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その96『カザムの夜 その2』

 ←21話『あますず祭り・第二夜』 →22話『ヒーラとマロンの‥』(*)
あらすじ

冒険者であるスレイは、自分の腕を磨くため、初めてカザムへとやってきた。
しかしそこで、同い年くらいのタルタル族の男性・メリクと出会う。
「身体を売る者達」の中に居たメリクは、スレイと「一晩の契約」を結び‥スレイの宿へ。
しかし、そこでスレイはメリクを抱こうとはしなかった。
翌日もメリクと契約するスレイだったが‥昨日と同じ様に抱かず、
風呂とマッサージ、そして添い寝‥といった程度の事しかさせなかったのだ。
そして三日目‥メリクはスレイに尋ねる。‥どうして自分を抱かないのか、と。
しばらくの問答の後、メリクはスレイへの「想い」を明かし‥スレイはメリクの想いに応えることを約束する‥
ただし、そこには「明日に」という言葉が添えられていたのだが‥

 

「‥え?それってどういう‥‥い、いや‥わかりました」
メリクがスレイに「明日、しよう」と言われた日の翌日。
言われたとおりにメリクは、スレイが部屋を取っている宿屋へとやってきたのだが‥
その受付にて、驚くべき事を聞かされたのだ。
スレイは既に、宿を引き払った‥との事だった。
それも30分程前に‥と。
スレイと約束していた時間よりも、早めに宿にやってきたメリク。
約束の時間まであと30分はあるのを考えると、予定よりも1時間前に‥スレイは宿を出たことになる。
なぜこんな事を‥と、メリクは考える。
メリクの脳内で、すぐに導き出された答えは‥そう、自分を避けるため。
自分を避けるために、宿を引き払い‥ジュノへと戻ったのではないか、と。
だとすると、次の問題は時間‥そう、ジュノへと向かう飛空艇の出航時間だ。
メリクは時計を見てみる‥丁度ジュノ行きの飛空艇が今し方、出たばかり‥そんな時間だった。
だが、それでも。
もしかしたら‥という可能性がある。
何かがあって、飛空艇の到着が遅れる‥あるいは、飛空艇の出航が遅れる‥
そういった「決して高くはない」可能性が。
だが‥たとえわずかであっても可能性を信じて、メリクは走る。
一路、飛空艇乗り場へと。

「‥そう‥‥か」
メリクに対しての申し訳ない気持ちを、スレイは胸に抱きながら‥
ジュノへと向かう飛空艇の乗り場へとやってきていた。
今朝の内に飛空艇の出航時間も調べており、その時間に合わせてやってきていたのだ。
‥最も、ジュノに向かう飛空艇の便数は決して多くは無く‥また、様々な準備などに手間取った事もあって
メリクとの約束の時間、その30分前、というギリギリの便を利用することになった。
しかし‥
‥その出航時間を過ぎた今も、スレイはこうしてカザムの飛空艇乗り場に居る。
それというのも‥そう、さきほど飛空艇乗り場の職員より通達のあったことだが、
飛空艇の機械トラブルの為、到着が遅れているとの事だった。
その情報を得たスレイが漏らした言葉、それが先程のものだった。
自分の予定通りにならなかった事への残念感と‥
もしかすれば再びメリクと会うのではないか、という淡い希望‥
そして‥そうなったらなったで、メリクに何と言えばいいのか、という戸惑い‥
更には約束を破ってしまった事への、後悔が胸を襲う。
しかし‥しかし、まだ「約束の時間」には遠い。
そう、メリクが早めに宿を訪れ、しかも‥港へと直行してくる事でもなければ、間に合う筈が無いのだ。
それに‥飛空艇だってもうすぐ来ることだろう。
先程の職員も、「少しの遅れ」と告げていたはずだから‥と、スレイは自分に言い聞かせる。
‥スレイがそうこう考えている間にも、空の彼方から飛空艇の影が見えてきた。
あともう少しで飛空艇は乗り場に到着し、そして‥
「スレイさん!‥‥スレイさん!」
飛空艇の方を見るスレイに‥しかし、背後からかすかに聞こえてくる声がある。
遠くから聞こえるためか、それはとても小さな声で‥ともすれば聞き逃してもおかしくはない位の声。
‥しかし、その声は徐々に大きくなる‥徐々に近づいてくるのだ。
そう‥メリクが近くまでやってきている。
しかし、飛空艇も同様に迫っており‥メリクが飛空艇乗り場前にたどり着く直前、飛空艇は着水した。
飛空艇の出す音‥そして着水音が大きく、ともすればメリクの声などかき消されてしまいそうになる‥
‥いや、それは無かった。
メリクの事を想っているスレイに、その声を‥聞き逃すはずがなかったのだ。
だが‥だが。
飛空艇はもう到着している‥もうすぐ乗船可能になる事だろう。
そうなればスレイも、乗り込まねばならない。
そう‥自分はメリクを置いていくつもりだったのだ。
だから‥。
‥やがて、飛空艇の動きが止まり‥乗船用の橋が架けられる。
スレイはそのまま、乗船用の橋を渡ろうとして‥
「スレイさん!どうしてなんだ‥どうしてオイラから逃げるんだ!」
‥聞こえてきたその声に、スレイの足が止まる。
メリクの‥心の内をぶつけるような、そんな悲痛な声‥
そんな声を聞かされて‥スレイの心が痛まない筈が無かった。
胸の痛みに‥そして苦しみに‥そして生まれてきた「戸惑い」に‥
スレイの足は動けない。
前へも‥後ろへも進めないでいた。
そんなスレイに‥メリクの言葉が更に投げかけられる。
飛空艇乗り場の外から‥柵をよじ登り、その上で必死になって叫んでいた。
「そんなに‥そんなにオイラの事が嫌いなのか?嘘をついてまで、こんな‥‥嫌いなのかよ!?」
言葉の最後は、力強さも欠け‥涙混じりになって。
それでもスレイに向け、叫んでいたのだ。
そんなメリクの想いに‥言葉に‥スレイは思わず振り向き、そして答える。
‥左右にゆっくりと首を振りながら‥決して大きくは無い声で。
「‥違う‥‥そうじゃ‥ない‥」
幸いにも飛空艇乗り場は空いており‥数少ない乗船客も、とっくに飛空艇へと乗りこんでいたから‥
スレイの決して大きくは無い声でも、まっすぐメリクへと届いていた。
「だったら!だったら‥なんで‥‥なんで‥‥」
そして間髪を入れずに返される、メリクの言葉に‥涙混じりの言葉に。
スレイは駆け出さずには居られなかった。
‥メリクの元へ。
メリクと同じ様に柵を登り、その上で‥不安定ながらもメリクを抱きしめて。
そして‥泣き続けるメリクの耳元で囁いたのだ。
「ごめんよ‥メリク‥」
その言葉すら‥メリクは上手く受け止められなかったのか‥いや。
‥もしかしたら、違う気持ちを持っていたのかもしれない‥
スレイが離れてしまうのを止められた、という安堵の気持ちのせいで‥
メリクは涙が止まらないでいたのかもしれない。


結局、スレイはその後‥飛空艇乗り場から再度カザムに入り、そして宿屋へと戻った。
夜も遅い時間だったのだが‥飛空艇の便の関係もあるのだろう、部屋を取ることが出来て。
部屋に入るなり、スレイは荷物も放り出し、座り込む。
メリクもまた、同じ様にスレイの横に座ると‥スレイの言葉を待った。
静かな部屋の中‥ぽつんと座る二人。
「私は‥怖かったんだ」
静かな部屋に、響き渡るように‥スレイは言葉を漏らす。
その言葉に‥驚きのあまり目を見開くメリク。
メリクとて、スレイと今まで付き合ってきた中で‥とは言っても、たったの三日間‥
しかも会った時間は短く‥更に言葉をかわした時間となるともっと短いのだが‥
それでも少しは、スレイの事が分かっていたつもりだった。
「怖い‥?‥‥もしかして、オイラが?」
そんなスレイの言葉に‥思わず自分の事が怖かったのか、と‥
短絡的な‥いや、ある意味自然な考え方をするメリク。
そんなメリクに対し、スレイは‥軽く首を振り、優しく話し始める。
‥いままで、どちらかと言えば「無感情」「無愛想」という感じで話していたスレイとは、少し違う‥
しかし、恐らくはそれがスレイの本当の姿だと思われる‥そんな風に優しく。
「‥いや、そうじゃないよ‥‥どこから話せば良いか‥そうだな」
その言葉を皮切りにして、スレイはゆっくりと瞼を閉じると‥
‥過去を思い返すようにして、話し始める。

昔‥私には好きな‥いや、好き合った人が居たんだ。
私と同じタルタル族‥私と同じ冒険者‥私と同じ男性の。
冒険をし‥愛し合い‥そして‥‥‥私は彼に先立たれてしまった‥。
彼を‥白魔道士だった彼を死なせてしまったのは、私の腕が至らないせいだ‥。
私は‥私は‥‥‥。
‥彼と会ったのは、冒険を始めてから1年ほどした後で‥
‥彼を失ったのは、今から1年程前‥
‥彼と過ごせた時間は、たった‥1年間だけだった‥。
たった1年‥でも、それはとても大きくて‥。
彼を失った時は‥胸の中にぽっかりと穴が開いてしまったようだった。
どうして私だけ、助かってしまったのだろう、どうして私でなく、彼が‥死んでしまったのだろう‥
そう自分を責めて‥そして‥あの日私は決めたんだ。
もう‥誰も好きにはならない‥と。
‥決めた‥‥‥決めたのに‥‥でも‥。
あの日‥初めてカザムに来た、あの日‥。
メリクとすれ違った時に‥思わず目を奪われ‥
そして再び会ったときに‥心を奪われてしまった‥。
決して、君が‥あいつに似ている訳じゃ無い。
決して、あいつみたいだから‥とかじゃない。
そうじゃなくて‥私は君に惹かれたんだ。
そして‥咄嗟に君を買った‥‥だが‥‥。
宿へと戻る道すがら、思ってしまったんだ‥。
また‥また、失うのではないかと。
‥今思えば、滑稽な話だ。
その時は一晩の契約で、君を「買った」というのに‥
君の心さえも‥手に入れたような気になって‥失うことへの不安を持ったなんて。
でも現に、君はこうして‥‥いや。
ともかく、そんな思いを胸にして‥私は考えた。
考えに考えて、そして‥‥一つだけ‥考えついたんだ。
‥ただ風呂に入り‥マッサージをしてもらい‥そして寝る‥。
それだけで、決して‥身体を重ねる事はしない‥それだけなら‥と。
それくらいの、一線を越えない間柄で居れば良い‥そうすれば‥と思っていたんだ。
でも‥君は違った。
どうして私の事を、そこまで想ってくれる様になったのかは分からない。
‥見たとおり、私は不器用で‥浅はかで‥バカな男だ。
そんな私を想ってくれた理由は、分からないけど‥でも‥
そんな君の想いを、私は‥受け止められない‥‥受け止めるだけの、強い心が‥無いから‥。
だから‥逃げたんだ‥‥怖かったんだ‥
‥君と‥本当の愛に落ちることが‥。

少しずつ‥ゆっくりと‥スレイは話していった。
自分の心を‥思いを‥想いを‥メリクに伝える為に。
そして、スレイはそこまで話し終えると‥
瞳にうっすらと涙を浮かべ、俯いてしまった。
しかし‥その涙が、地に落ちる‥その前に。
スレイの身体に、そっとメリクの手が伸びる。
優しい心で包み込むように‥メリクの両手が‥スレイの身体を覆い‥
‥メリクはスレイを抱きしめる。
スレイの身体を抱きしめる。
‥スレイの心を‥抱きしめる。
スレイの頭を、メリクは胸元へと寄せると‥
更にその頭に、自分の顔を付けるようにしながら‥
メリクは話し始める。

その‥オイラには、よく分からないけどさ。
別にスレイさんが全部しょいこまなくてもいいだろ?
昔好きだった人の事‥
その人を失ってしまった事‥
そして、今のオイラとの事‥
全部‥全部、自分一人でしょいこまなくてもいいじゃないか。
オイラだってさ、14歳‥ううん、もうすぐ15歳だ‥もうとっくに大人なんだから。
だから‥スレイさんの苦しみだって、少し分けてくれればいい。
スレイさんの辛さも‥悲しさも‥オイラに分けてくれればいい。
スレイさんは口べたみたいだから、上手く言えないかもしれない‥でも‥
‥それならせめて、オイラにそばに‥居させてくれよ。
そばにいるだけでも‥それだけでも、スレイさんの苦しみは‥少し位なら和らげられると思うから。
‥‥それに。
オイラは‥死なないよ。消えないよ。居なくなったりなんかしないよ。
絶対‥絶対に‥約束する。
スレイさんを残して、いなくなったりなんかしないから。
絶対に‥スレイさんの元から離れないからさ‥だから‥
‥そばに‥いさせてくれよ‥

メリクが自分の想いを‥その全てをスレイに伝えた後。
スレイの身体から、メリクはそっと自分の身体を離すと‥
そんなメリクの動きに合わせる様に、スレイは顔を上げる。
見上げた視界に映る、メリクの顔は‥とても優しく微笑んでいて。
そして‥恐らく二人にはこの先行う事が分かったのだろう。
そっと目を閉じたスレイの顔に‥メリクの顔がゆっくりと近づいていき‥
‥唇を接点として重なった。

まるで、これからの事を想像させるかのような、そんな‥
‥甘く‥熱い‥想いの込められた口づけを‥二人は交わしたのだ。


 
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