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星芽寮交響曲

18話『それぞれの悩み』

 ←その92『三○○ その3』 →その93『三○○ その4』
7月27日 昼

 

「‥はぁ、はぁ‥‥‥はぁ‥」
‥見てはいけないものを見た‥
いや、そういうのじゃなくて‥‥
‥見たくないものを見た‥
そう‥その通りだよ‥。

オイラはフリスト‥フリスト・クラリスト。
鼻の院に勤めている、タルタル族、13歳だ。
今日は光曜日、仕事がお休みの日だから‥
お昼を少し過ぎた今、こうして水の区をぶらぶらと散歩してたんだけど‥
いつの間にやら、ここ‥調理ギルド前にやってきていたんだ。
とは言っても、オイラは調理なんてロクにできなくて。
普段からこんな所になんて、来る事も無いんだ。
勿論、今日だって目的があってここに来た訳じゃない。
そう、オイラはさっきまで‥息を荒げながら、走りに走って‥ここまでやってきたんだ。
あ、別にヤダンみたいに、ランニングが日課で‥とかそういうのじゃないぞ。
そうじゃなくて、実はさっき「見たくないもの」を見てしまったから‥
だから、オイラはここまで走って逃げてきたんだよ‥。
え?「見たくないもの」って何かって?
それは‥‥うーん。
まぁ、色々とややこしくてさ‥後でちゃんと説明するよ、うん。
それよりも‥問題はこれからの事なんだよね。
本当は、そろそろ寮まで戻ろうと思ってたんだけど‥
このまままっすぐ戻るとなると、オイラが今走ってきた道を戻る事になる。
となると‥そうだ、「見たくないもの」に鉢合わせしちゃうかもしれないんだ。
だから‥ちょっとだけ寄り道していこうかな。
丁度ここから南に行けば、ユランの勤めるスィーツショップがあるし。
うん、そっちに行こう。

「いらっしゃいませ‥やぁ、フリスト」
お店に入って‥オイラはそのままショーウィンドウの方へ向かう。
ふふ、今日も美味しそうなケーキが一杯あるなぁ。
‥いや、ここはスィーツショップなんだから、それは当たり前、だな。
とりあえず‥どのケーキを食べるか決める前に、まずはユランに挨拶しておかないと。
「やっ、ユラン。今日も美味しいの食べにきたヨ」
オイラの言葉に、ユランはいつもの営業スマイル‥いやいや、ホントのスマイルを浮かべてる。
ふふ、普段楽しくおしゃべりをしているオイラには、ちゃんと分かるんだぞ。
ユランのスマイルは、なんていうのか‥本当に人を惹きつける笑顔、なんだよな。
そう、まさに‥ユランはこのお店の「顔」だ。
もともと、ユランは優しい顔立ちをしてるし‥その上であんなに良い笑顔を見せるんだから。
実際、よく来るオイラも、お客さんの中にユランの方をぼーっと見ている女の子とか見かけるし‥
うーん、そんなユランがちょっと羨ましいな。
あ、でも‥ユランはパティシエ志望なんだっけ。
本当はカウンターに居るよりも、厨房でケーキを作りたいんだろうなぁ‥。
「どう、フリスト‥今日も美味しいのが沢山揃ってるよ。何にする?」
と、ショーウィンドウを見て考えているオイラに、ユランが声を掛けてくる。
オイラが考えていたように、ユランはカウンターに居るのが寂しそう‥では勿論無いけど。
ともかく、ユランはきっとオイラの事を「どのケーキにしようか迷ってる」って思ってたんだろうな。
‥でも、確かに迷うなぁ。
ガトーオーフレース‥は最近よく食べてるし‥
ブラックプリン‥は、ちょっと甘いし‥
ジンジャークッキー‥は、オイラはあんまり好きじゃないし‥
他にもあれこれと視線を移してみるけど‥「これ!」っていうものが、今日は見当たらないんだ。
む‥決まらないぞ‥。
‥よし、それじゃあ‥「ユランの作ったケーキにするヨ」‥とは流石に言えないなぁ。
そんな事を言ったら、ユランは喜ぶような、悲しむような‥そんな不思議な表情をしそうだし。
‥そうだ!
「じゃあサ、ユランのオススメのを教えてヨ」
オイラは良い事を思いついた!とばかりに言ってみる。
うんうん、普段作るのをお手伝いしているユランなら‥良いものを教えてくれるだろうし。
だから‥と思っていたんだけど‥
「うーん、そうだねぇ‥」
ユランは、オイラの言葉に一瞬考える様な素振りを見せた後‥
こくり、と頷いてから「オススメ」を教えてくれたんだ。
「じゃあ、王道のガトーオーフレース‥」
「それ、最近よく食べてるんダ‥」
「あ、それじゃあタマにはブラックプリン‥」
「う‥それはちょっと甘過ぎテ‥」
「じゃあじゃあ、気分を変えてジンジャークッキー‥」
「うぅ‥それは甘くなさ過ぎテ‥ディルにあげてヨ‥」
びっくりする程、考えというか候補というか‥それがユランとぴったり合って。
‥息が合うのは良いコトだけど、こういう時に合うのはチョット‥だな。
うーん、それじゃあこうなったら‥
「やっぱり、今日もガトーオーフレースにするヨ」
他にも色々と美味しそうなケーキはあるけど‥なんていうのかな。
安定した美味しさ、というものがガトーオーフレースにはあるし。
そんな訳で、ガトーオーフレースと‥あとはいつものアップルジュースを注文したオイラは、テーブル席に向かったんだ。
勿論、窓際の特等席!‥ここから水の区が一望できる‥って程じゃないけど、景色は良いんだぞ。
え?一人なのに特等席なのか?なんて言われるかもしれないけど‥
‥まぁ、今日はホラ、お店の中も空いてるし‥ふふ、いいよね?
と、言う訳で‥オイラはテーブル席に腰を下ろしたんだけど‥
ふと、何気なく窓から外を見ると、そこには‥
「ン、あれハ‥‥マロンさんとヒーラ、かナ?」
そう、オイラの見ている先に、二人の姿を見かけたんだ。
仲が良さそうに、二人並んで歩いていて。
そういえば、この前の銀河祭でも見かけたし‥いや、他でも時々見かける。
うーん、二人はとっても仲が良いんだなぁ。
「仲が良い‥かァ」
仲の良い二人を見てると‥オイラの頭の中に「あの人達」の事が浮かんでくる。
いつも一緒‥二人一緒に行動してる、って言うのかな‥。
そう、オイラに会いに来る時だって、二人一緒で‥
「兄さン‥」
‥自然と、オイラの口からも‥そんな言葉がこぼれてくる。
窓の外に向かって、ぼーっとしながら呟くオイラって‥まるで兄さんに‥
「お兄さんがどうかしたの?フリスト」
「えッ!えええッ!?‥ゆ、ユラン‥びっくりしたァ‥」
ぼーっと窓の外を見つめていたオイラの、その後ろから。
‥いや、正確には後ろじゃないけど‥とにかく、ユランが突然声を掛けてきたんだ。
ぼーっとしていたせいもあるんだろうけど、もう、オイラびっくりしちゃって‥
「ふふ、驚かせてごめんね。ちょっとお店が暇だから、特別に少し早めの休憩時間を貰えたんだよ」
ユランはそう言うと、手に持ったトレイをテーブルに置いて‥オイラの前の席に座ったんだ。
オイラと同じガトーオーフレース‥と、オレンジジュースかな?と一緒に。
あぁ、確か‥お昼以降、10分程度の休憩時間があるとかなんとか、前に聞いた事があったっけ。
ふふ、オイラも話相手が欲しかったし、タイミングが良かったかな。
「で‥お兄さんがどうしたの?フリスト」
ユランは席に着くと、まずオレンジジュースを一口飲んで‥さっきの続きを聞いてくる。
うーん‥兄さんの事‥かぁ。
まぁ、別に隠す事でもないし、ユランなら‥良いかな。
「ん~と、サ。オイラにはクリスト兄さン、っていう年の離れた兄さんが居るんダ」
「ふんふん」
オイラの言葉の一つ一つに、ユランは相づちを打ってくれて。
ふふ、ユラン相手だとなんだか話しやすいなぁ。
おっと、続きだ続きだ‥
「歳が離れてるせいかナ?オイラにはすっごく優しくてサ。‥オイラも大好きだったんだヨ」
そう言うオイラの頭の中には‥兄さんとの色々な思い出が蘇ってくる。
子供の頃、ずっと遊んでくれた兄さん‥
バストゥークの鉱山区で、迷子になったオイラを‥心配してずっと探し回ってくれた兄さん‥
そんな‥優しくて温かい、兄さんの思い出。
「ふふ‥優しいお兄さんか‥良いなぁ。一人っ子のぼくには羨ましいよ」
そんなユランの言葉に、オイラは少し照れちゃったけど‥
でも、本当に‥オイラは兄さんが大好きだったんだ。
‥好きだったんだ。
「うン!優しいし、強いし‥あ、兄さんは冒険者をしてるからサ。オイラの自慢の兄さんなんだけド‥」
「うん‥それが‥‥何かあったの?」
でも‥兄さんは‥。
兄さんには‥。
「‥兄さんにサ、その‥『大事な人』が出来ちゃっテ‥」
「それって‥恋人、とか?」
ユランの言葉に、オイラはコクン、と頷く。
そう‥だ、「大事な人」‥「恋人」が出来たんだ。
‥初めて兄さんにその人を紹介されたときも‥兄さんはそう言っていたっけ。
(この人は‥オイラの大事な人なんだヨ。フリストもよろしくしてくれよナ)
‥でも‥でも、オイラは‥。
「その人モ‥良い人なんだけどサ。でも‥オイラ、なんだか‥反発しちゃってサ。
 ‥いっつも‥酷い事を言っちゃうんダ」
会う度に‥オイラはその人にキツい事を言ってしまった。
本当は‥本当はそんな事、思ってもいないのに。
でも‥‥
「あの人、いっつも兄さんと一緒にいテ‥いや、その‥恋人だから一緒に居るのは分かるけド‥でモ‥」
そうだ‥あの人は、兄さんといつも一緒に居て。
‥オイラが大好きな兄さんを‥独り占めして‥。
そんなあの人の事が、オイラは‥
‥羨ましかったんだ‥。
だから‥オイラはあの人に‥酷い言葉を‥。
「それでも‥あの人は全然怒らなくてサ‥でも、代わりに兄さんが怒るんだヨ‥だから、オイラ余計ニ‥」
‥そうなんだ。
オイラの言う、酷い言葉の数々に‥
あの人はいつも、少し困った様な顔をするだけで‥怒らなかったんだ。
でも‥次第に、兄さんがオイラに怒り始めて‥
‥オイラが悪いのは分かってる‥分かってるけど‥
兄さんに怒られたら、オイラは‥。
「それデ、とうとうオイラ‥あの人どころか兄さんだって‥会いたくない‥見たくない‥って思っちゃっテ‥」
そう‥あの人どころか、兄さんにまで‥。
‥そのせいもあって、学校を卒業後‥スカウトに乗ってウィンダスに来た、のかもしれない。
勿論、鼻の院に入りたかった、っていう思いはあったけど‥それでも、ね。
兄さんの戻ってくる、バストゥークには居たくなかった‥って思いがあったんだと思う。
でも‥でも‥‥。
「‥本当は好きなのに‥兄さんの事、大好きなのに‥でも、もう‥‥」
離れてみて‥分かったんだ。
元々、オイラがバストゥークに居た頃も、毎日会える訳じゃなかった‥兄さんは冒険者だからね。
それでも、時折家に帰ってくる兄さんに会う事が出来た‥それだけで良かったのに。
‥ウィンダスに来て、全然‥兄さんに会わなくなって‥分かったんだ。
‥兄さんの事が改めて‥大好きだ、って‥会いたい、って‥でも‥
‥‥‥もう。
「‥きっト、兄さん‥それにあの人だってオイラの事、怒ってル‥嫌ってるに決まってるシ‥」
そうだ‥あの人に‥あれだけ酷い事を言ったオイラを。
兄さんも‥あの人も‥怒ってる‥嫌ってる。
オイラになんて、絶対に会いたくないって‥思ってる。
だからさっきも‥逃げ出したんだ。
‥「見たくないもの」‥兄さんとあの人‥から‥。
「それは‥どうかな?」
そんな‥そんな風に考えていたオイラに。
今まで黙って話を聞いてくれていたユランが、突然言葉を挟んできたんだ。
‥でも、それは‥言葉とは裏腹に、とても優しい言葉で。
「ね、フリスト‥お兄さんも‥そのお兄さんの恋人も。確かに怒ってるかもしれない。
 でもね‥今のフリストは、悪く言った事を反省してる‥それならそれで、ちゃんと謝ってごらん?
 きっと‥きっと許してくれるよ。‥なにせ「フリストの」お兄さんなんだから‥ね?」
ユランのその言葉に、オイラは‥愕然としていたんだ。
なんでその事に気付かなかったんだろう‥「謝る」って事に。
‥ううん、本当は‥うっすらと気付いていたんだ‥でも‥
‥あの人に謝るのは‥なんて思いがあったから‥。
でも‥今は‥今なら‥。
そうだ‥今なら‥分かるから。
昔は‥あの人の事を単に「兄を盗られる」と思って嫌っていた‥子供の様に。
でも今は‥少しだけ違う。
あの人は、兄にとって大事な人だから‥それは自然の事だから‥。
‥オイラにも今、うっすらと心にある「想い」‥その大事さが、分かってきたから‥。
だから‥今なら‥謝る事ができる‥気がする‥。
だから‥‥
‥‥まだ、居るかな‥兄さん‥。
‥迷ってる暇は、無い‥な。
よし!
「ユラン‥ごめン、オイラ、行く所ができたんだ‥このガトーオーフレース、あげるヨ!またネ!」
オイラはそう言うと、全然手を付けてないガトーオーフレースを余所に‥慌てて席を立って、店を出たんだ。
行く先は‥勿論決まってる。
まだウィンダスに居るかも知れない、兄さんと‥あの人の元へ。
オイラは‥駆け出していたんだ。
「フリスト‥頑張って。でも、ガトーオーフレースを二個は‥ぼくにはなかなかキツいなぁ」
残されたユランが、そんな独り言を言っていたなんて‥知るはずも無かったけどね。


うん‥今日も夕食が美味いな。
今日のメニューは‥音楽の森(風)サラダに、野ウサギのグリル、そしてシーフードシチュー。
中でもシーフードシチューが絶品だ‥様々な魚の味や食感が楽しめて、その上‥
‥って、こんな事言ってる場合じゃねぇ。
おれにとっては「好都合」なこの料理‥
この料理をヨックが食べている間に‥作戦決行だ。
「なぁ、ヨック‥おれに何か、隠してる事‥あるだろ?」
おれはヨックがシーフードシチューを食べ始めた時を狙って‥少し低めの声で言ってみる。
あ?タルタルは元から声が高いから、効果が無いって?んな事ぁ無ぇよ。
現に、ヨックはおれの言葉に図星を突かれて、慌てて‥
「‥え?いや、別に」
‥‥なんとも反応が無ぇじゃねぇか。
おっかしいな‥ヨックはそもそも、熱いモノを食うのが苦手なハズだ。
このアツアツシーフードシチューなんて、何度も「ふぅ~」って息を吹きかけて食ってるんだから。
勿論、息を吹きかけても早々冷める訳が無ぇ。
ある程度熱いシチューを口に入れて、ハフハフしながら食べてるんだが‥
その最中に「痛い図星を突いた一言」を言われればどうなると思う?
‥そうだ、いわずともがな、ってヤツだが‥
きっと「精神的ショック」と「アツアツのシチュー対応」の狭間で戸惑って、
目を白黒させながら、慌ててシチューを噴き出すハズだ!
ハハハッ、更にそのアツアツシチューを掛けられたおれが慌てふためいて‥
‥って、違う違う‥別におれはシチューを噴き出すヨックが見たい訳じゃ無ぇんだ。
更に言うならシチューを掛けられたい訳でも無ぇ。
大事なのは‥そう、「ヨックの隠し事」をあばきたいだけなんだ。
ともかく、おれが「隠し事」について迫って‥
ここでヨックが不審な素振りを見せれば‥隠し事がある、って事になる。
そこからヨックを問い詰めていけば‥ミッションコンプリート!って寸法だったんだが‥。
‥あん?机上の空論?バカ言え、理論は机の上だけで生まれる訳じゃねぇ!
言ってる意味が分からない?‥ふん、奇遇だな‥おれだって分かって無ぇさ。
え?その「ヨックの隠し事」について、何か心当たりがあるのかって?
よくぞ聞いてくれた。あれは‥そう、1年前の‥
‥いや違う、今日の夕方の事だった‥

いや、回想に入る前に‥おれの紹介がまだだったよな。
おれはラスキ。亜麻色のとんがり頭がトレードマーク、鼻の院きっての‥え?自己紹介は良いって?
ちぇっ‥。

夕方‥給料日前で金の無いおれは、休みの日だというのに部屋で‥いやいや。
部屋の中で悠々自適に過ごしていたんだ。
ふふ、さわやかなウィンダスの水を飲みつつ、読みかけの伝記を読む‥優雅なひととき‥
え?寮提供の水を飲みながら、いつまでも読み終わらない本を読んでいたんだろって?
うるさいな、分かってるんなら黙っといてくれよ。
そんな中、外出から帰ってきたのが‥そうだ、同室のヨックだ。
朝方「出かけてくる」と言ったきり、夕方まで帰って来ないヨックだ。
おれが「連れていってくれよ」と言っても、「ダメだ」と言ったヨックだ。
まぁ、ヨックも朝は機嫌が良くなかったみたいでな‥その様子におれも引き下がったんだが‥
帰ってきたヨックはすこぶる機嫌が良かったんだ。
ははぁん、何か良い事があったな‥なんて思ったおれは、ここぞとばかりにアタックにでる。
‥そうだ、ヨックのちんこを掴んでやるんだ。
え?なんでちんこを掴むのかって?
いや、おれって他人のちんこを触るのが好きでさ‥あ、でも男が好き、って訳じゃないぜ?
そうだな、欲を言えば「ちんこの生えた女」が居れば最高なんだが‥まぁ、それは無理だろうけど。
ともかく、おれは形の良いちんこ‥例えばそう、ディル!あいつのは絶品で‥見る度に触りたくなっちまう。
‥ディルには相当警戒されているが‥まぁ、それも時間の問題だろう。
おれのテクニックで、おれ無しでは居られない身体に‥って話が逸れたな。
まぁ、ディル以外にもなかなか良い形のちんこを持ってるヤツは居て‥
例えばフリスト‥あいつはなかなか太い、良いモノを持ってる‥。
ピノも良いな‥大きさがなんともたまらないんだが‥ピノに手を出した瞬間、色々な所から敵意が来るんだ‥迂闊に触れねぇ。
で‥ヨック‥ヨックもまぁ、なかなか良いモノを持ってるんだよ。
ただ‥まぁ、性格がキツくてなぁ‥同室者だから、ってのもあるんだろうが、おれに対しては特に厳しい。
普段触ろうとしたら‥いや、触る前に気配を察するのか、「お前、やめとけよ」と冷たく一蹴される位だ。
でも‥機嫌の良いときなら話は別なんだ。
少し恥ずかしそうに笑いながら「こ、こら、ラスキ‥お前、待て‥ったく‥」なんて言って、なすがままにされてるんだから。
そんな状況なら、おれとしてももう‥触るしか無いだろ?
で‥今日がその「機嫌の良いとき」って訳だ‥鼻歌なんて歌ってる位だからな。
タンスに向かってごそごそとしているヨックに、おれは後ろから、そっと足音を忍ばせて近寄ると‥
「ヨックぅ、覚悟ぉ~」
なんて叫びながら飛びかかったんだが‥
‥くっ、すんでの所でひらりとかわされちまったんだ‥。
おまけにヨックめ、何食わぬ顔で「ん?ラスキ、何してるんだ?風呂いくぞ」なんて言いやがって‥。
とはいえ、済んだことは仕方無ぇ‥おれは仕方無く風呂に行くことにしたんだ。
でも、その時‥そう、ヨックのそばに近寄ったときに‥感じたんだよ。
‥甘い‥まるで女の子の様な香りを。

風呂場に向かう道すがら、おれはずっと考えていたんだ‥。
そう、ヨックから感じた「女の子の香り」の意味を。
ん?考えるなんて似合わないって?いやいや、おれだって考えることはある‥そう。
その時ばかりは、おれだって「真面目モード」に切り替わるのさ‥。
コホン。
先程感じた、ヨックの身体からの「女の子の香り」。
それは決して「かすかに」ってレベルじゃない位、しっかりと香っていた‥。
香りのレベルからして、ヨックが何かの拍子に「女の子の香り」が身に着いてしまった‥と考えるのが妥当だ。
事故があって、香水を掛けられた‥?あり得るかも知れないな‥確率は低そうだが。
でも‥もっと確実な事がある。
それは‥
「お、ディルも風呂か‥よしよし、揉んでやろうな」
「な、何を言うとんねん、ラスキ。ええ加減にしいや」
「‥ラスキ、やめとけよ‥」
丁度、おれ達と同じタイミングで風呂に向かうようだったディルに、おれはそう言って手を揉む仕草を見せたが‥
‥ふっ、つっけんどんな言葉を返してくるなんて、なんて恥ずかしがり屋さんなんだ。
ああ、決して嫌がっている訳じゃ無いのは分かる‥おれの真後ろをちゃんと着いてきているんだからな。
全く‥素直になれば良いのに‥え?風呂に行く為に着いてきてるだけだろう、って?
‥本当の事は黙っておいてくれよ‥。
ああ、それよりも‥そう、さっきの話だ。
流石にヨックが、何かの拍子に香水を掛けられた‥なんて可能性は低いだろう。
それに、ヨックが自分から好んで香水を掛ける‥なんて事も無いはずだ。
普段は香水なんて全然つけないヤツだからな‥いや、寮内でもつけてるヤツは居ないと思うが。
と、なると‥‥そうだ。
『香水をつけた女の子と長く一緒に居た』
これしかないな。
‥思えば、今朝出かける際、おれに対して同行を断ったのも‥女の子に会う為だとしたら。
そうだ‥そう考えれば全てが繋がる。
くっ‥ヨックめ、おれを差し置いて女の子といちゃいちゃ、チョメチョメなんて事をしやがって‥!
大人の階段を上るなんて、なんてうらやま‥いや、けしからん事だ!
こうなったらおれが‥い、いや、待て待て。
これはあくまでおれの推測にしかすぎないんだ‥そう、確定事項じゃない。
例えばこう‥
「わあッ!せ、せやから触るな、っちゅうとるねん!」
「‥‥ラスキ‥‥」
そう、おれがディルに触れようとすれば、ディルは嬉し恥ずかしキャッキャッ‥と逃げる。
そんな確定事項じゃないんだ。
それなら‥それなら一体どうすれば「本当の事」が分かるのか。
それは‥
‥ん、そうだ‥丁度今から行くのは風呂‥となれば!
身体検査しか無い‥!

‥とは意気込んでみたものの‥
脱衣場に入り、服を脱ぎながらヨックを観察していたものの‥それらしき様子は無い。
そうだ‥例えば身体中にキスマークがあるとか!
あるいは‥ちんこが凄い事になってるとか!
そういう風な様子は、ヨックからは感じられなかったんだ。
「ラスキ‥他人の身体、じろじろ見て‥なんなんだ?」
くっ‥更にはヨックのヤツ、鋭いことにおれが見ていた事を勘づいているかの様に‥
いやいや、これは違う‥そうだ、ヨックの得意なブラフなんだ。
‥いや、ヨックがブラフを使うなんざ、見た事無いが‥ともかく。
ここでおれが慌てていたら、おれの壮大な計画がバレちまう。
ここは一つ誤魔化すしか無ぇな。
「べ、べつに見てねぇよ‥な?ディル」
「せ、せやから触るなって!」
ああ、丁度隣で服を脱いでいたディルに‥おれは走り寄ると、その身体を触って‥これで良し。
ん?隣なのに走り寄ったってのはおかしいって?
いやいや、ほんの5ガルカほどのすぐ隣なんだって。
‥まぁ、それはさておき‥。
おれの視線が誤解だと分かったのか‥あるいはあきれたのか。
ヨックは早々に服を脱ぐと、颯爽と風呂場に向かってしまった。
‥ふふ、これは‥そう、チャンスだッ!
おれは慌ててヨックの衣服が入っている脱衣カゴを覗き込むと‥
躊躇なく手を突っ込み、その中を探り始める。
「‥な、なぁ‥」
かすかに‥そう、かすかに「あの香り」が残っている‥
衣服にしっかりとついているような、そんな感覚‥
「おい、ラスキ‥」
しかし、その反面‥どうだ、この下着は。
シャツにしても、パンツにしても‥鼻を寄せて嗅いでみても、香水の香りはしない‥
つまり、下着よりも服の方に香りが多く付着していると見える‥
「お、おい、何をしとんねん‥」
つまり‥だ。
ヨックは女性と、裸同士での付き合い‥つまりえっちな事にまでは至っていない‥
ふふふ、まだまだコドモだと言う訳だ‥!
‥いや、まぁ‥おれだってそうだけど‥
「なんでそんな、ヨックのパンツを嗅いどるねん!」
ヨックのパンツを手に、考え事をしていたおれに‥横からディルの声が聞こえてきた。
‥はッ!?しまった‥でぃ、ディルに調査の現場を見られていた‥?
くっ‥おれとした事が、迂闊な‥
「‥ディル、いいか、この事はナイショだぞ‥」
ディルからヨックに、この調査のことがバレてしまってはいけない‥
おれは慌ててディルに向け、口の前に人差し指を立てる「ヒミツ」のポーズと共に黙秘を依頼する。
「‥いや‥ええけど‥お前、そんな趣味が‥‥」
少し戸惑ったように、そんな言葉を返すディル。
趣味‥‥ふっ‥。
他人を調査する‥つまり探偵としての活動など、おれにとっては稚戯に等しい事だが‥
そう思いたければ思うが良い‥。
「ふふ、これは‥おれの大切な目的の為なんだ‥!」
そう‥ヨックの「隠し事」をあばく、という大切な目的のため‥!
そんな目的を胸に、ヨックのパンツを握りしめ、ポーズを取ってみせるおれに‥
ディルのあきれたような視線が突き刺さっていたことを、おれは知らない。

まぁ、なんだ‥結局服とか調べても何もわかんねぇし‥
その後、風呂に入ったときにも怪しいところなんて無かったんだ。
‥ん?「真面目モード」はどうしたのかって?
いや、流石にあれは疲れるからさ、そんなに長く続かねぇんだよ。
風呂入ったあたりで止め止め、ってトコだ。
ともかく‥これがおれの「ヨックの隠し事」について知っている事だ。
‥まぁ、隠し事って言っても‥もう分かるだろ?ヨックの「隠し事」は‥「女の子」‥いや「彼女」だ!
ん?他の可能性とか考えつかないのかって?いやいや、あるわけ無ぇって。
で、まぁ‥風呂場であれだけ調べても分からないんなら「当たって砕けろ!」ってヤツだ。
ここ、食堂へとやってきて‥シーフードシチューの隙を見計らった上で‥
ガツンと「隠してる事あるだろ」って言ってやったんだが‥効果無し、と言う訳だ。
うーん、おれのカンだと、絶対何かある‥と思ったんだけどなぁ‥。
このままだと、当初に描いていた図式が成り立たなくなっちまう。
‥そうだ、まずはおれがツッコミ‥ヨックが動揺し‥更におれがツッコミ‥ヨックは泣いて許しを請う‥いやいや。
どこかの峠の上に立ち、岩場に打ち付ける波音を聴きつつも、隠し事を白状する‥というストーリーだ。
そのストーリーが序盤で砕け散ってしまって、あとは‥そうだな‥
そうだ、直接聞いてみればヨックは‥‥いやいや、そんな事答えてくれる訳が無いし。
‥ほら、学生時代からそうだったけど‥「彼女が居るとか恥ずかしくて言えない」‥なんてヤツが多いしさ。
いや、でも‥ヨックなら‥
「‥なぁ、ヨック。その‥今日女の子と一緒に居たとか‥」
おれは‥「ヨックなら、きっと本当の事を言ってくれる」そう思って聞いてみたんだ。
だって、これまで3ヶ月とちょっと‥もうすぐで4ヶ月も、一緒の部屋で過ごしてきたヤツなんだぜ?
同室者のおれには、本当の事を話してくれるハズだ‥そう思ったんだけど‥
「ん‥?‥い、いや、そんな事は‥無いぞ」
ヨックの答えは‥おれの想像しているものとは違ったんだ。
しかも‥そう答えたヨックの表情、というか‥様子、というか‥
それは、少し戸惑っている様な‥‥そう、まるで「嘘をついている」様な様子で。
そんな様子におれは‥おれは。
なんとなく‥ヨックに彼女が出来たんじゃないか、って思ったんだ。
‥そう考えるとさ‥なんだか寂しくってさ。
‥おれには‥おれに位は、彼女の事‥言ってくれたって良いじゃねぇか‥。
‥‥ちぇっ。
ヨックの様子に、少し‥本当に少しだけだぞ?‥残念な心持ちになりながらも‥
止まっていたスプーンを動かし、食事を再開するおれ。
でも、シチューも、冷めてきた‥のかな。
なんだかしょっぱくて‥美味しくないや。


夜‥とは言っても、寝る時間まではまだしばらくある‥そんな時間。
俺は、いつもの様に‥部屋の中で魔力の扱い方‥そのトレーニングに励んでいた。
ああ、トレーニング、って言っても‥対象は魔力だ。
過激に身体を動かしたりする訳じゃ無い‥精神集中とか、イメージトレーニング、といった類のものに近い‥だろう。
おれはベッドの上で「座禅」を組み‥両手を上下左右に振りつつ、魔力の集中を図る。
その動きから、同室者のピノには‥「こんな事言っちゃいけないけど‥ヤダンの格好、面白いね」なんて言われているが‥
と、とにかく‥目的の為には手段を選んでられないからな。
そうだ‥もっともっと努力しないといけないんだ‥俺は。
でも、俺が精神を集中させ、トレーニングに励んでいる間も‥否応なく視界の中に入ってくるものがある。
‥それは、同室者のピノの姿だ。
トレーニングに集中しないといけないのは分かっている‥分かっているが‥
どうしてもその姿が気になってしまうんだ。
‥今、ピノは自分の机に向かい、本を読んでいる。
その姿はとても‥‥い、いや、それは良いんだ。
それよりも‥そう。
俺は最近、ピノを意識しすぎている‥。
あの時‥銀河祭の日から‥ずっと。
友情とかじゃなくて、もっと‥そう、まるで異性に対する想いのように。
‥ピノは男なのに‥男同士なのに‥
それでもピノの事が気になって、俺は‥
そんな俺の雑念が、魔力を扱うトレーニングの邪魔をする。
そうだ‥精神集中が出来ないと、ロクに魔力を操ることは出来ない。
いつもなら、ここでピノへの想いを‥一時的に振り払ってでも、トレーニングを続けるんだが‥
‥今日はダメな日みたいだ。
そう‥今日は「あの日」だからだろう。
俺は手に着かないトレーニングに、区切りを付けるように座禅を解いて‥ベッドからゆっくりと降りる。
そのまま窓へと歩み寄ると、外にある時計台を見て‥うん、良い時間だ。
そろそろ‥そろそろ、ピノに言っても‥良い頃、だろう‥。
だから‥
「な‥なぁ、ピノ」
なるべく気を落ち着かせて‥俺はピノに声を掛ける。
‥落ち着かせたつもりが、思わず声が跳ねてしまった‥。
ピノは‥俺の事を不審に思っていないだろうか。
「ん、何?ヤダン」
しかし、ピノは‥俺の考えていたのとは違い、いつもの様子、いつもの声で俺の方へと視線を向ける。
‥良かった、大丈夫の様だ。
「その‥さ。今日は‥‥しないか?」
なるべく平静を装って‥俺はピノに提案する。
短絡的、抽象的な言葉だけど‥その意味を、ピノとて充分に察しているハズで‥
ピノもまた、顔を少し赤くすると‥頷いて答えてくれた。
「あ‥うん、そう‥だね。そろそろ良い時間‥だもんね」
ピノの答え‥その言葉に‥俺の胸は一層鼓動を早めていく。
そうだ、今日は‥二人でひとりえっちをする日、だ。
‥別に「今日しよう」とか、事前に言ってる訳じゃない‥
互いに‥あるいは片方が「そんな気分」の時に‥するだけだ。
とは言っても、なかなか自分からは言い出しにくくて‥結局、二日おきくらいのペースで俺たちはしている。
互いのベッドに座り‥互いに向かい合って‥それぞれ自分のちんちんを扱いて‥。
そんな「状況」に‥更に今の俺の「想い」が乗れば‥最高の「舞台」になる。
建前上では「お互い、えっちな事を考えつつしよう」というものだが‥俺の視線はピノのちんちんに突き刺さる。
ピノの‥そう、自分で扱いている様を見ながら‥俺も扱く事ができるのだ。
これ以上の‥えっちなネタなんて、そうそうに無い‥。
‥出来れば‥そう、互いに‥互いのちんちんを扱きあえれば‥なんて思うこともある‥。
でも、それは‥最初にピノにやんわりと拒否されて以降、言い出すことが出来なかった。
それでも‥それでもいい。
こうして‥二人で‥ひとりえっちを見て‥見せて‥それが出来るだけでも。
俺は‥俺は‥。

‥コトが始まる前は、あれだけ楽しみに‥思っていたのに。
終わった後は‥絶望の様な空しさが俺に襲い来る。
気持ち良いひとときが終わってしまった事‥
いくらこの行為を続けていても、ピノとは近づけない事‥
そして‥行為中、目を閉じたピノが「俺ではない他人」を想っている事‥
その事を考えると‥俺は‥。
俺は‥‥
‥‥今日も‥空しさが俺の心を苛む‥。
この空しさをかき消すには、どうすればいい?
どうすれば‥‥。
‥きっとその問いに、答えは出ないだろう‥。
俺の心が‥迷っている限り。
未だに悩む‥ピノと、そして‥
‥机の中の手紙‥その差出人との間で。
俺が‥迷っている限りは。
答えが‥出ないだろう‥。


 
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