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星芽寮交響曲

19話『祭の誘い』

 ←その93『三○○ その4』 →その94『三○○ その5』
8月4日 昼

  

いつものウィンダス、いつものお店、いつものスィーツ。
そんな「いつも」を堪能しながら‥オイラは甘いケーキを飲み込んだ。
ケーキの後を追う様に、少し酸味の効いたアップルジュースが喉を通って‥はぁ、美味しい。
そんな甘くて美味しいひととき‥その最中、オイラはなんとなく呟いたんだ。
「もう8月かァ‥寮に入って4ヶ月も経ったんだなァ」
今日は8月4日‥まだ8月に入って間も無いけど‥なんだかヘンな感じなんだ。
バストゥークに居た去年までは‥うん、8月は暑くて仕方無い、ってイメージがあったけど‥
ウィンダスはそうでもないんだ‥ああ、バストゥークほどには暑くない。
‥バストゥークと違って、緑が多いせいなのかな?
いや、ウィンダスを悪く言うつもりなんて全然無いんだ‥むしろ過ごしやすくて良い環境だ、って思う位だ。
過ごしやすいのは良いんだけど‥なんとなく‥なんとなく‥‥バストゥークが懐かしくなってくる。
あの暑い夏‥ヒューム族の友人達‥そして‥
‥母さん、元気にしてるかな?
たかだか4ヶ月‥って言われるかもしれないけど、オイラにとっては‥結構な時間だと思うんだ。
兄さんと‥それから「あの人」とは、この前に会って、じっくりと話をしたから良いとして‥
故郷に残してきた母さんの事が、どうしても気に掛かる。
でも、バストゥークまで戻るのは色々と大変だし‥
うーん、手紙とか書いてみようかな?
‥それはそれで「似合わない」なんて笑われそうだけどさ。
ともかく、そんな色々な思いを込めて、オイラはさっきの言葉を呟いたんだよ。
そうしたら‥
「どうしたの、フリスト?‥ひょっとして、メランコリーかな?」
おいらの独り言に、そう言って反応してきたのは‥ユランだ。
ちなみに、ユランはお昼過ぎの休憩中で‥オイラ達と一緒にスィーツを食べてる所なんだ。
ちなみに今日のユランは‥ふんふん、サンドリアティーを飲みながら、何かクッキーを食べてる。
オイラも今度、あのクッキー食べてみようかな‥?美味しそうだし。
っと、それよりも‥めらんこりぃ‥?
「めらんこりィ?‥何か新しいケーキなのカ?」
「ははっ、ちゃうちゃう、メランコリー言うんは‥せやな、ホームシックみたいなもんや」
オイラはその‥「めらんこりぃ」っていうのが何なのか分からなくてさ。
ユランの言う事だから、きっと新しいケーキの事だ!って思って聞いたんだけど‥
‥聞いた途端、一緒に居たディルに笑われちゃって。
ディルってば、笑わなくったっていいのに。
ホームシックならホームシックって、最初から言ってくれれば‥え?
「なんダ、食べ物じゃないのカ。‥って、オイラ違うヨ、ホームシックじゃないんだかラ」
ディルの言ったホームシック、って言葉に‥思わず慌ててしまいそうになるのを、オイラはなんとか抑えて。
できるだけさりげなく‥アップルジュースを飲みながら言ってみせたんだ。
だって、ホームシックだなんて、まるで子供みたいだから。
でも本当は‥うん、自分でもそうだって‥分かってるんだ。
だ、だからって‥オイラは言わないけどね!‥‥恥ずかしいから。
「ふふ、そう?元気そうならそれでいいんだけどね。
 そういえば‥今日はディルとフリストの、二人だけなんだね」
心の中では、少し戸惑ってる‥そんなオイラを見て、にこやかに微笑みながら言うユラン。
でも、丁度話の流れが変わったから‥そこはユランに感謝、だな。
‥ユランの言う通り、今日お店に来ているのはオイラとディルの二人だけだ。
ここ最近は、オイラ達二人に加えて、大抵はヤダンやピノが一緒なんだけど‥。
「あぁ、せやな。ピノは何や、買い物に行く、言うてたし‥」
そうそう‥ディルの言う通り、ピノは「今日中に買っておきたいものがあるから」って、買い物に行ったんだ。
今日中に‥っていうのは‥何だろう?ピノの事だから本とか‥かな?
ふふ、この間に貸した本だって、ピノってばすっごく喜んで読んでたし。
オイラ、本当に貸して良かった、って思ったよ。
「ヤダンも仕事があるとかデ、口の院に行ったみたいだヨ」
ヤダンは‥今日は仕事があるから、って言ってたなぁ。
闇曜日でも仕事だなんて、口の院は大変だ‥って思うよ。
そんなお休みの日の仕事でも、ヤダンは嫌そうな顔もしないんだ。
それどころか「大事な仕事だからな」ってガンバる所が‥凄いなぁ。
「そうかぁ、二人共忙しいんだね」
二人の近況報告‥っていうのとはちょっと違うかな?ともかく、二人の話にユランはそう言うけど‥。
オイラにしてみれば、ユランが一番大変じゃないか、って思うんだよ。
今でこそこうして、お喋りしてるけど、お休みの日でも‥ううん、お休みの日だからこそ働いてるし。
それに、平日にお休みなんて貰っても、オイラ達とは遊べないし‥。
‥でも、ユランからはそういう話は聞かないし‥きっとユランもガンバってるんだ。
「そういうユランはどうなんや?そろそろスィーツとか‥」
そうだ、ディルの言う通り‥そろそろユランがスィーツを作れる頃‥なんじゃないのかな?
オイラもそう思って、期待を込めて‥ユランに聞いてみよう。
「そうそう!オイラもユランのスィーツ、食べたいナ」
「あ‥作るのはまだなんだ‥今はようやく勉強させて貰っているところだよ」
オイラ達の言葉に‥ユランは少し苦笑いを浮かべながら、そう答えたんだ。
なるほど、まだまだ下積みが必要、って事‥なのかな。
「そうか‥ユランも大変やな‥」
オイラもそうだけど、ディルも‥少し沈んだ様子で、そんな言葉を掛けていて。
‥あ、オイラ達‥悪い事言っちゃったかな?その‥ユランだって頑張ってるのに、まるで急かすような‥
オイラはそう思ってユランの表情を見てたんだけど‥沈んだ様子は無いみたい。
ううん、それどころか「ガンバろう」って思ってるような、そんな表情だ。
「ふふ、夢があるからね‥大変じゃないよ」
思った通り、ユランはそう言って‥ふふ、両手を握りしめる「ガッツポーズ」まで見せてるんだから。
‥夢の為にガンバる‥かぁ。
ユランは‥凄いな。
‥そんな、燃えている様に見えたユランだけど‥急にその表情が変わったんだ。
「でも、勉強もまた、一時中断かな。もうすぐ忙しくなるしね‥教えて貰うよりも『あっち』の方が優先だし」
うーん、と考え込むような‥少し残念がる様な、そんな表情になるユラン。
「もうすぐ‥?」
ユランの言葉に、今度はディルが不思議そうな声を上げる。
オイラも、もうすぐ何があるのか‥すぐには頭に浮かんでこなくて。
うーん、もうすぐ忙しくなる‥もうすぐ‥あ、そうか、あれのことかぁ。
「あ、そっかァ、もうそんな時季なんだナ。オイラ、すっかり忘れてたヨ」
そういえば、もう8月に入ったんだもんなぁ。
確か‥8月の2週目、その週末にあったんだっけ。
と、すっかり思い出したオイラだけど‥ディルの方は違ったみたいだった。
「ん‥なんか、あるんか‥?」
不思議そうに首をかしげ続けているディル。
ん‥もしかして、ディルは‥あ、そうか、そうだった。
「‥ディル、もしかして‥っと、そうか、ディルはオルジリア大陸出身だっけ。
 あのね、もうすぐ‥そう、丁度次の週末に、お祭りがあるんだよ」
そうだ‥ユランの言う通り、ディルはオルジリア大陸の出身だ。
あっちの方だと、こういった風習‥というか、行事が無いのかもしれないな。
来週末にある、楽しくて仕方の無いお祭りを。
「そうそウ、『あますず祭り』って言うんだヨ」
そう‥夏といえば「あますず祭り」だ。
オイラも去年まで、毎年欠かさず参加していたけど‥すっかり忘れてて。
だって‥ふふ、バストゥークに居た頃は、暑くなってきたらこれ!っていうイメージがあったから。
ウィンダスだと、バストゥークほどには暑くないから‥ピンと来なくってさ。
ともかく、あますず祭りの事を思いだしたオイラは、それだけでも楽しい気分になってきたんだ。
だってさ、あの賑やかで楽しいお祭り!美味しい屋台!きっと楽しいことになるに決まってる、って。
‥そんな中、ディルの反応が‥ふふ、面白かったんだ。
「お祭り!?先月あったとこやのに?‥それはまた‥ごっつぃなぁ」
オイラやユランはもう、慣れてるけど‥ディルにとっては「また」なんだろうなぁ。
ついこの間、銀河祭っていうお祭りがあったところなのに、って。
でもさ、楽しいお祭りなんだから、幾らあったって良いじゃない?
「ふふ、ぼく達は慣れてるけど‥びっくりするのかな?やっぱり」
「次の週末‥8月の12日から14日、つまり雷曜日から闇曜日にかけテ、お祭りがあるんだヨ」
ユランもオイラも、ディルを見て少しだけ微笑ましくなって。
今度のあますず祭りでは、ディルはどんな反応をするのかな‥なんて考える。
ふふ、銀河祭でもディルは「ごっついなぁ」‥すごいなぁ、って意味だけど‥こればっかり言ってたんだよ。
だったら、きっと今度のあますず祭りだって!
「へぇ‥今度のも、風情のある祭りなんやろか‥?」
「それは行ってみてのお楽しみだヨ」
あますず祭りにも興味津々な様子のディルに。
オイラはお祭りの内容を「ナイショ」とばかりにヒミツにしておいたんだ。
勿論あますず祭りは、風情のある‥しかも楽しいお祭りだけど。
それだけじゃなくて‥って、そう、その時なんだ、オイラが「とある事」を思いついたのは。
「‥そうダ!今度のお祭りは‥みんなで行きたいナ」
‥今度は‥今度のお祭りは、仲良しの友達みんな‥あるいは大勢で行きたいな、って。
銀河祭は、どちらかというと‥「賑やか」よりも「風情」を楽しむお祭りだと思う。
でも‥あますず祭りは違う。
みんなで騒いで‥みんなで楽しんで‥そんなお祭りなんだから。
だから、みんなで一緒に行きたいな、って。
「みんなで‥かぁ。ええな、フリスト。ボクも行くわ。‥ユランはどないや?」
オイラのそんな提案に、ディルは勿論!とばかりに答えてくれたんだ。
ふふ、流石はディルだ‥嬉しいなぁ。
でもユランは‥どうだろう。
銀河祭でもそうだったけど、お店の出店とか‥そういうのがあるかもしれないし‥。
でも、出来れば‥うん、みんなで一緒に楽しみたいもんなぁ。
「ぼくは‥うーん‥実は、その三日間、お店の屋台があるんだ‥‥けど、二日目の13日なら休み番だから大丈夫だよ」
最初は考える様子を見せながら‥話し始めるユラン。
そして、ばつが悪そうな表情で続けた言葉は‥「二日目なら」かぁ‥。
「うんうン、それなら13日!みんなを誘ってあますず祭りに行こうヨ!」
ユランは「二日目しか空いて無くて悪い」様な口ぶりだけど‥別にそれでもいいじゃない。
うん、逆に13日って日程を決めて、みんなで行けば良いじゃないか。
みんなの都合は‥きっと大丈夫!‥わからないけど、大丈夫。
「みんなって‥誰や?‥ん~、寮のみんな、は多すぎるわな‥」
と、オイラに聞き返してきたのはディルだ。
確かに「みんな」じゃあ誰か分からないかなぁ。
えーっと‥。
「ん~ト、このお店によく来るみんな、でどうかナ?
 ピノに、ヤダンに‥ヒーラに、テルに‥ヨックとラスキ‥とかかナ?」
中々絞りづらいところもあるけど‥でも、このお店によく一緒に来る、って事は‥
つまり、仲が良い、って事だし。
オイラの提案に、ディルも乗り気で‥頷きながら話し始めたんだ。
「ん、そやな‥予定あるもんはしゃあないとしても、予定無いんやったら行こ、言うて声掛けよ。
 ボクは同室のヒーラに声掛けるわ。それから‥」
「ピノとヤダンはいつも夕食の後で話するから大丈夫‥ヨックとラスキも、夕食の時間によく会うよネ。
 会わないなら、明日の職場‥鼻の院でラスキに言うヨ。テルは同室だから大丈夫だシ‥」
「なんだか‥任せっきりになって悪いなぁ‥」
オイラ達が話をしていくと、声を掛ける人達や、割り振りがどんどん決まっていって。
着々と進んでいく計画に‥ふふ、なんだか楽しくなってきたぞっと。
よく見ると、ディルも‥オイラとおんなじ気持ちみたいだ。
さっきのユランの様に、両手を握りしめて‥ガッツポーズを取ってるんだから。
「よっしゃ。そうと決まったら‥」
「決まったら‥?」
ガッツポーズを取ったまま、そんな声を上げるディル。
そのディルの言葉に対して、聞き返すユランに‥
すかさずオイラが答える!
「景気づけにもう一個、ケーキ食べようヨ!」
「こらこら、フリスト、ボクの台詞を盗るな、って‥まぁ、ええんやけどな」
ふふ、ちょっとふざけて言ってみたんだけど‥ディルも楽しそうに話を続けてるし。
うん、折角だし‥言葉の通り、もう一個食べようかな。
あ、念のために言っておくけど‥「景気」と「ケーキ」を掛けてる訳じゃないからね‥ホントに。


「さてと、寮に帰ってきたが‥どっから声掛けてこかな」
ボクは寮の、自分の部屋に帰ってきて‥机の前に座ると、そんな事を考え始めたんだ。
とりあえず、同室のヒーラには‥まぁいつでも話しかけられるだろう。
きっともうすぐ帰ってくるだろうし、その時にでも話せば良い。
あとは‥うーん、ヨックとラスキか。
ヨックはともかくとしても、ラスキが‥問題だな。
ボクが声を掛けても「揉んで欲しいのか?」とかなんとか言ってちんちんを揉んでくる‥。
‥いや、言わなくても揉んでくるか‥ふぅ。
まぁ、抑えの効くヨックが一緒に居るときに話をするべきだろうな。
後は‥テルはそうだ、明日の仕事の時に‥
いや、テルは天文観測部に移っているし、もしかしたら明日も夜間活動の時間かもしれないな。
‥ん?ああ、そうなんだ。
ボクやピノ、そしてテルの勤めるのは‥目の院、同じ職場だ。
でも、同じ目の院って言っても、実は仕事の時間に違いがあって‥それというのも二つの研究部を抱えているからなんだ。
ボクやピノの所属している古書研究・魔法図書館管轄については、一般的な時間帯の仕事‥
つまり朝から夕方に掛けての仕事なんだけど‥
テルやレイトさんの所属している天文観測・研究部は、夜間帯の仕事が多いみたいなんだ。
まぁ、天文観測といえばやはり夜‥だからな。
ともかく、仕事の時間の違いがあって、更には活動場所だって違う事から、
場合によっては全然会わない週だってある‥。
仕事の時間が違うと、生活の時間も違う‥って事から、寮ですらなかなか‥って具合なんだ。
‥まぁ、明日にでも会わない場合は、テルを探して直接‥
‥ん?何か忘れてるような気がするな‥‥あっ!
そうだ、テルはフリストの同室だったな。
だったらテルの事はフリストに任せよう‥うん。
それにしても、全くボクは‥
「ふぅ~ただいま、ディル」
ボクがあれこれと考えている間に、部屋の扉が開いて‥ヒーラが帰ってきたみたいだ。
その表情を見ると、とても楽しそうで‥ふふ、今日もきっと沢山遊んできたんだろう。
「ああ、おかえり、ヒーラ」
ボクの言葉に対して、軽く手を上げたヒーラは‥
楽しそうな表情のまま、タンスの前へと向かって‥普段着へと着替え始めた。
ヒーラは最近、よくマロンさんと一緒にどこかへ出かけているらしい。
今朝だって、よそ行きの服に着替える時に「マロンさんとお出かけなんだ」って言ってたし。
更には時々、ヒーラから楽しそうにマロンさんの話も聞かされるし、二人はとても仲が良いんだろう。
そういえば‥前にヒーラは、マロンさんの事を「面白い人」って言ってたっけ。
なんでもマロンさんは、時折「困難」に立ち向かっていく事があるらしい。
「困難」‥つまり「縁起の悪い事」が起こっても‥敢えてそれを受け入れた上で、事に臨むんだとか。
‥例えば、靴の紐が切れたりとか‥
‥例えば、鏡が割れたりだとか‥
‥例えば、全身黒ずくめのミスラ族が目の前を横切るとか‥
そういった一般的に「不吉」だと言われてる事があっても、予定通りに行動‥いや、敢えてそれ以上の事をするんだとか。
ああ、「それ以上」っていうのは‥例えば普段だったらしない様な、そんな「挑戦」をするらしい。
‥敢えて、くじ引きをしてみるとか‥
‥敢えて、釣りをしてみるとか‥
‥敢えて、ゲームテーブルで勝負を挑んでみたりとか‥
とにかく、そんな「挑戦」を敢えてするらしいんだ。
話を聞いて、最初はマロンさんが「縁起の悪い事」を気にしない人‥かと思ったけど、そうでもないみたいだ。
わざわざ普段はしないような挑戦を、そんな時に限ってするというんだから。
それにしても‥話を聞いて思うのは、地域の違いによる、考え方の差、ってヤツだ。
第一、ボクの生まれた所だと、さっき挙げた事は全部「縁起の悪い事」じゃあ無いんだ。
‥ほら、最後のなんて特にそうだ‥ミスラ族なんて、ボクの生まれた所だと沢山いるから‥
黒ずくめのミスラ族が横切るとか、日常茶飯事なんだし‥って話が逸れたな。
とりあえず、縁起の話と‥マロンさんの事も今は置いておこう。
そうだ、それよりもヒーラに「あますず祭り」の事を聞いてみないと、だ。
「なぁ、ヒーラ。今度‥あますず祭り、いうのんがあるやろ?その事なんやけど‥」
「うんうん、あますず祭り‥楽しみだね。ぼくもね、マロンさんと一緒に行く約束してるんだぁ」
‥っと、どうやらマロンさんと先約があるみたいだ‥。
いや、でも二日目が約束の日‥じゃないかもしれない、ちゃんと確認してみよう。
「そうなんか。‥ちなみに、三日間のうち、いつ行くとか決めてるんか?」
「うん、初日はマロンさんのお仕事があってダメだから、二日目と三日目に行くんだよ」
‥うーん、日程まで被ってしまってるか‥まぁ、しょうがないな。
それだったらマロンさんも一緒に‥って声を掛ける事も、一瞬考えたけど‥
‥ボクの中に「ある考え」が浮かんできて、ボクはヒーラを誘うのを止めた。
その‥ピノの事もあったし、もしかしたら二人は‥って。
ヒーラの方にはそんな様子は見られないけど、マロンさんがどう思ってるか分からない。
もし‥マロンさんがヒーラの事を「想って」いるのなら、ヒーラと二人きりにさせてあげたい、って思うし。
‥いや、ボクが考えすぎてるだけかもしれないけど。
ともかく‥他の面々に声を掛けるとしよう。
「ところで‥ディル、あますず祭りがどうかしたの?」
途中で話を止めたボクに、ヒーラの不思議そうな言葉が降りかかる。
ああ、二人で行くと分かったら、ヘンに声を掛けない方が良いかな‥なんとか誤魔化そう。
「え‥‥あ、いや、なんでも無いんや。うん」
「‥ヘンなディル」
苦笑いをしながらそう答えるボクに、不思議そうな表情をするヒーラ。
‥ボクは嘘をつくのが苦手なのかな‥上手く誤魔化せてはいないようだったけど‥。
服を着替え終えたヒーラは、ボクをそれ以上は追求しようとはしないで‥自分の机へと向かった。
そして‥いつもの様に、本を読みながら鼻歌を歌い始める。
今日も楽しいことが一杯あったんだろう‥その鼻歌は、とても楽しそうに聞こえていたから。


「あ、ピノ!丁度良かっタ。ちょっと良いかナ?」
寮に帰って、とりあえず風呂で汗を流そう‥と思い、風呂場へとやってきたオイラ。
そうしたら‥ふふ、ラッキーな事に、そこでピノを見かけたんだ。
ピノは、浴槽の中でお湯に浸かっていて‥ふふ、機嫌がよさそうだし。
オイラも早速お湯に浸かると、ピノに近づいて‥さっきの話を切り出す事にしたんだ。
「フリスト‥うん、良いよ。何か用かな?」
思った通り、ピノは上機嫌みたいで‥にっこりと微笑んで返事をしてきたんだ。
オイラは早速、とばかりに前置きも無く、話し始める。
「あのサ、今週末に『あますず祭り』があるだロ?その二日目はサ、みんなで一緒に行かなイ?」
「あますず祭りをみんなで‥かぁ。うん、良いね‥僕も行くよ。あ、『みんな』って、誰が行くの‥?」
オイラの言葉に、ピノも乗り気みたいで‥嬉しそうな表情のままで、そう聞き返してきたんだ。
‥って、そうだった‥ディルにも言われたけど、「みんな」っていうのが誰なのか‥ちゃんと言わないといけないな。
「まだ声を掛けてる途中なんだけどサ。とりあえずオイラと‥ユランと、ディルは確定かナ」
「フリストに、ユランに‥‥ディルかぁ‥ふふ」
オイラが参加メンバー‥と言っても、まだ少ないけど‥
とにかく、面々の名前を挙げていくと、ピノも楽しみになってきたのかな‥更に嬉しそうに微笑んでいるんだ。
「後はまだ声を掛けて無いんだけど、ヤダンとか‥」
「ん?俺がどうかしたのか?」
突然、思っても見なかった方から声が聞こえてきて‥オイラはその方へと視線を向ける。
すると‥更に都合の良いことに、ヤダンがやってきたんだ。
ヤダンはどうやら、身体を洗い終えた‥って所なのかな?ふふ、身体中ぴっかぴかだ。
でも、ヤダンは浴槽には入らず‥浴槽の縁に腰を掛けている‥ちょっと暑いのかもしれないな。
っと、それよりも‥丁度良いタイミングなんだし、ヤダンにも声を掛けよう。
「ヤダン、丁度良い所ニ。あのサ、今度の『あますず祭り』、その二日目なんだけど、一緒に行かなイ?」
「あますず祭り‥か。‥‥うん、良いよ。予定も入ってないし‥俺も一緒に行くよ」
少し考える様なそぶりのあと、にっこりと微笑んでそう答えるヤダン。
その言葉を聞いて、思わずオイラはガッツポーズを取ったんだ。
‥ふふ、お昼のユランや、ディルみたいにさ。
段々‥「あますず祭り」の日が楽しみになってきたぞ、っと。
「そういえば‥他に誰が行くんだ?」
っと、そうだった‥ヤダンにも誰が参加するのか、教えないとな。
「確定してるのは、オイラと、ユラン、ディル、ピノ、そしてヤダン‥かな?
 で、これから声を掛ける予定なのが‥ヨックとラスキで‥」
「ああ、その二人ならさっき‥」
「‥呼んでくれたか?ヤダン」
「わ‥わあッ!び、びっくりした‥なんだ、ラスキか」
えーっと‥この状況を説明すると‥
オイラがヨックとラスキ、二人の名前を出した時に。
ヤダンが「丁度二人を見た」と言おうとした‥んだと思うけど、言葉が続かなかったみたいだ。
それというのも、ヤダンのすぐ後ろに‥しかも「ぴたっ」と身体をくっつけられたからで‥それもラスキに。
それにしても‥なんて凄い偶然だろう。
丁度オイラが話をした、ヨックとラスキまでが風呂に来ているなんて。
‥いや、そもそも同じ寮、しかも風呂の時間帯だ‥それほど凄い偶然じゃないかな。
ともかく、ラスキが来た、って事は‥
「そんなに‥おれに揉んで欲しいのか?ヤダン。‥うりうり‥」
「う、うわあっ、や、やめッ‥‥ラスキ、こらッ、揉むなッ!」
‥やっぱりこうなるんだなぁ‥。
ラスキはヤダンの後ろにぴったりと張り付いたまま、両手を伸ばして‥ヤダンのちんちんを揉んでるんだ。
しかも、揉み方がまたいやらしいから‥ヤダンのちんちんがむくむくと‥ん?
あ‥流石にヤダンも恥ずかしくなったのかな、慌てて風呂へと飛び込んで‥とりあえずこれで終わり、かな?
‥ラスキはホント、ちんちん揉むのが好きだからなぁ。
職場では一転して真面目に、仕事に打ち込んでるって言うのに‥どうして普段はあんななんだろう。
いや、職場で真面目な分、普段がああなるのかもしれない‥のかな。
‥かくいうオイラだって、これまでに何度揉まれた事か。
本当に困るんだよなぁ‥みんなの前で大きくなるのは恥ずかしいし‥。
まぁ、揉むのが上手いのか、他人に揉まれてるせいなのか‥気持ち良いのは気持ち良いんだけど‥
‥あ、これはみんなにはナイショだぞ‥もちろんラスキにも。
「はぁ‥‥ラスキ、やめとけよ‥お前‥」
「ん‥いいじゃねえか。最近ヤダンのちんこ、大きくなってきてるしさ‥育て甲斐があるってもんよ」
後から来たヨックに、ため息混じりでたしなめられたラスキだけど‥
ラスキはヨックの言葉を、全然気にしている様な様子じゃないし‥。
とはいえ、ラスキの言う事にも気になる事はあるんだ。
そう、ヤダンのちんちんが大きくなってきてる事‥オイラもさっき、思ったんだよ。
ヤダンのちんちんが最近成長してきてるな‥って。
昔はホント、ヤダンのちんちんは可愛いかったのに‥ここ最近、ムクムクと大きくなってきてる様な気がして‥
「だ、誰が育てたんだ、誰が!」
ラスキの言葉に、ヤダンは恥ずかしそうにそう言ってるけど‥
逆を返せば、ヤダンだって「大きくなってきてる」のを実感してる、って事だし‥いやいや、その話よりも、だ。
「突然だけド、ラスキも、ヨックも‥今度の『あますず祭り』の二日目‥良かったら一緒に行かなイ?」
「うん?あますず祭りの‥二日目?」
「一緒に‥行く?」
オイラは勿論、二人共を誘うために、一緒に声を掛けてみる‥
二人からは「なんだ、突然?」とばかりの声が返ってきたけど‥どうだろう?
都合が悪かったりしないかな‥?
「いやサ、せっかくのお祭りなんだかラ、みんなで楽しまなイ?っていうお誘いなんだけド」
「お、良いな、おれは行くぞ、予定も無いし」
お誘いの説明をするオイラに、まずはラスキがうんうん、と頷きながら答えてくれて。
うーん、ラスキが来てくれるのは、嬉しいような、不安なような‥そんな気持ちが‥。
いや、楽しいお祭りの日なんだから、多少はちんちん揉まれても‥我慢かな?
でも、一方のヨックからはというと‥残念な言葉が返ってきたんだ。
「俺は‥すまない、用事があるから、行けないんだ‥」
申し訳なさそうな顔で、そう言うヨック。
‥まぁ、用事があるんなら仕方無い‥かな。
「なんだよ、ヨックはまたかよ‥ったく、しょうが無ぇなぁ」
そんなヨックに、ラスキはぶつぶつと言っていたけど‥
‥文句を言うラスキの姿が、どことなく‥そう、寂しそうな表情に見えたし。
文句を言われてるヨックだって、ラスキに対して言い返したりはしなくて‥
なんだかんだ言っても、仲が良い二人なのかな‥って思ったんだ。
‥さて。
ヨックとラスキにも話をして、残るは‥えっと‥
ヒーラ、はディルと同室だし、ディルに聞いて貰えば良いかな。
あとは‥テルかぁ。
オイラは思わず、同室者のテルの事を考える。
確か今日も、夕方から「星の観測があるから」って出かけたハズだ。
ん‥ああ、テルは目の院でも、夜間の仕事が時々入るらしくってさ。
出勤時間とかがオイラ達と違う時があって‥食い違うとなかなか会わなかったりするんだ。
今日も夕方から出勤した、となると‥帰ってくるのは夜半頃、だろうし。
うーん、オイラがもう少し早く帰って来られればよかったんだけどなぁ。
ともかく、そうなると明日の朝だけど‥
‥流石に遅くまで仕事に行っていたんだから、翌朝くらいはゆっくり寝かせてやりたいし。
となると明日オイラが仕事から帰ってから‥?いや、明日も夜勤だったとしたら‥うーん‥
‥よし、今日はオイラがテルを待って起きていよう。
な~に、夕食を食べた後、ちょっと横になれば起きていられるさ。
よし、そうと決まれば‥!‥‥う?
次にやるべき事が決まって、オイラの気持ちにもますます熱が入る!
‥と思っていたオイラだったけど‥
どうやら気持ちに熱が入ったんじゃなくて、身体の方が熱くなっていたみたいで‥。
長くお風呂に入りすぎたせいだろう、半分のぼせかけたオイラは‥慌てて浴槽を出たんだった。


かちゃ‥‥ぱたん。
かすかな音‥とても静かな、扉の開閉の音に‥しかしオイラは思わず目を覚ましたんだ。
‥ん‥と‥今は何時かな‥‥真っ暗で‥えっと‥‥あッ!?
ね、寝過ごした!?
オイラは慌ててベッドを起き上がって‥扉の方を見る。
「あ‥ごめんなさい、フリスト。‥起こしてしまいましたか?」
突然起き上がったオイラを、テルは「自分が起こしてしまった」と勘違いしたんだろう。
テルは慌てた様子で、オイラに謝ってきたんだ。
‥いや、参ったな‥そういうつもりじゃなかったんだけど。
「あ‥いヤ、違うんダ。その、オイラが‥えっと‥‥どこから話せば良いかナ」
目を覚ましたところだからか‥頭の回らないオイラ。
とりあえず、灯りを付けて‥話のしやすい環境にしよう。

‥夕食の後、早々に部屋に戻って‥ベッドに入って横になっていたオイラ。
少しだけ仮眠を取って、テルを待つつもりが‥そのままぐっすりと眠ってしまって。
結局はテルの帰ってきた、かすかな物音で目が覚めてしまったんだ。
‥本当なら、テルの帰ってきたときの音で、オイラが起きるなんて事はまず無い。
その‥テルが気を遣ってくれて、なるべく音を立てない様にしているのと‥
‥オイラがいつも熟睡してるから。
とりあえず‥テルには寝間着に着替えて貰いながら、オイラは話を始めたんだ。
テルに用があって、こうして話をするために‥早めの仮眠を取っていたこと。
そうしたら、つい寝過ごしてしまって‥たまたまテルが帰ってきたときに目が覚めたこと。
そして‥本題の、あますず祭りの二日目に、一緒に行かないか‥という誘いのこと。
全てを話し終えて、テルから返ってきた答えは‥
「なるほど、そういう事でしたか‥。‥残念ですが、二日目‥13日ですよね?その日は夜勤なんですよ‥」
とても残念そうに、そう答えたテル‥。
それは‥うーん、どうしようもない、なぁ‥。
「そうカ‥ごめン、急にヘンな事言ってサ」
「いえいえ、お誘い頂けたのは嬉しい事ですし。また今度、誘って下さいね」
オイラの「ごめん」に対しても、テルはにっこり微笑んでそう言ってくれる‥
‥本当に優しい奴なんだ。
「あ、そうだ!ふふ、折角ですから‥もし良ければ目の院まで遊びに来て下さい。
 星の見方とか、ご案内しますよ」
「お、そうカ!だったら‥うん、遊びに行くヨ」
なるほど、丁度あますず祭りの為に、夜出歩くんだ‥目の院に行って、星を見させて貰うのも‥良いな。
オイラは別に、星に凄く興味がある‥って訳じゃ無い。
でも、全然興味が無い、って訳でも無いし‥正直楽しみにしてるんだ。
みんなを誘って‥いや、みんなが行きたがらなくても、オイラだけでも行けばいいや。
あ、目の院の関係者じゃないと‥って言われてしまうかな?
いや、その時は‥うん、ピノや‥ディルに頼んで、一緒に行って貰えば良い‥よな。
二人なら目の院の関係者だし、なんとかなると思う‥し。
そうだ‥ふふ、遊びに行くときは、何か屋台で買って差し入れもしよう。
うん、テルもきっと喜んでくれるはずだ。
そんな事を考えていたから‥かな?オイラの頭はどんどん冴えてきて。
テルが寝間着に着替え終えて、それぞれベッドに入った後も‥寝付けなくなってしまったんだ。

  フリスト、もしかして‥眠れませんか?
 あ‥いヤ‥‥ん、まぁ、そんなトコだナ
  ふふ、私も今日は昼寝が過ぎてしまったみたいで、寝付けなくて‥少しお話ししましょうか
 ああ、勿論オイラは大歓迎だヨ。‥えーっと‥テルはサ、こんな遅くまで仕事‥辛く無いのカ?
  ん‥辛い‥と思った事は無いですよ。僕の好きな仕事ですし、それに‥
 それニ?
  その‥僕、職場に‥‥好きな人が居ますから‥
 ん‥そうカ!‥ふふ、上手くいくと良いナ
  ‥上手くなんて、いきませんよ‥きっと‥
 どうしてそんな事を言うんダ?‥テル、凄く弱気じゃないカ
  だって‥だって。‥と、とにかく、僕の想いなんて‥届かないに決まってます‥
  それでも‥届かなくても、ただ、そばに居るだけで僕は‥

 ‥あのサ。どうしてかは分からないけド‥告白もしないうちかラ、上手くいかないなんて思っちゃダメだヨ。
 それに‥そばに居るだけで良い、なんて思うのもだめダ。‥そんな事‥もしその人に、好きな人が現れたラ‥

  そ、それは‥‥
 絶対‥絶対に後悔‥する‥かラ‥‥
  そう‥ですね‥うん‥
 だ、だかラ!‥テルは良い子なんだかラ‥きっと上手く行くヨ!オイラが保証すル!
  ふふ‥ありがとう、フリスト。‥‥ありがとう‥

フリストの‥どうしてかは分からないけど、気弱な想い。
そんなフリストに、オイラはつい‥そう言ってみたものの‥。
どうしてだろう‥オイラが‥オイラ自身が、本当にそう‥言って良いのか、って思ってしまって。
(‥もしその人に、好きな人が現れたラ‥)
自分の言葉を‥胸の中で繰り返してみて‥そして‥
‥オイラ自身が‥オイラ自身の胸が‥苦しくなってくる。
もし‥あの人に‥好きな人が‥‥。
(絶対に後悔‥する‥かラ‥)
オイラは‥‥オイラは‥‥。
‥考えても、答えの出無さそうな‥そんな問題を胸に抱えながら。
いつしか会話の無くなっていたオイラ達は‥どちらともなく、眠りの中に落ちていたんだ。


 
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