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ショート

その2『これから』

 ←拍手のお返事など(汗)(H25.1.1) →その3『これから その2』
どこかおぼろげで‥はっきりとしない光景。
それはまるで、色を忘れているかのような‥昔の風景。
ウィンダスの‥これは石の区だろうか。
どこか見覚えのある空き家の‥その屋上に、タルタル族の男の子が二人居る。
‥片方の男の子は地に寝そべり‥いや、ただ寝転がっているのではない。
顔に‥そして身体にも沢山、キズを負っていて‥倒れていると言っても良いだろう。
そしてもう片方の男の子は、その子の横に座り込んでいる。
彼も又、座り込んでいるだけではない‥わんわんと声を上げて泣いていた。
(‥ごめんね、エル‥ぼく‥‥ごめんね‥)
泣きながら、倒れている子対して謝り続ける男の子‥そして‥
(‥‥ううん、良いんだ。僕が絶対‥守るん‥だから‥‥‥だから‥泣かないで‥)
倒れている子は、泣き続けている子に対し、そう言って‥優しい微笑みを浮かべていた。

 

ゆっくりと瞼を開けると‥ぼやけた景色が広がっていく。
さっきまで見ていた、色あせた風景じゃなくて‥現実味を帯びた色。
ぼやけた景色を正そうと、私は瞼を手で擦り‥わき上がる眠気を抑える様に、あくびをする。
時が経つに従い、徐々に視界はクリアになっていき‥ジュノのレンタルハウス、その内装がはっきりと見えてくる。
視界と共に、鮮明になってくる頭の中。
‥しかしまた、どうしてあんな夢を見たんだ。
もう、かれこれ7,8年も前の事だと言うのに。
あまり思い出したくない思い出‥それを夢のせいで無理矢理思い出させられて。
私は無意識の内にため息をついてしまう。
‥ああ、そうだ‥自己紹介をしていなかった。
私はタリス・ラカリス、タルタル族の男で、14歳‥冒険者の‥赤魔道士をやっている。
昨夜は少し、嬉しい事があったから‥確かここ、レンタルハウスのリビングで、友人と騒いでいたんだった。
‥お酒が入ったせいか、途中からの記憶が無いが‥
現在の状況から察するに、どうやら寝室に行く前に、ソファーで眠ってしまったらしい。
ソファーで寝たにしては、熟睡したのだろう‥身体の疲れが取れている自分に驚く。
だが、それでもまだ右肩が重い様な気が‥いや、「気がする」じゃないな、実際に重いんだ。
それというのも‥そう、私の右肩にもたれかかる様にして寝ている‥そんな人物が居たからだ。
それが誰なのかは‥顔を見なくとも分かる。
‥エリシヴル・キリシヴル、私と同じ、タルタル族の男で、14歳‥同じく冒険者の、モンクをしている。
昨夜、私を祝ってくれた友人であり、更には‥先程見ていた、夢の中に居た、あの子供でもあった。
こうしてエルが‥ああ、エルというのは彼のあだ名だ。
エルが隣で寝ていたから‥私はあんな夢を見たのかもしれない‥‥いや、それは少し非現実的な考えだな。
‥エルと私は、子供の頃からの付き合いで‥所謂幼なじみ、というものだ。
子供の頃は、私は身体が弱く‥しかも、口が達者だったせいか、よくいじめられていた。
そんな時、私をかばってくれたのがエルだった。
‥あの夢もそうだ‥詳しい経緯までは、はっきりと覚えていないが‥
私が石の区で、空き家に連れ込まれて‥いじめられていた時の事。
どこから話を聞きつけたのか、エルがやってきて‥私を助けてくれたんだった。
何人ものいじめっこを相手に、沢山の怪我をして‥それでもエルは‥。
‥もっとも、忘れん坊のエルの事だ‥こんな昔の話など、きっと忘れている事だろう。
さて‥昔の事を振り返るのはやめだ。
朝食の準備をしないと、な。
私はエルを起こさないよう、慎重に慎重を重ねてエルの側から離れると‥
キッチンの方へと向かった。

「いただきまーす!」
目の前のエルは、嬉しそうな声を上げると‥早速パンに手を伸ばした。
朝食のメニューは、というと‥軽くあぶった白パンと、ウィンダス風サラダ‥とまでは行かない、簡素なサラダと‥
昨夜の残りのガルカンソーセージ、そしてアルザビコーヒー。
‥勿論、普段からこんな豪華な朝食を食べている訳じゃない。
今日はエルというお客さんが居るから‥だ。
自分一人なら、簡素なもので良いが‥誰であれ、客が居るなら相応のものを用意しないと、な。
「慌てて食べると、喉に詰まるぞ」
エルは、少し慌てん坊なところがあるから‥そう思って私は軽く注意する。
‥実際、パンにソーセージに‥と、次々と手を伸ばして食べている様だし。
「もう、タリスは心配性だなぁ‥ふふ。‥んぐっ!?んーっ、んーっ!」
そんな私の注意も聞かずに‥エルは「やっぱり」喉を詰まらせている。
‥全く、世話が焼ける。
「ほら、言わんこっちゃない‥コーヒー飲んで!」
私に言われるままに、エルは慌ててコーヒーのカップを手にして‥喉に詰まった食べ物を流し込んだようだ。
ああ、ちなみにこんな事もあろうかと、エルのコーヒーは充分に冷ましてある‥飲みやすいように、だ。
まぁ‥コーヒーは冷めた方が好きだ、というエルの好みもあったが‥
「‥‥ふぅ~、生き返ったぁ」
喉に詰まった物を流し込み、ようやく一息付いた‥という所だろうか。
さっきまでの苦悶の表情が、いつもの様な笑顔へと変わっていて‥全く。
「だから、落ち着いて食べろ、って言ったんだ」
「えへへ、ホントだね‥ごめんごめん」
エルは‥まぁ、いつもの事だが「ごめん」と言う割に、そう思っていなさそうな‥そんな感がある。
第一、もしもの事があったら、私に迷惑が掛かるんじゃなくて、自分が‥
‥いや、もう良いだろう。
「そういえば、ね、今日はこれからどうする?」
エルは、先程までと違って‥ゆっくりと食べ物を口に運びながら。
私にそんな事を聞いてくる。
ん‥?ああ、そうか。簡単に説明しておいた方が良いだろうな‥私とエルとの関係を。
‥関係とは言っても、ヘンな関係じゃないが。
私とエルが、幼なじみだと言う事はさっきも説明したが‥冒険者になったのも二人一緒だ。
冒険者になってから今までずっと‥二人で冒険を続けてきた。
勿論、他の冒険者と組む事もあったが‥それはあくまでスポット的なものばかりだ。
二人だけで、リンクシェルグループにも参加せず‥他に固定で付き合う人も居ない。
リンクシェルグループに入るつもりが無い訳では、決して無かったが‥機会に恵まれなかったり、あるいは‥
‥入ったは良いが、散々な目に遭ってしまったりと‥まぁ、そんな所だ。
そんなこんなで二人、腕を磨きながら‥金策をしながら‥日々を過ごしている、という所だろうか。
‥本当は、欲を言えば‥もっと装備が‥いや、その話はまた後にしよう。
とりあえずは‥今日何をしようか、という話だったな。
「そうだな、今日は‥これから‥」
私はそう言いながら、頭を回転させていく。
今のところ、大きな目標も無く‥何をしても‥何に挑戦しても、良いのだが。
そもそも、私達二人で出来ることなんて‥限られている。
グラウンド・オブ・ヴァラーを利用しての鍛錬、デュナミス各地で金策、あるいはアビセア‥
すぐに思いつくのは、そんな所だが‥それよりも。
「そう言うエルは何か‥したい事とかは無いのか?」
とりあえず、私はあまり期待をせずに‥エルに聞き返してみる。
‥どうして期待していないのか、だって?‥それはまぁ、すぐに分かるだろう。
「うーん、僕は‥別に何でも良いよ。タリスのしたいこと、しよう!」
いつもの「にこにこ」とした笑顔を浮かべながら、エルはそう答える。
そうだ‥エルに聞くと十中八九、この言葉が返ってくるんだ。
これがエルの良い所なのか‥悪い所なのか。
普段から、自分が「こうしたい!」と強く自己主張をしてくることがない。
いつも「タリスが」の言葉で返されてしまう。
‥他でもそうだ、何か選択を迫られる時は、いつも「タリスが決めてよ」と言ってくるんだ。
私の事を信頼しているからなのか、あるいは‥‥。
いや、考えても仕方無い、だろう。
‥昔から‥そう、冒険者を始めた頃から、ずっとこうなのだから。
ともかく‥そうなれば、今日何をするか‥だが。
‥それを考え始めた私に、ふと‥一つの考えが頭に浮かんだ。
「そうだな‥まず、昨日の戦闘の‥副産物を競売所に出品しに行こうか」
「あ、そうだったね!うんうん」
私の提案に、いかにも「賛成」とばかりに嬉しそうな表情を見せるエル。
気がついた事への「嬉しさ」なのか、お金が入るであろう期待への「嬉しさ」なのか‥いや。
それよりも‥問題はその後だな。
競売に行った後、どうするかだが‥‥やはり、ここは一つ‥
「あとは‥そうだな。昨日は薬代やら何やらで出費がかさんだから‥
 競売に行った後は、金策に行こうか」
昨日は‥良い物が手に入った代わりに、相応の出費があった。
先程の「副産物」の相場はまだ掴めていないが、さほど高価な物ではない‥そんな気がする。
ならば、今後の路銀の事も考えて、金策に行く必要があるだろう。
「うんうん、そうだね‥金策大事だよね」
‥エルは分かって言っているのだろうか‥
いつものにこにこ顔をしながら、こくこくと頷いていて。
まぁ良い、どちらにしても‥
「ああッ!そ、そうだった!」
「んなッ!?」
そのにこにこしていたエルが、まるで何かに気づいた様に‥突然そんな大声を上げる。
私も思わず‥声を上げてびっくりしてしまった‥い、一体何事だ?
しかし、エルはすぐにいつもの笑顔に戻ると‥恥ずかしそうに頬を赤くしてみせる。
「あ‥えへへ、びっくりさせてごめんね。その‥今日ね、朝から会う約束をしている人が居るんだ」
エルは軽く謝りながらも‥そんな事を言ってみせた。
会う約束をしている人が居る‥少なくとも私は聞いていないが‥いや、私が関わらない、エルだけの知り合いだろう。
‥まぁ、それはともかくとしても‥朝から?‥朝からって‥何時からなんだ?
「ああ、それは良いが‥何時からなんだ?」
「‥え?」
私の質問に、エルはいまひとつ要領を得ない‥そんな表情をしてみせる。
‥うーん、私の言い方が悪かったか‥?
もう少し、ちゃんと言わないとダメか。
「その『会う約束』というのは、朝の何時からなんだ?」
続けた言葉に、「あっ」と軽く驚くような声を上げるエル。
そして‥「えーっと‥」と呟くと、何かを思い出すように‥ゆっくりと話し始めた。
「えっとね、10時‥かなぁ。吟遊詩人の酒場で‥」
その時間を聞いて‥思わず私の血の気が引いていくのを感じる‥。
エルの起きたのが確か9時半少し前くらいだ‥となると、もしかしたら既に10時になっているかもしれない‥
そう思って慌てて窓から時計塔を見る‥‥よし、まだ大丈夫、9時50分だ‥
‥‥って、大丈夫じゃない!
「‥10時!?あと10分しか無いじゃないか!‥急いで出かける準備をしないと!」
私はそう言うと、慌ててエルをけしかける。
‥見れば、髪だってぼさぼさ‥いや、それは私か。
私は髪型に無頓着だから‥茶色の髪をぼさぼさにしていて‥ってそれよりも。
エルも、いつも首の後ろで纏めている紺色の髪が、今はばらけてしまっている‥
朝起きて、顔を洗いに行った時に‥髪をといていないのだろう。
全く‥ちゃんと櫛を入れて、といて‥纏めないと。
「大丈夫だよ、まだ10分あるし‥」
‥いやいや、10分しか無いんだ、10分しか。
「待ち合わせ時間の少し前には行っておかないと。‥ほら、髪をといてあげるから‥」
私はそう言うと、慌てて近くの台に置いてあった櫛を手に取り、エルの背後へと回る。
エルは最初こそ「別に良いよ」と渋っていたが、私の言葉に折れたのだろう、大人しく待つ様になった。
待ち合わせの時間まで、そんなに時間があるわけでもない‥私は急ぎ、しかしなるべく丁寧に髪をといていく。
寝癖を直し、癖毛をあやし‥エルは髪が綺麗なんだから、ちゃんと手入れをすればいいのに‥そんな事を考えながら。
「ふふ、タリスに髪をといて貰うの、気持ち良いなぁ」
さっきまでは嫌がってたエルも、髪をといて貰うのが気持ち良いのだろう、そんな事を言って。
‥全く、現金なヤツだ。
ある程度、髪が纏まった所で‥私はエルから受け取った髪留めを手に持って。
そして‥エルの髪型を、いつもの様に揃え‥縛り上げる‥‥これでよし、と。
「さ、髪は準備完了だ‥その服のままで行くのか?」
エルの着ていた服は、昨夜騒いで‥そのまま寝るのに着ていた服だ。
人と会うなら、何か服を貸そうか‥と言おうとした矢先に。
「うん、行ってくるね!」
エルはそう言うと、慌ててレンタルハウスを出て行ってしまった。
さっきまでは「まだ大丈夫」と言っていたのに、今になって慌てるなんて。
‥まぁ、時間も時間だし、危機感が出てきたのかもしれない。
さて、エルの事は置いておくとして‥私も色々としなければいけない事がある。
朝食の食器と、昨夜の騒ぎの後片付け‥
それが済んだら、身なりを整えて競売へと向かうことにしよう。
エルの話はきっと時間が掛かる事だろう‥いや、なんとなくだが。
朝から会おうという程だ‥もしかしたら何か重大な事かもしれないし、な。
ともあれ‥エルの居ない間に、競売に行って‥出品を済ませてしまおう。


部屋の片付けを済ませた私は、競売所へと向かった。
私が向かう先は、下層にある競売所だ。
ジュノ港、下層、上層、そしてル・ルデの庭‥この中で居住区出口から近いのは、下層だ。
勿論、それだけで選んだのではなくて‥エルの向かった先が吟遊詩人の酒場だからだ。
吟遊詩人の酒場は下層にあり、競売所とは目と鼻の先の位置にある。
エルが話を終えて戻る際、合流できるかもしれない‥そんな考えもあっての事だ。
‥もっとも、競売所の人混みを考えると、それは浅はかな考えかもしれないが。

「これでよし‥と」
競売所に着いた私は、昨日の副産物の相場を調べ、ほどほどの値段で出品を済ませる。
思っていたよりは高値で売れそうで‥これで少しは懐も暖まるだろう。
しかし、あれが‥‥ああ、そうだ、「昨日の事」の説明をしていなかった。
‥なるべく簡単に、説明をしよう。
ここ最近、私はエルと共にアビセアに籠もっていたんだ。
目的は‥自己鍛錬と金策の為。
だが、思いもよらず‥とあるNMのトリガーアイテムが揃ってしまって。
折角だし、NMを討伐しようと思ったのだが‥それには私達の力が足りない。
仕方無く、過去のつてを辿り‥知り合い達にお手伝いをお願いしたんだ。
で、戦った結果としては‥あっけない位に難なく倒すことが出来て。
最も、お手伝いに来てくれた方々の装備が、私達とは段違いで‥というのもあったんだろう。
こちらとしては、事前に調べ‥皆の分の薬品なども準備し、手渡していたんだが‥ほぼ使用せずに終わってしまった。
まぁ、無事に終わったことはなによりだし、嬉しい事も多々あった。
お手伝いに来てくれた方に、少しだがドロップアイテムを差し上げられたこと‥
そして、予想外な事だったが‥珍しい装備がドロップし、色々あった結果‥私が貰いうけたこと。
‥それは今もこうして身につけている、アウグルグローブで‥
こうして眺めているだけで、自然と顔がほころんでくる位に‥嬉しいものだ。
用意した聖水などの薬類は、「折角だから」と‥お手伝いさんに渡したままで、
そう言った出費はあったが‥なに、また金策すれば良いだけのことだ。
ただ‥そういった嬉しい事があった反面、少しだけ‥なんとも言えない思いに駆られる事もあった。
それは‥装備の事だ。
さっきもちらりと言ったが、お手伝いに来てくれた方は、皆良い装備を持っていて‥
‥とてもじゃないが、私やエルの様な‥競売で買える、比較的安い装備なんかとは比較にならない。
そんな良い装備を持っているのが‥正直羨ましかった。
いや、勿論皆‥苦労して、努力して‥それを手にした事だろう。
それでも‥それでも‥。
‥‥ふぅ。
もっと交友関係が広ければ?リンクシェルグループに入っていれば?
そういった装備を手に入れられるチャンスが広がったのかもしれない‥
‥実は以前に、そういった多人数参加のバトル系リンクシェルグループに、参加を申し込んだことがあった。
ジュノの街中で、声高らかに人員を募集していたリンクシェルがあったんだ。
私はエルと共に、その募集していた人物に声を掛けて、そして‥‥断られた。
その時言われた言葉は‥はっきりと今でも覚えている‥「タルタル族の前衛は要らない」‥と。
その言葉にエルは「僕は良いから、タリスだけでも」と、言ってくれたけれど‥
‥私自身、そういう風に言われる様な所には入りたくなかった。
我が儘かもしれない‥でも‥友人をバカにされた様な気がして‥許せなかった。
確かに‥私達タルタル族は、他の種族に比べて身体が小さく‥力だって弱い。
特に力の差が、強さの差に大きく関わるモンクは、タルタル族にとっては相性の悪いジョブ、なのかもしれない。
でも‥それでもエルは‥しっかりやってくれている。
私と二人で戦闘に臨むときは、それこそ‥いや、この話はもうよそう。
それに‥別にエルだけが悪い、と言ってるんじゃない。
他のそういったリンクシェルに、同じ様に参加希望だと名乗り出て‥私がダメだ、と言われた事もある。
その時は‥私の装備が不十分、という理由だっただろうか‥
元々エルは、そういったリンクシェルグループへの参加にさほど乗り気じゃなかった様で、その時はそれで終わったけれど‥
‥それ以来、私達の間に「ああいったリンクシェルグループに参加するのはダメかな」なんていう空気が流れていた。
でも‥私は‥‥
「あれ、タリス‥タリスじゃないか!‥久しぶりだな」
突然‥聞き覚えのない声に名前を呼ばれ、私は振り向き‥そして顔を見上げる。
私の遙か頭上にある、その顔は‥なんとなく覚えがある‥いや、はっきりと覚えている。
彼は‥彼は‥
「バルト!‥久しぶりだ‥偶然だな」
彼はバルト‥エルヴァーン族の男性で、1年ほど前に良くパーティを組んでいた記憶がある。
二人だけで行動することの多い私達だったが、彼とは不思議と良く出会い‥ウマがあったせいもあり、一緒に戦っていた。
彼はナイトをしていて、赤魔道士、そしてモンクの私達と、パーティとしての相性が良かった‥というのも理由の一つかもしれない。
最も、ある時を境にして、全然会わなくなってしまったのだが‥
「ははッ、ちっこい中でもタリスは本当に目に着くからな。‥元気でやってたか?」
人なつっこい笑顔で、少しからかうようにそんな事を言うバルト。
ちっこいと言うが、私が特別小さい訳ではない。
そもそもエルヴァーン族とタルタル族では身長差が2倍‥とまではいかないまでも、1.7倍くらいはあるのだから。
「私がちっこいんじゃなくて、そっちの方がでかすぎるんだ。ふふ‥お陰で元気にやってるよ」
「ははは、そうかそうか‥なぁ、折角だし、そこで飲み物でも飲んでいこうぜ」
笑って返す私に、バルトも笑ったままそう応えて。
折角だから、とバルトが指を指した先には‥吟遊詩人の酒場があった。

「単刀直入に言わせてくれ。‥タリス、俺達の主催するヴォイドウォッチ専用のリンクシェルに、参加しないか?」
吟遊詩人の酒場に入り‥軽く周囲を見渡しながらも、空いている席について。
注文を済ませた後に、バルトが言った台詞が‥これだった。
ヴォイドウォッチ‥って‥あのヴォイドウォッチ‥だよな?
上位のモンスターとなると、数人では到底太刀打ちできない、そんな強大な敵‥
だが、倒すことが出来れば、それこそ素晴らしい装備やアイテムを手にすることが出来る‥
‥そんなヴォイドウォッチに‥私が?
思いも寄らないバルトの言葉に、私の胸が高鳴っていくのを感じる。
そうだ、さっきまで‥バルトと出会うまで、ずっと考えていた‥「良い装備を手に入れられるチャンス」。
それが今、私の目の前に‥あるんだ。
それはとても魅力的な話で‥思わずすぐにでも「参加する!」と言いたくなってしまう。
だが‥そんな自分にまるで「待った」を掛ける様に、様々な事が頭に浮かんでくる。
まずは‥そう、ヴォイドウォッチの事は幾度か話に聞いた事があるが、そんな‥私などが力になるのだろうか。
そんな「心配した顔」をしている私の心を、バルトは見抜いていたようだった。
「心配するなよ。これから『みんなで始めよう』って所なんだ」
バルトはそんな言葉を皮切りにして、簡単に事のあらまし‥私をリンクシェルに誘おうとした経緯を、説明してくれた。
なんでも‥バルトは最近、友人達と共にヴォイドウォッチ専門の攻略リンクシェルグループを立ち上げたばかりらしい。
それからそれぞれの知り合いを、メンバーとして勧誘していたらしいが‥人数が‥いや、そもそも後衛が少ないらしくて。
さて、どうしようか、いっそのことメンバー募集を叫んでみようか‥という話すら上がっていた時に、
たまたま私の姿が見えた‥というのがついさっきの事だそうだ。
過去、一緒に戦った時の記憶から、私なら‥と思い、声を掛けてくれたそうなんだが‥
「‥でも、私の装備は‥見て分かるだろう、はっきり言って良いとは言えないぞ」
‥そうだ‥どうしても今の装備、競売所で安価に手に入る程度の装備では‥と、私は引け目を感じてしまう。
だが、そんな言葉にもバルトは‥軽く首を振りながら、こう言ってくれたんだ。
「装備なんてこれから揃えていきゃいい。‥それに‥俺は覚えてるぜ?タリスの事をよ。
 一緒にやってた時は‥良い腕してただろ?‥最も、あの時から腕が鈍ってなけりゃ、良いんだけどな」
にこやかに微笑みながら‥諭す様に言ってくれるバルトに。
‥不思議と‥いや、自然と、か‥自分の中でも「やれるんじゃないか」「頑張れるんじゃないか」という思いが湧いてくる。
そして‥最後のからかうような‥いや、そうじゃないな。
きっと私をその気にさせる為に言ってくれた‥そんな気がするから。
「腕については‥直接見て貰えば良い‥それで判断すれば良いさ。ただ‥問題はもう一つあるんだ。その‥」
そうだ‥自信過剰とまではいかないまでも、自分の腕は決して悪くは無い‥と思っている。
‥装備が良く無い分は、腕でカバーだ‥と、エルとも常々話し、自分なりに研究していたつもりだから。
‥その上で「ダメだ」と言われたなら‥自分でも諦めが付くというものだ。
腕の件はいいとしても‥そうだ、問題はまだあるんだ。
私は少し口ごもりながらも‥バルトからそっと視線を逸らす。
いや、正確には‥逸らした視線の先に居る人物を見る。
‥そう、この店に入って、私はすぐに気付いた‥エルが居る事に。
エルはテーブル席に着き、何やら真剣そうな話をしていた。
相手は‥確か昨日手伝いに来てくれた赤魔道士‥確かエルの知り合いだっただろうか。
ともかく、真剣に話し合っている‥そんな状態だったから、エルに声を掛けることは出来なかったんだが‥
私達が座ったテーブル席が、エルの座る席のすぐ近く‥という事もあって、エルも私達に気がついた様だった。
‥もしかしたら、この話すら‥聞こえているかもしれない。
ともかく、私がヴォイドウォッチに参加するためのもう一つの条件、それは‥
‥視線をバルトの方に戻して、私は話し始める。
「‥私の友人、エルも一緒に参加させてほしい」
エルの名前を出した途端、バルトの表情が‥微かに翳るのを感じた。
‥その様子だと、エルは良く受け止められていない‥のだろう‥‥多分。
バルトは‥注文していたメロンジュースを軽く口に含むと‥ふぅ、と一息付いた。
「‥エルの腕は俺だって覚えてる‥良い腕をしてるのは確かだ。‥でもな、前衛は一杯一杯なんだよ‥」
申し訳なさそうな表情で‥バルトはそう呟いた。
‥前衛は一杯‥か。
それも良く聞く話だ‥前衛、後衛の比率で見れば、どうしても前衛の方が多いと聞く。
だが、エルがダメだとなると‥仕方無い。
非常に魅力的な話で‥残念だが‥仕方無いだろう‥。
「‥そうか‥それなら‥‥仕方無い、な。‥悪いけど、この話は‥」
「なぁ、少しで良いから‥考えてみちゃ、くれねぇか?‥時間はまだあるから‥さ」
折角の話だったが、私が断ろうとした‥その言葉をバルトは遮る。
バルトは食い下がるように、そう言って‥私を説得しようと話し始めた。
‥どうしても二人一緒じゃなきゃダメなのか‥
‥前衛に空きが出来たら、その時にはエルを改めて誘うというのはダメか‥
‥活動時間は週の後半、氷曜日~闇曜日の四日間だけだが、それでもダメか‥
等と、次々と話を詰めてくるバルトに。
‥私をそこまで必要としてくれる、その姿勢に‥そして勿論、その活動内容に‥
私は思わず心が揺り動かされそうになってしまう。
最初は私一人でも、いつかはエルと一緒に出来るなら‥
週の前半は、エルと一緒に行動できるから‥
そんな甘い理由が、私の頭をちらついた所で‥私は頭を左右に振り、席を立った。
「‥悪いけど‥しばらく考えさせて欲しい‥」
尚も「返事を待ってるからな!」と、声を掛けてくるバルトを背に‥私は席を立った。
‥ふと見ると、いつの間にかエルも居なくなっていて‥
私は一人、レンタルハウスへと戻る事にした。

レンタルハウスへと戻る道中で。
私はずっと‥考え続けていた。
バルトに誘われた話‥それはとても‥とても魅力的な話。
でも、その話に乗るということは‥エルとは別に行動する事になる。
‥今まで‥冒険者になって、ずっと‥‥ずっと、一緒に行動してきた私達。
でも‥例え一週間の半分と言えども、別の行動を取ることに‥なるんだ‥。
でも‥‥でも‥‥‥。
‥‥ああ、私は‥これから‥。
これから‥一体どうすれば良いんだ‥。
私の足が、レンタルハウスの扉‥その前で止まってしまっても‥
‥私の考えが止まる事は‥答えが出ることは‥無かった。


 
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