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星芽寮交響曲

11話『帰ってきた先輩』

 ←その85『あますず祭り -星闇時-』 →その86『彷徨う想い』
5月19日 早朝
  

「‥久しぶりのウィンダスか。‥とは言っても、まだ2ヶ月くらいしか経ってないんだよな」
飛空艇から降りた僕は、久しぶりに感じるウィンダスの空気に‥そう呟いた。
‥なーんて格好付けても仕方無いんだよな‥周りには誰も居ないし。
まぁ、こんな朝早い飛空艇の便で、ジュノからウィンダスに来る人なんて数が知れてる‥か。
「ふわぁ~」
周りに誰も居ないのを良い事に、僕は思いっきり口を開けてあくびをする‥。
飛空艇の中で軽く寝たはずだけど‥やっぱりまだまだ眠い。
ん?軽く寝ただけだから眠いのか?
ともかく、いつまでもウィンダス港に居るのも何だし‥とりあえずは鼻の院に行くとしようか。
‥そう、僕の勤め先の鼻の院へ。

早朝のウィンダスを‥僕は歩いている。
久しぶり‥そう、この道を歩くのも久しぶりだ。
‥まぁ、2ヶ月前迄に、この道を良く歩いた‥という訳でもないけど。
どこかしこに懐かしさの残るウィンダス‥そんな中を歩きながら、僕は過去の事を振り返る。
約2ヶ月程前‥僕は長期出張としてカザムへと渡ったんだ。
カザム‥知ってるかい?
そうだ、エルシモ島の北端に位置する街で‥数多くのミスラ達が住んでいる。
それこそ「ミスラ好き」にはたまらない街なんだろうな‥‥僕には関係無いけど。
僕はそんな街で、2ヶ月もの間‥研究を続けていたんだ。
‥あぁ、さっきも言ったけど、僕は鼻の院に勤めていてね‥動植物の研究や調査を行っているんだ。
鼻の院には出張が多くてね‥現地に長期派遣されている調査チームとコンタクトを取り、
共に研究を行い、データを持ち帰る‥なんて事をしているんだよ。
僕も、予めカザムに派遣されていた調査チームと組んで、専ら植物の研究をしていてね。
どういった研究か‥って聞かれても、それは「企業秘密」ってヤツだから教えられないけど。
ああ、どれだけ頼まれても教えられないよ?ごめんね。
‥まぁ、「別に聞きたく無い」って人の方が多いんだけど。
ともかく‥去年の4月から勤め始めた僕にとっては、それが「初めての長期出張」だった訳で‥
うん、そうだね‥「非常に有意義な研究生活」だったよ。
ただ、難点を言えば‥環境が悪い‥いや、僕に合わない、って所だろうな。
カザムはウィンダスよりも暑く‥更には雨だって多く降る。
特に1月から5月に掛けて酷い雨期があるんだけど‥僕の滞在時期が丁度それに重なっていたんだよね。
いやぁ、暑いわ、湿気が酷いわ、もう大変‥‥
でも、そんな環境のお陰で貴重な植物の研究もできるんだから‥しょうがないと言えばしょうがない。
で‥僕には合わない環境のお陰で、日々の生活には苦労する所もあった‥けど。
その苦労に見合うだけの「研究成果」があったと思ってる。
初めての長期出張としては、良い成果を持ち帰れたんじゃないかな。
‥と、色々と考えてる間に‥鼻の院に着いてしまったな。
と・は・い・え。
僕はそっと、入り口から中の様子を覗いてみる‥あくまで中には入らずに。
ふんふん‥時間が早い、ってのもあって‥まだ人は少ない様だ。
ここまで来て、まだ人が少ないって事は‥ふふふ、解るよね?
今日はウィンダスに戻ってきた日だし‥慌てて出勤しなくても良いかな、なんて思う訳で。
そうだねぇ‥まだまだ眠いし、一旦寮に戻って仮眠を取るとしよう、うん。
昼過ぎにでも出勤すればいいだろう‥「13時着の便で帰ってきました」なんて言ってさ。
そうと決まれば。
誰にも見つからない間に、一旦寮へと戻ろうか。

誰にも見つからないよう、寮まで安全に戻るには‥
そう、一旦港区に戻り、そこから居住区に進めば‥鼻の院の人と会う事も無いだろう。
わざわざ遠回りをして職場に行く人は少ないだろうからね。
‥朝から運動を兼ね、長距離を歩くんだ‥なんて言う人は知らないし、知りたくもない。
でも。
僕は敢えて水の区を進み、居住区へと向かった。
‥まぁ、別に危険の中を進みたい訳では無くて‥
軽く変装でもしておけば、誰にも気付かれないだろう、って思っての事なんだけどね。
という訳で変装アイテム、その1‥眼鏡。
‥おっと、眼鏡をバカにしちゃいけないよ?
眼鏡は良いものだ‥その人のイメージをガラリと変えてくれるからね。
銀色の薄いフレームの眼鏡を掛けていたら、シャープなイメージが映えるし‥
黄色いフレームの眼鏡を掛けていたら、どことなくユニークそうな人に見えるし‥
ピンク色のハート型眼鏡を掛けていたら、そりゃバカだ(普通に掛けてる人が居たらごめんよ)。
まぁ、そんな訳でハート型の眼鏡‥じゃなくて、一般的な銀色の眼鏡を掛けて‥これでよし。
‥ん?眼鏡だけで大丈夫なのかって?あぁ、大丈夫だ。
ほら、僕も約2ヶ月間、ここを離れていた訳だしね‥それも見越しての話、だよ。
‥え?変装アイテムその2は無いのかって?無くてもいいじゃないか、べつに。
まぁ‥実際居住区に入るまでは、鼻の院の誰ともすれ違わなかったし。
あとは寮に戻って‥ん?
僕が寮‥星芽寮の入り口に近づくと‥中から一人の男の子が出てきたんだが‥
‥その子の外見が‥‥うん、良いね。
髪の毛には気を配っているんだろう‥綺麗な金髪が、ふんわりとしていて‥
そして性格を表すような‥大人しそうな顔立ち。
そして何よりも‥ちょこんと鼻に掛けた、可愛い眼鏡。
その見事な組合せは‥僕の足を立ち止まらせる理由に充分だった。
そう‥とても可愛い‥僕の好みだ。
ん‥?ああ、その子は男の子で‥うん、勿論僕も男だよ?それがどうかしたかな?
そんな事よりも‥僕は歩いて行くその子を、じっと見つめ続ける。
‥その子は、軽く僕の方を見たものの‥特に気にする様子も無く、僕のそばを通り過ぎていった。
きっとこれからどこかの院に出勤する所‥なんだろう。
加えて、僕の記憶の中には、あの子は居なかった‥つまり。
今年の4月に入寮した子‥のハズだ。
そうなると‥‥僕はその子の後ろ姿を眺めながら考える。
‥後ろで縛った髪型も可愛いな‥‥じゃなくて。
名前は勿論分からなかったけど‥まぁ、これから会う事も多いだろう。
ふふ、再び会った、その時は‥そう、その時は。
‥僕はそれから先の事を勝手に想像して、すっかり気分が良くなってしまった。
なんていうのか‥鼻歌すら飛び出しそうな浮かれ気分で、寮の中へと入っていったんだ。
‥勿論、鼻の院の人達にバレないように、っていう当初の目的はすっかり忘れていたね。


  同日 夕方


「お、ヤダンにピノ!偶然だナ」
いつもの星芽寮、いつものお風呂場。
その洗い場に座って(勿論、イスに座ってるんだよ?)頭を洗っている僕に。
思ってもみない声が聞こえてくる。
その声、その独特のしゃべり方‥顔を見なくても解る。
‥もっとも、僕は目を閉じて洗っていたから、見ることが出来なかった‥っていうのもあるんだけどね。
うー、だって、泡が目に入ると染みるんだもん‥。
「その声は‥フリスト?珍しいね、この時間に」
「おう、フリスト‥どうしたんだ?いつもはもっと遅くだろ?」
僕の言葉に、ヤダンもそう続けて。
そうなんだ‥僕とヤダンは、大抵食事の前にお風呂に入るんだけど‥
‥あ、ヤダンが日課のランニングで、汗を流すから‥っていう理由があるんだよね。
とにかく、今日もこうして夕食の前にお風呂に入っているんだ。
で、一方のフリストは、って言うと‥ヤダンの言う通り、普段はお風呂に入るのがもっと遅いんだって。
それというのも、フリストが家に居た頃は、寝る直前にお風呂に入ってたからだそうで‥
きっとその頃の習慣が残ってるんだろうね。
「ふふ、オイラだってタマには早く入る日もあるもんサ。それよリ‥」
フリストはそう言うと、ヤダンの隣に腰掛けたんだ。
‥あ、僕はもう髪をすすいだから、ちゃんとフリストが見えるよ?
さて、次は身体を洗おう、っと。
勿論、ちゃんとフリストと話をしながらね。
「うん、それより‥?」
「実はサ、今日、先輩が長期の出張から帰ってきたんだヨ」
フリストは石鹸でタオルを泡立てながら‥話を始める。
先輩‥?長期の出張‥?帰ってきた‥?
考える僕よりも、先にフリストの言葉を理解したのは‥
「先輩って‥フリストが勤めてる鼻の院の、か?」
僕と同じく身体を洗っていたヤダンだった。
‥もう、ヤダンってば、また耳の裏が洗えて無いよ‥いつも言ってるのに。
って、今はそんな事を言ってる場合じゃないね。
フリストの言葉に耳を傾けよう‥あ、僕も耳の裏洗わないと‥。
「そうそウ。鼻の院はサ、仕事柄どうしても長期の出張が多いかラ。
 なんでもその先輩ハ、3月の半ばかラ‥今日までずっと出張だったんだっテ」
3月の半ばから‥今日まで!?
それって、2ヶ月間も出張していた‥って事だよね。
それは‥また‥。
「うわぁ‥それは大変だね‥」
慣れない場所で2ヶ月間も過ごすことを想像して、僕は思わず感心の声を上げる。
だって‥僕だったらきっと、音を上げてしまうだろうし‥‥あ、出張先の場所にもよるのかな?
こう、過ごしやすいところなら‥いや、それはさておくとして。
僕のそんな言葉に、フリストが‥答える前に。
全然違う方向から、答えが返ってきたんだ。
「っと、そうでもないさ‥各地の美味しいものを食べる事もできるし。
 最も、僕が行ったカザムは‥‥いや、これは言わぬが華、ってヤツか‥。
 ‥という訳でよろしく、ピノくん。僕がその「先輩」のキルク・ラトクリクだ」
フリストとは逆方向‥そう、僕の隣の、空いていたイスに‥その人は腰掛けて話し始めたんだ。
咄嗟の事に僕は慌てて、ぽかん‥とした顔をしていたけど‥
しばらくして、その人がフリストの言っていた「先輩」で、キルクさんだという事が解ったんだ。
‥って、キルクさんもちゃんとそう言ってるね‥いや、本当に僕、慌ててたから‥。
「あ‥え、えっと、よろしく‥おねがいします、キルクさん」
とりあえず‥うん、挨拶はきちんとしておかないとね。
違う院とはいえ、先輩は先輩‥そう、同じ星芽寮に住んでいる先輩だもの。
「ああ、こちらこそ。‥それよりも、突然話しかけてごめんね。
 いや、フリストくんに色々聞いてね‥きみを知ったつもりになっていたから、つい‥ね」
僕の挨拶に、キルクさんははにかみながらそう答えたんだ。
ふふ、僕は別にそこまで気にはしてなかったんだけど‥
先輩は申し訳なさそうに、苦笑いをしながらそう言って。
その笑顔が、ぼさぼさにした金髪と相まって‥とても親しみを感じる‥様な気がする。
「いやサ、先輩が朝‥ピノを見た、って言ったからサ。それでつイ‥色々と話しちゃったんだヨ」
キルクさんが‥今朝、僕を見た‥?
いつの事だろう、僕は記憶を遡って、キルクさんの姿を探してみるけど‥
‥うーん、身に覚えが無いなぁ‥。
あ、そうか‥僕はキルクさんを見ていなくて、キルクさんが一方的に僕を見ていた‥のかもしれないよね。
「そうそう。たまたま朝、見かけただけなんだけどね‥見知らぬ可愛い顔が居るな、って思ってさ。
 今年は新入寮者も多かった、って聞くし‥フリストくんから新入寮者みんなの事を聞いてたんだよ」
そうか‥キルクさんは出張していたから、4月の頭にあった「新入寮者の歓迎会」も参加していなくて‥
だから僕達の事、知らなかったんだよね。
‥「可愛い」って言葉は‥うん、きっと空耳だと思う‥。
「そうですか‥それで僕達の事を‥」
「うん、色々と聞いてるよ。‥きみが、なかなか可愛い顔して、大きいとかね」
にっこりと微笑みながらそう言うキルクさん。
そんなキルクさんの言う「大きい」って‥それってやっぱり‥
い、いや‥違う事かも知れないし‥その‥
「えっ‥と‥‥お、大きいって‥その‥」
「そ、そ、ちんちんが大きい、って聞いたよ?どれどれ‥‥おっ、なかなかいいものを持ってるね」
なんて言いながら、キルクさんは僕の股間を覗き込むようにして‥うぅ。
‥確かにその‥最近寮の中では言われなくなったけど‥それでもこうして言われると‥
‥‥恥ずかしい、よね‥。
「うぅ‥は、恥ずかしいのであまり‥」
でも‥「見ないで下さい」なんて、先輩に言うのも失礼‥の様な気がするし‥
僕の声は小さくなって、言葉尻が聞こえない位になっていたんだけど‥
‥キルクさんは驚きの言葉を言ってきたんだ‥。
「でも‥ふふ、僕の方が少し大きいかな?」
キルクさんはそう言うと、僕と反対側の足を上げて‥目の前の段差に乗せたんだ。
同じく、僕の側の足を、なんていうのか‥僕の方へと動かして‥そう、足を開いて見せたんだ。
当然、その‥キルクさんの股間が良く見える体勢になったんだけど‥
‥すごい。
なんていうのか「少し」どころじゃなくて、キルクさんのちんちん‥大きいんだ。
「わぁ‥‥き、キルクさんの‥‥凄い‥」
僕も結構大きい方だと思うけど‥キルクさんのに比べればまだまだ。
それに‥その‥先っぽが向けていて、先端部分が半分くらい‥見えてるんだ。
普段からそれだけ剥けてるって‥凄いなぁ‥。
僕はつい、見とれてしまって‥って言ったらヘンだけど‥
とにかく、キルクさんのちんちんをじっと見つめていたんだ。
ま、まぁ‥僕自身、視力が良くないから、ちゃんと見るためにじっと見てた‥っていうのもあるけど‥。
‥ずっと見つめる僕の視線に気付いたからか‥キルクさんはそっと足を閉じて。
改めて身体を洗い始めると‥僕にこう言ってきたんだ。
「あ‥いや、別に自慢したい訳じゃ無いんだ。僕の方が歳だって上だしね。
 それよりも‥だ、ピノくんは目の院だったよね?ふふ、レイトとはどうだい?上手くやってるかい?」
レイトさん‥僕と同じ目の院の先輩で‥優しくて頼りになる先輩だ。
勿論、お仕事でも世話になって‥‥いる訳じゃあ無いんだよね、それが‥。
僕は専ら書物管理の担当をしているんだけど‥レイトさんは天体観測の担当なんだ。
勿論、仕事の場所が違うから‥お仕事中に会う事もほとんど無くて。
せいぜい、お昼御飯の時に会う位‥なんだよね‥。
でも。
「はい、レイトさんにはいつもお世話になってます」
何も、レイトさんと会うのは職場だけじゃない。
寮に居るときは、とても良くしてくれるんだよ。
レイトさんも読書は好きな方らしくて、本の事でお話しをしたりするし‥
普通におしゃべりしていても、楽しいんだ。
そんな僕の答えに‥キルクさんは嬉しそうに目を細めて。
「そうか‥あいつと俺は同期だからさ。レイトの事、よろしく頼むぜ」
なんて、僕に言ったんだけど‥
うーん、よろしくして貰ってるのは僕の方なんだけどなぁ。
ともあれ、僕は「はい」と一言、答えながら‥身体をお湯で流したんだ。
うん、おしゃべりしながら身体も綺麗‥みんなで入るお風呂って、本当に良いよね。
なんて、お風呂の良さを再認識している僕に‥今度はフリストが声を掛けてきたんだ。
「あのネ、ヤダン、ピノ。食事の後でサ、先輩の部屋でお喋りするんだけド‥二人も来て欲しいんダ」
先輩‥キルクさんの部屋でお喋り‥‥その内容について、詳しくフリストに話を聞くと‥
なんでも、キルクさんは歓迎会(今年寮に入った僕達の、ね)に参加出来なかったから、面識のない人がそこそこ居て。
顔合わせと‥親睦を深める意味も込めて、ちょっとしたお話の場を開きたい、って事なんだって。
とりあえずはキルクさんと同じ鼻の院のフリスト、それにラスキは参加して‥
僕やヤダンも是非参加して欲しい、っていうお誘いだったんだ。
「うんうん、僕からもお願いするよ。可愛い子には是非来て欲しいな」
フリストの言葉に、キルクさんも嬉しそうにそう言ってくれて。
うん、僕もキルクさんともっとお喋りしたいし‥行ってみたいな。
「あ、はい!」
僕は勿論行きます、とばかりにそう答えたんだ。
ヤダンだって、きっと‥
「あ‥‥はい」
‥でも、僕が思っていたのと違って‥
ヤダンは少し元気が無さそうに、そう答えたんだ。
どうやら行く事は行くみたいだけど‥ヤダン、どうかしたのかな?

その後、夕食を終えた僕達、「今年の新入寮者」の全8人は、久々に勢揃いして‥
キルクさんの部屋に集まる‥事にはならなかったんだ。
手の院のヨックが風邪で寝込んでいたみたいだし、それに‥
‥ヤダンも直前になって「ごめん、悪いけど‥」って言って‥。
まぁそれでも、8人中6人が集まったんだもの‥うん、上出来だよね。
それに、何より‥キルクさんとのお話も沢山出来たしね。
キルクさんって、何て言えばいいのかな‥そう、物知りで、お喋りが上手で‥
それに‥ふふ、ユーモアのセンスだってあるんだから。
結局1時間‥いや、2時間くらいはお話ししていたのかな?
それでも、終わってみればあっという間の出来事‥なんて思う位、楽しい時間だったんだ。
うん、とっても楽しい時間だったんだけど‥
‥ただ、やっぱり気がかりなのは‥

「ふぅ、ただいま、ヤダン」
僕は部屋の扉を開けると‥「ただいま」を言って、中に‥あれ?
部屋の中はもう、明かりが消されていて‥窓から入ってくる明かりのお陰で、うっすらと見えるくらい。
まだ寝るには早い時間だけど‥ヤダン、もしかして寝ていた‥のかな?
「‥‥おかえり」
でも、少し後れて聞こえてきたその声に‥ヤダンが起きている、って事が解る。
ヤダンの声がした方を見ると、ヤダンは自分のベッドに横になっていて‥寝る準備は万端、みたい。
いや、逆‥なのかな。
もしかしたら僕が帰ってきた事で、寝ていたヤダンを起こしちゃったのかも‥って。
‥思えば、ずっとヤダンの隣で寝ているけど‥もしかしたらヤダンはもう、一人で‥
ふと、頭に浮かんだことを‥僕は慌てて頭を振って振り払って。
とりあえずは、僕もパジャマに着替えよう。
時間はまだちょっと早いけど‥僕もおしゃべりしていて疲れちゃったもの。
少しくらいは早く眠れる‥よね。
「ごめんね、ヤダン‥起こしちゃったかな?」
僕はパジャマに着替えながら、ヤダンに尋ねてみるけど‥
ヤダンから聞こえてきたのは‥
「‥いや、寝てないよ‥横になっていただけだ」
どことなく‥そう、どことなく不機嫌そうな感じの声。
ヤダン‥どうしたのかな‥?
僕、何か怒らせるような事‥言っちゃったかな?
「ねぇ、ヤダン‥どうしたの?その‥」
機嫌が悪そうだけど、という言葉を飲み込んで‥僕はヤダンの答えを待つ。
‥パジャマに着替えながら。
でも、そのヤダンから帰ってきた答えは‥
「‥別に‥」
そんな、ぶっきらぼうで、まだ不機嫌そうな答えで。
そう‥全然「別に」とは思えない様子で、ヤダンはそう言ったんだ。
ヤダン、一体‥‥‥もしかして。
その時、僕の頭の中に‥一つの「予想」が浮かび上がる。
そうだ‥思えば、今日のヤダンはどこかヘンなんだ‥。
‥正確に言えば、お風呂に入った辺りから元気が無かった‥様な気がする。
朝も‥夕方も、食事の時も‥いつもの様に元気だったヤダンが、お風呂の時から‥‥お風呂?
お風呂場で‥キルクさんとお話ししていた辺りから‥?
いや、そもそもヤダンはキルクさんとお話しすらしていなかった‥気がする‥。
もしかしたら、ヤダンは‥
パジャマに着替え終えた僕は、いつもの様にヤダンのベッドに入って‥
そしてヤダンの側で言ったんだ。
‥優しい声で、ヤダンに‥尋ねたんだ。
「‥ね、ヤダン。もしかしたら、キルクさんの事‥」
「い、いや、違う、違うんだ‥そうじゃなくて‥」
何か‥ヤダンにも予兆があったのかもしれない。
僕がキルクさんの名前を出した途端、慌てて答え始めて‥
でも、すぐに言葉を詰まらせたんだ。
ヤダン‥どうしたの‥?
「あの‥その、なんだか‥そう、風邪っぽくてさ‥」
ヤダンはそう言うと、僕から顔を背けて咳き込んでみせる。
‥なるほど、そうだったんだ‥。
思えば、僕達がお風呂で身体を洗っている間‥結構お喋りしていたから‥
その間にヤダンの身体が冷えちゃったのかもしれない。
それでヤダンは風邪をひいてしまって‥って事かな。
‥そういえば、ヨックも風邪をひいて寝込んでる、って言うし‥風邪が流行ってるのかもしれないね。
っと、それよりも‥うん、風邪をひいたならまずは‥
「ヤダン、だったら身体を大事にしないと‥えっと、お薬貰ってこようか?」
うん、早めの治療が大事だよね‥うんうん。
でも、お薬‥誰か持ってるかな?流石に今から森の区の「ミスラの薬屋」さんに行くのは大変だし‥
‥って、その前にお店が開いてないかな‥。
でも、そんな僕の心配は、必要無かったみたいで‥
「あ‥いや、もう平気だからさ‥‥は、早く寝ようぜ」
ヤダンは慌ててそう言って‥掛け布団をかぶったんだ。
うーん、風邪は治り始めてる、って事なのかな‥?
まぁ‥ヤダンがそう言うのなら、きっと大丈夫‥だよね。
僕も寝よう‥うん、身体がちょっと疲れてるみたいだし、早く眠れそう‥な気がするし‥。
僕はそっとヤダンの手を握りしめると‥目を閉じたんだ。
思えば、ヤダンの風邪がうつるかもしれなかったのに、そんなこと全然考えつかないで。
本当に僕って、頭が回らないよね‥。
でも、翌朝は僕もヤダンも元気に起きることが出来たし‥うん、良かった良かった。

‥それにしても、キルクさん‥かぁ。
ふふ、面白くて、優しくて‥良い先輩だなぁ。



  
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