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 ←12話『ディルの悩み』 →13話『それぞれの休日』
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その87『触れあう想い』

 ←12話『ディルの悩み』 →13話『それぞれの休日』
あらすじ

同じリンクシェルに所属するタルタルの男の子、サインとノレン。
サインは、ふとした事をきっかけとしてノレンを騙し、一夜を共にした。
その後、ノレンへの強い想いを持つサインは、罪悪感も相まってノレンに事実を打ち明ける。
騙されたと知ったノレンは、サインに対して「帰れ」という冷たい言葉を告げた‥。
ノレンの言葉にショックを受け、自室に閉じこもり、何日も泣き続けるサイン。
そんなサインの元にリンクシェルのリーダー、ラケルトが現れる。
ラケルトの言葉を聞いたサインは、少しだけ元気を取り戻すのだった。

 

「ふぅ‥‥よし、付けよう‥‥‥うん‥」
朝‥いつもの朝‥いつもと変わりない、「普通」の朝。
しかし‥サインにとっては「特別」な朝。
ノレンに言われた一言がショックで、落ち込み‥沈み込んでいた日から、別れを告げる‥朝。
サインはリンクパールを手に持つと、耳に付けようと自分に言い聞かせる。
ふとすれば襲ってきそうな「ノレンに嫌われたらどうしよう」という思いも‥
昨日、ラケルトに言われた事を思いだす事で、やりすごして。
何度目かの「付けよう」という思いの波に乗って‥サインはリンクパールを耳に付けた。
緊張に高鳴る胸と共に、懐かしい喧噪が‥声が‥会話が‥聞こえてくる。
そんな声達に負けぬように、サインはお腹に力を入れて‥挨拶の声を上げた。
「おはようございます!」
いつもの‥そう、数日前までは普通にできていた挨拶。
それが今日は、少しだけ力を入れなければできなかったが‥。
サインの言葉に次々と返ってくる「おはよう」という挨拶、「昨日はどうしたの?」という心配の声に‥
サインはすっかり以前の自分に戻れた‥そんな気がしていた。
もう‥大丈夫、リンクパールで普通に話が出来る、と。
そして何より‥
「‥‥おはよう」
少しだけ後れて聞こえた‥小さな声。
どことなく、バツの悪そうな‥それでいて、安堵感を感じているような‥そんな声。
それは見知った声‥決して忘れない声で。
その声を聞いただけでも、サインの心は癒された‥様な気がしていた。
「‥おはよう‥‥ノレン」
サインもまた、ノレンの声に‥小さく言葉を返して。
そう言えただけでも‥サインは嬉しかった。
まだ「騙していた事」を許して貰った訳でも無いのに‥それでも、サインは嬉しかったのだ。
そんな嬉しさに浸るサインに‥そしてノレンに向けて。
違う人の声が聞こえてくる。
「さて‥と。ノレン、それからサイン。悪いけど‥いつもの集合場所に集まる前に、
 上層の教会に来てくれるかな?」
その様に告げたのは‥リンクシェルのリーダーであるラケルトだった。
サインにも、ノレンにも‥呼ばれた理由は解っている。
リンクシェルイベントが始まる前に、サインとノレンの二人を仲直りさせるためだ。
ラケルトの言葉に、サインはもう一度気合いを入れ直して‥教会へと向かう。
‥ノレンに謝り、ちゃんと許して貰う為に。
大好きな‥ノレンともう一度向き合うために。


「さて‥ようこそいらっしゃいました、お二人さん。‥どうしてここに呼ばれたか、解るよね?」
ジュノ上層、その半ば辺りに位置する女神聖堂‥ラケルトが「教会」と言った場所だ。
特に宗派のこだわりはなく、誰でも入る事ができ‥また、場所が場所だけに厳かな気持ちにさせてくれる。
厳かなオルガンの調べが流れる女神聖堂‥その後方の、更にその片隅で。
ラケルト、ノレン、そしてサインは集まっていた。
ノレンとサインに向けて放たれた、ラケルトの何かを意味するような言葉。
それは、少し微笑んで居るラケルトの表情からも‥何かの「面白いネタ」かと思ったのだが‥
場所のせいなのか、あるいは気分のせいなのか‥二人共その意図を汲む事はできなかった。
しかし、そんな二人には構わずに‥ラケルトは言葉を続ける。
「早速で悪いけど‥ボクはお先に失礼するよ。‥ちゃんと二人で話し合って‥ね?
 おっと、神聖な場所なんだから、くれぐれも大きな声は上げないように!‥あ、ボクの声大きかったかな?」
サインにしても、ノレンにしても‥ラケルトの言いたい事は解る。
ラケルトにしても、自分から何かを言うべきではないと思ったのだろう。
ラケルトは先程の言葉を告げると、最後に一つ、サインにウィンクをしてみせて‥その場を去って行った。
‥ラケルトが最後に残した、悪戯っぽい言葉も、二人には微笑みを与えられないままだったが。
そして‥残された二人は、言葉も出ずに‥ただ、向かい合った。
互いに何と言って良いのか解らない‥何と言葉を切り出して良いのか解らない‥
そんな空気を漂わせながら。
そんな重くて張り詰めた空気が‥しかし、一瞬にして変わる。
‥オルガンの調べ、その曲目が変わったのだろう‥厳かな音楽から、静かで、穏やかながらも明るい音楽へ。
瞬間、二人の間に軽い安堵感が生まれ、そして‥サインは口を開いた。
「‥ノレン‥その‥‥ごめんなさい」
小さな声‥ともすれば、オルガンの音にかき消されてしまいそうな‥そんな声。
‥しかし‥ノレンの耳にはしっかりと届いていた。
サインの思いを‥謝ろうとする思いを伝える、その声が。
ノレンの耳には届いていたのだが‥今度はノレンの口が動かない。
ノレンの心は既に‥そう、ここに来る前に決まっていたというのに‥その口は開かない。
ただ無言のまま、視線を落としているノレン。
そんなノレンに対し、サインは‥言葉を続ける。
「とても‥酷い事をしたのは解ってる‥。許されないことかもしれない‥でも‥ボク‥
 ‥こう言うしか無くて‥‥ごめんなさい‥本当に‥」
ノレンは怒っていて‥ボクの事なんて許してくれないのかもしれない‥
ノレンの「無言の間」を、サインはそう捉えたのだろう。
サインは徐々に涙混じりになりながらも、言葉を‥謝意を込めた言葉を呟く。
‥涙がこぼれそうになるその瞳を、指でなぞり‥その雫を拭いながら。
「‥良いよ‥‥もう良いよ、サイン」
謝りの言葉を続けるサインに対し‥ようやくノレンの口からも声がこぼれた。
‥正確に言うならば、サインの切なる言葉に、ノレンの口からも言葉が漏れずにはいられなかった‥という所だろうか。
穏やかに‥そして優しい声で「もう良い」と呟くノレン。
そんなノレンの言葉に‥サインは安堵したのだろうか。
サインの瞳からは、今まで以上の涙が‥堰を切ったかのように溢れ始めた。
「う‥‥うぅ‥‥ううっ‥」
場所が場所、というのもあり‥声を押し殺して泣いているサイン。
サインとて、涙を抑える為に目を手で覆い、涙を止めようとしたのだが‥一向に涙は止まらない。
そんなサインを見て、ノレンはどうしたものか‥と慌ててしまう。
自分としてはサインを「許した」のだから、泣かれる事は予想外だったのだ。
「お‥おい‥‥サイン‥‥な、泣かれると‥その‥」
慌ててそんな声を掛けてみるも‥サインが泣き止む様子は無い。
泣き続けるサインに、周囲の視線が気になり‥あたりを見回してみたノレンだったが‥
幸いにも周囲には人が居らず、こちらを注視している者は居ないようだった。
「うぅ‥ごめん‥‥もうすぐ‥‥泣き止む‥からぁ‥」
ノレンの困った様子が見えたから‥いや、聞こえたからだろうか。
サインは涙混じりの声でノレンに呟く。
そんなサインに、ノレンは‥軽く頭を掻き、「仕方無いな」という表情を見せると‥
‥サインの身体を柔らかく抱きしめ、その背中を軽く叩いてやるのだった。
サインが泣き止む、その時まで。

「落ち着いた‥か?」
しばらく時が過ぎ‥サインの心も落ち着いたのだろう。
止めどなく溢れていた涙も止まり、サインは普段の顔へと戻りつつあった。
‥最も、泣いていたせいで‥目の周りは赤く腫れていたのだが。
「うん‥ごめんね、ノレン」
今日何度目かも解らない、サインの「ごめん」に‥ノレンは困った様な顔をする。
ノレンとて、今日ここに来る迄は‥不安で一杯だったのだ。
確かにサインに騙され、そして怒りはしたが‥それもすぐに収まり。
むしろ、サインに対して怒鳴ってしまったことを申し訳なく感じていた位なのだから。
しかも、その日以降二日間もサインがリンクパールを付けなかったとあれば‥その思いは尚のこと、だろう。
「いや‥あの時は俺も強く言いすぎたから。‥本当に、気にしないでくれよ」
ノレンの優しい言葉に、こくりと頷くサイン。
そんなサインを見て‥ノレンもまた、こくりと頷く。
そして‥会話が途切れる。
いつしか耳に入らなくなっていた、厳かなオルガンの音が再び聞こえ始め‥
二人の周囲の空気を支配しはじめる。
無言で‥微動だにしない二人の間を‥時間だけがゆっくりと流れ‥
そして‥
‥今度はノレンが動き出した。
サインの手を取ると‥その手を引っ張りつつ、女神聖堂の出口へと向かった。
出口へと向かいながら、ノレンは振り返りつつサインに囁く。
「じゃあ‥戻ろう。前の俺達に‥友達の頃の俺達に、さ」
微笑みながら、そう言った‥ノレンの言葉に。
サインは大きな嬉しさと‥少しの寂しさと。
そんな二つの気持ちを抱えつつも‥ノレンの後を歩いて行く。
本当は‥本当は。
‥ノレンの恋人になりたかった。
あの夜の様な事を、ノレンとしたかった‥いや、ノレンと共に過ごすだけでも良かった。
でも‥それは今の自分にとっては、欲張りな想いなのだろう。
そうだ‥今は。
今はこうして、ノレンと手を繋いで‥友達でいられる。
それだけで‥充分なのだ。
サインは自分にそう言い聞かせると‥ノレンと共に歩いて行く。
‥リンクシェルイベント、その集合場所へ。

その日のリンクシェルイベントは‥大成功と言っても良かっただろう。
‥特に、二人にとっては。
ノレンの言った言葉に、未だ少しの寂しさは抱えつつも‥
二人で過ごす時間は楽しく、それに‥
以前よりも近くなれた、そんな思いが二人にはあった。
息の合った呼吸。
不思議と伝わる思い。
いつもよりも動きが良く‥それに比例して戦果も上げて。
そんな楽しいイベントの後‥もう一つのイベントが始まる。
‥いつもの食事会‥その席にて。

いつも食事をしている海神楼‥そのレストランにて。
メンバーが勢揃いして、料理を食べる中‥突如ラケルトが席を立った。
立ち上がったラケルトは、コホン、とひとつ咳払いをして‥皆に聞こえる位の大きな声で話し始める。
丁度隣り合う席に座っていたサインとノレンも、ラケルトの方を見て‥その言葉を待った。
「さて、みんな‥ちょっとだけ注目!食事も進んできた所だけど‥ここで重大発表があります。
 ‥ヘリアン・フリアン!‥そして、ユミタタ!」
ラケルトに名前を呼ばれたのは、リンクシェルメンバ-である二人のタルタル。
丁度ラケルトの席の近くに座っていた二人は、ラケルトの言葉に呼応し、同じ様に席を立つ。
その二人の組合せに、サインは何かに気付いたのだろう‥慌ててノレンの方を見る。
‥しかし、当のノレンは「これから何が始まるのか」も解らず‥ただ二人の方を見つめていた。
いや‥正確にはユミタタの方を見ていた、と言った方が正しいのかもしれない。
‥こっそりと想いを寄せていた女性、ユミタタの方を。
そんな二人の想いも知らず‥今度はタルタルの男性‥ヘリアンが高らかに声を上げる。
「みんなに‥発表することがあります。‥えっと、来る来月の1日に‥僕達は結婚します!」
ヘリアンは意気揚々と喋り‥ユミタタは恥ずかしそうに、そして嬉しそうに‥頬を染める。
サインは「やっぱり‥」という思いと共に、少しだけ顔を曇らせた。
そして‥挙式の案内や、皆の出席を促す言葉をヘリアンが続ける中‥サインは一人で考え始める。
二人の事‥いや、ノレンの事を。
リンクシェルの中で、恋人同士が式を挙げる‥それはとてもおめでたいことなのは解っている。
しかし‥問題はその人物だ。
サインは二人の仲を知っていた‥「結婚も近い」という事だって、噂に聞いていた。
しかし‥これほど早くにその日が訪れるとは思いもしなかったのだ。
更には‥ノレンがユミタタに想いを寄せているのも知っている‥。
‥二人が結婚するとなれば‥ノレンはきっとショックを受けるだろう‥サインはそう考えていた。
サインはそんな考えを持ちながら‥そっとノレンの表情を覗き込む。
しかし、予想に反して‥ノレンの表情、それは‥とても晴れやかだったのだ。
まるで‥二人の門出を祝う様な、そんな晴れやかな表情。
何か‥ノレンの想いに変化があったのか、あるいは‥
その事が気になりながらも、しかし場所が場所‥直接ノレンに聞くこともできない。
サインは何とも言えない気持ちのまま‥食事会を過ごしたのだった。

「ああ‥適当にソファーにでも座ってくれよ」
ジュノにあるノレンのレンタルハウス‥そのリビングにて。
ノレンに招待されたサインは、言われるままにソファーへと腰掛ける。
‥こんなに早く、再び来るとは思っていなかった‥この場所。
しかし、現に今‥サインはここに居る。
最も、ノレンにとって自分は「友達」という認識にすぎないのだろうが。
‥食事会の後‥サインはノレンに声を掛けられた。
この後、自分のレンタルハウスへと寄っていかないか、と。
まるで思案するような、そんな表情で話すノレンに‥
サインは「恐らくルミタタの事だろう」と思いながらも‥ノレンのレンタルハウスへとやってきた。
道中、何もしゃべらずに歩いてきたノレンに‥サインは「やはり悲しんでいるのではないか」との考えを抱いたのだが‥
ともあれ、こうして呼ばれたからには、ノレンに何か「言いたい事」があるに違いないのだろう。
サインは友達として‥その話をしっかり聞こう、と心に思ったのだった。
「まぁ、ジュースでも飲んでくれよ」
一旦キッチンへと行っていたノレンが、ジュースを手にリビングへと戻ってきた。
サインの前のテーブルに一つ置き、自分は手に持ったままソファーへと腰掛ける。
丁度テーブルを挟んで、サインと向かい合う位置に座ったノレン。
軽くジュースを飲み込むと‥ノレンは一息ついて話を始めた。
「サインには‥その‥さ、言ったよな。俺‥ユミタタの事が好きだ、って」
どこか懐かしい記憶を振り返るように‥軽く俯きながら呟くノレン。
サインは何も言わずに‥いや、軽く「うん」と言って頷くと‥話の続きを求める。
「今日の‥ユミタタとヘリアンの言葉を聞いてさ。俺‥‥ショックだったんだ」
その言葉に‥サインは思わず顔を伏せてしまう。
想いを寄せていた人が、別の人を好きになる‥あるいは結婚する‥それはショックなものだろう。
‥自分とて解っている‥ノレンがユミタタを好きだと知っていて‥尚且つ本人からも言われたのだから。
ノレンが大きなショックを受けていたのは‥充分に解っているつもりだった。
しかし‥
「俺‥本当にショックだったんだよ。‥ユミタタが結婚する、って聞いても‥どうとも思わなかったことが」
ノレンの発したその言葉に‥サインは思わず顔を上げる。
正に「それはどういう意味?」と、ノレンに尋ねるように。
「ユミタタが結婚する‥そう聞いて、始めて思ったのは‥「それは良い事だ」って事だった。
 別に強がりを言ってる訳じゃないんだぜ?‥なんていうのか‥俺の中でユミタタが、いつしか‥
 ‥いつしか‥「好き」とは思えなくなっていたんだ」
決して激しい表情を露わにするでもなく‥
冷静に、淡々と話していくノレン。
そこまで話し終えると、再びジュースに口を付けて‥口中を潤した。
そして再び話を始める‥‥何も言わないサインに向けて、言葉を続けていく。
「いや‥違うのかも知れない、な。‥俺はユミタタが好きだと‥錯覚していたのかも知れない。
 『これが恋なんだ』って‥錯覚をな。んー‥恋に恋する、なんてヤツ‥だったのかな?」
何か‥昔懐かしい何かを思い出す様に、ノレンは話し続ける。
過去の自分を、嘲り笑うでもなく‥懐かしむでもなく‥ただ、見つめ直すように。
「で‥気がついたら‥どうしてかな。こんな事を、聞いて欲しくて‥その‥
 サインに聞いて欲しくて‥さ。‥俺、どうして‥だろうな」
淡々と話していたノレンだったが‥最後の言葉だけは違った。
どうしてかは分からなくても‥サインに聞いて欲しい。
その言葉を発していた時のノレンは‥不安そうな、何かに迷っている様な‥
そんな印象が、表情から伺えたのだ。
戸惑うノレンに‥サインは何か、感じる所があったのだろう。
ソファーから立ち上がると、ノレンの隣に腰を下ろし‥そして、身体を寄せる。
そんなサインを、ノレンは拒もうとはしなかった。
二人の腕が‥そして肩が触れあい‥
サインはノレンにもたれるようにしながら‥小さな声で尋ね始めた。
「ノレン‥ねぇ、ノレンは‥ボクの事を‥友達だと思うから、そう言うの‥?
 ‥‥それとも‥‥」
「‥分からない‥俺‥俺の心が‥‥分からないんだ‥」
サインの言葉を遮る様にして‥ノレンは答える。
分からない‥と、首を振りながら‥ノレンは答える。
いや、正確には分かっているのだろう‥分かっているのだろうが‥
心のどこかで、それを認めたくない‥という気持ちがあるのかもしれない。
まだどこか‥抵抗があるのかもしれない。
「‥ううん、きっと分かってる。だって‥ノレンはボクにとても温かいもの‥とても優しいもの‥」
そんな抵抗を、ゆっくりと解きほぐすかのように‥サインは優しい言葉を続ける。
ノレンの心に染み渡っていく‥そんな言葉を。
「俺は‥お前に「友達に戻ろう」なんて言ったんだぞ‥。
 お前は‥きっと違う事を期待していただろうに‥‥しかも今度は‥俺‥」
「うん‥‥そうだね。でも‥良いの。もう、良いんだよ」
自分から「友達に戻ろう」と言ったノレン。
それが今になって‥「友達では嫌だ」という我が儘心が溢れてきて。
そんな自分に、戸惑いを覚え‥そして自分が嫌になるノレン。
しかし‥そんなノレンの言葉を、今度はサインが遮る。
今朝方、サインに言われた言葉‥「もう良い」という言葉で‥優しく‥優しく。
そんなサインの言葉に‥ノレンも心が決まった‥のだろう。
改めてサインの顔を見つめると‥そっとその名前を呼んだ。
「サイン‥」
名前を呼ばれたことに、呼応するように‥
いや、それ以前に、自分の心は決まっているから‥だから‥
そんな想いを込めて、サインは応える。
‥愛しい人の名前を。
「ノレン‥」
名前を呼び合った二人は、惹かれるように‥導かれるように、互いの顔を近づけていく。
自然と目は閉じられ、そして‥
‥唇が重なった。


  
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