題はとりあえず片付いたし‥何より、フリストの言う「問題」じゃ無いと思うし‥ね。
「俺は‥ピノと一緒の部屋だけど、別段困った事は無いなぁ‥」
そう言ったのはヤダンで‥ふふ、同居者としてもそう言って貰ったら嬉しいよね。
僕はヤダンの言葉に、にこにこと微笑んで「ありがと」って答える。
そんな僕の言葉に、ヤダンは顔を赤くしてる‥ヤダンってば、本当に照れ屋なんだから。
「ボクは‥ヒーラと一緒やけど、うん‥ヒーラも優しくて良い子やし、困った事は無いなぁ」
まるで「問題無い」とばかりにそう言ったのは‥ディルだ。
ディルと一緒の部屋の、ヒーラは‥確か‥そうそう、手の院に勤めている子だっけ。
大人しくて、優しくて‥僕も時々お話しするけど、とっても良い子なんだよね。
‥いつも気配りが出来て、言葉遣いだって丁寧だし、歌も上手いらしいし‥って、それは関係無いか。
とにかく‥みんなは「困る事」は無さそうに思うけど‥
‥フリストには「困る事」がある、って事なのかな‥?
「フリストは‥何か「困る事」がある‥の?」
僕はフリストに対して尋ねてみるけど‥
「あ‥いヤ、そノ‥‥なんて言うのカ‥」
フリストは声を小さくして、困った様にそう言うだけで。
‥本当に、一体どうしたんだろう‥。
何か‥言い辛い事があるのかな?例えば同居人‥えっと‥
フリストの同居人は、確か‥テルだったよね、僕と同じ目の院の。
テル君だって良い子だし‥別に問題とかありそうな気はしないけど‥うーん。
「同じ部屋に住んで居るのは‥テルだよね?テルと‥なにかあったの?」
僕ははっきりしないフリストの様子に、思い切って聞いてみる。
もしかしたら二人の相性が悪くて‥とか、問題があって‥とかかもしれないし。
でも‥問題があったとしても、それを改善できれば‥とは思うしね。
「あ‥ち、ちがうんダ。テルは悪く無いんだヨ、その‥そうじゃなくテ‥」
‥う‥ん?テルが悪い訳じゃない‥?
それでも発生する問題‥いや、困った事、だっけ‥それって一体‥
フリストの話から、全然「困った事」が見えてこない僕‥いや、僕達。
ヤダンも、ディルも‥首をかしげながら考えていて‥うん、思いつかないみたい。
そんな僕達の様子を見たから‥かな。
フリストは小さなため息を「ふゥ」とついて‥そして。
‥小さな声で喋り始めたんだ。
「その‥サ。みんなはどうしてるノ‥?‥お、オナニーとカ‥」
『え、ええッ!?』
フリストの‥顔を真っ赤にして言った、その言葉に。
僕達は揃ってびっくりして‥大きな声を出してしまう。
‥あわわ、僕達が突然大きな声をだしちゃったから‥周りに居た人達も僕達に注目して‥
ヤダンが「すいません、何でも無いです」って言って謝ってる‥。
ヤダンの言葉に、皆それぞれの会話に戻っていったみたいで‥徐々に周囲の視線は無くなっていったけど‥それにしても。
まさか‥いや、やっぱり「そっちの話」だったなんて。
確かに‥確かにそれは「困った事」だけど‥。
‥うーん、何と言って良いのか‥フリストも、みんなも‥顔を真っ赤にしてる‥。
だ、だって‥話の内容が内容、だものね‥。
そんななんとも言えない雰囲気の中‥一番に喋り始めたのが、ディルだった。
「ボクは‥その‥‥ヒーラが寝てからしとる‥よ。ヒーラはその、寝付きが良いし‥。
 あとは、どうしても、その‥我慢でけへんようになったら‥トイレの個室で、とか‥」
なるほど、トイレの個室で‥かぁ。
あそこなら一人っきりに‥‥な、なれるのかな‥。
‥他の人がトイレに入ってくる度に、ビクビクしちゃいそうな気がするけど‥。
でも、同居者が居る環境じゃ‥どうしても出来ないものね。
「なるほド‥。オイラの方は、テルが遅くまで勉強してるから、なかなカ‥
 でも、トイレかぁ‥ちょっと考えてみるヨ」
確かに‥テルは勉強家だもんね。
遅くまで勉強してる、って言うのも‥解る気がする。
今は確か、天文学の勉強をしてる、って言ってたっけ‥凄いなぁ。
‥っと、テルの話は良いとして‥うーん。
「そういえば‥ヤダンとピノは、ど、どないしてるん‥?」
顔を赤くしながらも、僕達にそう尋ねてきたディル。
そりゃあまぁ、ディルとフリストの話が終わったら‥次に話が振られるのは、当然僕達だよね。
僕とヤダンは‥互いに顔を見合わせると‥「仕方無いよね」と言うかの様にこくりと頷いた。
うん‥まぁ、正直に話そう‥うん。
「あのね、僕達は‥その、声を掛け合ってしてるんだ。‥寝る前に「してもいい?」って。
 で‥お互い気にしないか、もしくは‥一緒にしてる‥」
あれから‥そう、ヤダンにひとりえっちを教えてから。
‥ヤダンから一つの提案があったんだ‥「また、お互いにしあわないか」って。
僕がヤダンのちんちんを扱いて‥ヤダンが僕のちんちんを扱く‥
それは確かに‥他人に触って貰う、して貰うのは気持ち良い事だけど‥でも。
‥それはやっぱり、しちゃいけない事じゃないかなって‥そんな気がして。
そりゃ、前はヤダンが知らなかったから、教える意味を込めて僕がしてあげたけど‥
今はもう違うし、それに‥僕達、男同士だし‥って思ったから‥。
第一、ヤダンには彼女が居るんだから、ダメだよ‥って‥そう言ったんだ。
その時のヤダンは「そ、そうだな‥」なんて言って頷いていたけど、本当は‥
本当は、違う何かを‥期待していたのかもしれない。
‥ヤダンも‥僕も。
とにかく‥僕達はお互いに「扱き合う」事はしなかったけど‥
それでも、互いの「ひとりえっち」を気にしない‥って事にしたんだ。
時間は寝る前、するなら「したい」って声を掛けて‥相手がしているのは気にしないようにする、って。
勿論、自分だってしたくなればすればいいし‥実際に二人一緒でする事も多々ある‥
‥いや、それどころかほとんど二人一緒にしてるけど‥。
でも、二人一緒にすれば、その‥「後片付け」をするのも労力が減るし‥。
‥「後片付け」‥そう、その‥出してしまった精液を拭く事だけど‥ポイントは拭く「素材」なんだ。
精液を拭くために、僕は最初「羊皮紙」を使っていたんだけど‥
ヤダンから「それは勿体ないよ」って言われたんだよね。
確かに‥それほど安くないし、しかも使い捨てだから‥コストは掛かる。
‥そこでヤダンから提案があったのが‥「草布」なんだ。
草布は‥草糸、ひいてはその原料がモコ草(ウィンダス近辺によく生えている草だよ)だから、コストは安い。
しかもある程度なら「洗って繰り返し使える」所が良いんだ。
そういう意味ではホント、「お財布に優しい」んだよね。
そんな「草布」だけど‥僕と、ヤダンのを一度に処理した方が、洗う回数は少なくて済むし‥結果的にも長く保つ事になるから‥
だから‥そういう理由付けもあって、「一緒にする」事が多いんだ。
‥そりゃ、もっと違う理由で、っていう事もあるけど‥‥と、ともかく。
僕とヤダンは‥今のところそういう風に「ひとりえっち」をしてる。
‥そこまで事細かく、みんなには説明しないけど‥ね。
「い、一緒にって‥す、凄いナ‥」
「せ‥せやな‥ピノも、ヤダンも‥ごっついな‥」
僕の話を聞いて、まず声を上げたのは‥フリストだ。
‥びっくりするような、感心するような‥そんな声を出して‥。
それにディルも感心するような声を続ける。
あ‥もしかして、か、勘違いとかしてないよね‥その‥
「べ、別にヘンな意味は無いんだよ。その、第一ヤダンには‥」
僕は、フリストやディルが誤解してちゃいけない、って思って‥慌てて声を出したけど‥
でも、途中まで言いかけて、僕は言葉を止める。
そうだった‥ヤダンには彼女が居る、って事‥みんなには言わないで、って言われてるんだ‥。
ヤダンってば、照れ屋さんだから‥かな?
みんなに冷やかされたり、色々と言われるのが嫌だから‥って。
「と、とにかく‥同居者と話ができればいいけど‥デリケートな問題だもんね‥」
僕は慌てて話を軌道修正すると‥上手く纏めた。
‥つもりだったけど‥‥纏まっていないよね‥。
フリストの言う「困った事」の解決策も出ていないし‥。
「せ、せやな‥その‥やっぱり恥ずかしい事やしなぁ‥」
ともあれ、ディルも‥僕の言葉に頷いてくれて。
その‥他人事だからって「思い切ってテルに相談してみれば」なんて言える訳も無いし。
はぁ‥難しいね‥。
「うん‥でも、ありがト。色々と参考になったヨ」
でも、僕の考えを余所に‥フリストの中では色々と答えが見つかったみたい。
ありがト、って言いながらもにっこりと微笑んで居たフリストは‥どこか満足そうに見えて。
‥何か、良いヒントにでもなった‥のかな?
だとしたら‥良いんだけど。
「そういえばさ、部屋でその‥してると、どうしても音とか声とか‥聞こえないかな、なんて思っちゃうな」
そういえば‥と話を切り出したヤダンを見て、僕はてっきり「この話題」から離れるのかと思ったけど‥
‥話の続きを聞いて、まだまだ続くんだ‥と僕は思った‥。
まぁ‥この際だし、徹底的に話をしても良いかもしれないね。
なんていうのか‥恥ずかしさとか、そういうのも(少しは)無くなってきたし。
でも‥ヤダン、音とか‥声って‥そんなにヤダンは声、上げてないよね‥?
‥もしかして、それって僕の事‥?
「こ、声って‥そんなに声だしてるノ?ヤダン‥」
思った通り、フリストからもびっくりした言葉が飛んできて‥
だって‥ね?壁はほら‥結構厚そうだし、そうそう聞こえる訳が無いと‥思うし‥
そうだ!僕達の部屋のお隣は、空き部屋と洗濯室だから‥大丈夫だよね。
‥あ、待てよ‥壁はともかくとしても、扉はそうでもないのかな‥?
もしかしたら、廊下とか‥い、いや‥更には‥お向かいの‥
「ち、違っ!‥ほ、ほら‥もしかしたら、って思うだけで‥」
ヤダンは慌てて「声を出してる」事に否定はしたけど‥
僕としては、さっき思いついた「お向かいの部屋」が気になってきて‥うーん。
「うん‥そうだよね、もしかしたら‥って思う事はあるよ。
 僕達の部屋、お隣が空き部屋と‥洗濯室だから良いんだけど‥
 もしかしたら、お向かいの部屋の‥マロンさんに聞こえてるんじゃないかな、とか‥」
「私がどうかしたかな?」
僕が話をしていると‥突然見知った声が聞こえてきて‥。
その声のした方‥つまり、僕の後ろを振り向いてみると‥そこにはいつのまにかマロンさんが立っていたんだ!
マロンさん、い、いつの間に僕の後ろに‥!?
「わあっ!な、なんでもないです!」
うぅ‥名前を出しておいて、「なんでもない」は無いと思うけど‥
でも、仕方無いよね‥良い言い訳が思い浮かばなかったんだもん‥。
困り果てた僕に、でもマロンさんは‥にっこりと笑いながら話し始めたんだ。
「ふふっ、隠さなくて良いよ。ごめんね、ちょっとだけ盗み聞きしちゃってたから。
 でも、恥ずかしがらずにすればいいんだよ。年頃で、健康な男の子なら‥みんなしてることだしね」
マロンさんは、決して笑い飛ばす訳でも無く‥真剣に、そう言ってくれたんだ。
それから‥やっぱりマロンさん達も同じ様に悩んだ事があった、って教えてくれた。
その時も‥先輩からそう言われて、段々気にしなくなったんだって。
‥みんな、同じ思いを持って‥生活していくものなのかな。
「まぁ‥折角同じ部屋で暮らすことになったんだから。みんなで仲良く‥それ位はおおっぴらに‥とまではいかなくても、
 互いに許せる、気にしない‥くらいまで出来れば良いんじゃないかな。
 ただ、仲良くなりすぎると‥それはそれで別問題になっちゃうけどね」
「ふふ、マロンさんってば‥」
所々冗談なんかも交えて、楽しくお話ししてくれるマロンさん。
そんなマロンさんの話に、僕達は聞き入っていて‥うん、なんだか‥
‥ふふ、上手く言えないや。
「それから‥大丈夫、私の部屋には聞こえてきていないよ、二人の可愛い声は‥ね」
「ま、マロンさんッ!」
でも、最後の最後で‥そんな事を言うんだから。
もう、マロンさんってば‥。
僕は慌てて、少し怒ったフリをしてマロンさんに言ったけど‥
マロンさんもまた、笑いながら‥元居た席かな?ソファーへと戻っていったんだ。

ともあれ‥
そんなマロンさんの話があったから‥かな?
みんな‥少なくともこの四人の間では、えっちな事に‥少しだけオープンになった様な気がする。
‥少しだけ‥ね。
それと‥少しずつ、少しずつだけど‥みんなの家族とか、思いとか‥
わかり合えた、知り合えた様な気がする。
なんだか‥うん、まるでみんなと「家族」になっていってる様な‥
そんな不思議な気がするんだよね。



   
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