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その15『吟遊詩人の酒場にて』

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吟遊詩人の酒場‥そこは、様々な想いが集う場所‥。
 

「わぁーん、ボク、もういやだよぉー!」
どこか情けない様な‥でも、ある意味「しっかりとした意志」を持つ様に聞こえる‥そんな叫び声。
‥まぁ、ぶっちゃけ「泣き言」なんだけど。
そんな「泣き言」を言っているのは‥俺の目の前に居るタラムだ。
タラム‥タラム・リスタラム、同じリンクシェルに所属するメンバーで、俺の‥友人だ。
タラムは男‥しかも俺と同じ15歳という年齢にも関わらず、机に突っ伏す様にしてわんわん泣いている‥。
泣く度にオニオンヘアー独特の、頭頂部のツンツンが揺れていて可愛く‥いや、何でも無い。
まぁ、タルタル族なのがせめてもの救いだろう‥泣いていても、さほど注目を集めないでいる。
‥ああ、ちなみにここは、ジュノ下層にある吟遊詩人の酒場だ。
そろそろ夜も深まってくるこの時間、やかましいくらいの喧噪と‥そして吟遊詩人の奏でる音楽。
それが、タラムの泣き声をかき消してくれているのだろう。
‥あ、タラムの背後‥奥のテーブルのタルタルさん達が、こっちを見てるな‥流石に近場には聞こえているか。
とりあえず、軽く会釈した後に手を振って‥「大丈夫です」って意思表示はしておこう。
さて、そっちは良いとして‥問題なのは泣き続けるタラムだ。
わんわんと泣き続けるタラムを、このまま放っておく訳にもいかないし。
‥何分、俺とタラムは長い付き合いだ‥こういう時こそ、ちゃんと話を聞いてやらないと。
‥‥最も、タラムの言う「いやだ」の理由も、ある程度は分かっているんだけど‥。
「どうしたんだ、タラム‥ずっと泣き続けて‥何があったんだい?」
そうだ‥ここに来て、注文を済ました後から、ずっと‥タラムはこの有様なんだ。
まぁ、注文した料理はまだ来ていないから、「ずっと」という程長くは無いかもしれないけど。
とりあえず俺は‥あぁ、そうだった‥自己紹介をしておかないと。
俺はワクシエル・ツエル‥みんなからはシエル、と呼ばれている。
タラムと同じく、タルタル族の男だ。
ちなみに赤魔道士をしていて‥銀髪を縛った部分がシャポーから覗くのが格好いいと自分でも‥いや、なんでもない。
さて、そんな訳で‥とりあえず俺は、タラムに「泣いている理由」を聞こうと思ったんだが‥
「だって‥だってぇ‥‥ラケルトさんに‥恋人が居たんだもん!」
‥やっぱり。
想像の通り‥寸分違わず、思った通りの事を言ったラケルトを見て‥俺はふぅ、とため息をつく。
こりゃあ‥なかなか難儀なことになりそうだ。
‥あぁ、そうだ‥俺ばかり合点がいっているのも何だ。
簡単にだけど説明しておこう。
そもそも今日は、リンクシェルメンバ-でイベントがあったんだ。
まぁ、いつもの様に十数名が集まって‥いつもの様に狩りだとか、釣りだとか‥色々と予定をこなして。
で、そんな「いつも」の事が終わった後‥「いつも」じゃない発表があった。
発表したのは‥リンクシェルリーダーのラケルトさん。
で、肝心の内容っていうのが‥‥恋人の事だった。
ん?なんでまた、恋人の話を発表するのかって?‥うーん、それは‥どこから話そうか。
まず、ラケルトさんは‥タルタル族の男性だ。
年齢は俺達に近く、若いのにリーダーを立派に務めている‥凄い人だ。
そんなラケルトさんに、恋人が居る‥っていうリンクシェル内の噂がある。
しかも、その恋人っていうのは‥男だって言う噂だった。
まぁ、俺としては‥当人達が良ければ、別に男同士でもいいんじゃないか‥っていう感はある。
‥最も、タルタル族にはそういう考え方の人が多いんだ‥おおらか、というか穏やか、というか‥。
ウィンダスの穏やかな気候が、そんな穏やかな考えを産んだのかもしれないな。
‥‥まぁ、男女の体型にほとんど差がないから‥というのもあるのかもしれない‥。
ともかく、ラケルトさんには男性の恋人が居る‥そんな話がリンクシェルメンバーの中で上がりはじめて‥
少しばかり、良くない雰囲気も混じり始めたんだ。
さっき俺は「タルタル族は穏やかな考え方の人が多い」と言ったが‥何もそんな人ばかりじゃない。
中には同性同士の恋に理解を示さない人や、嫌悪感を抱く人だって居る。
‥リンクシェルメンバ-の中にもそういう人が居た‥って事かもしれない。
で‥ラケルトさんの発表は、そんな良くない雰囲気を払拭するために行ったものだった。
恋人の紹介と‥そして経緯というか、想いと‥真剣さと。
そして、この事が嫌でリンクシェルを離れていく人が居ても、責めはしない‥という覚悟と。
その発表と‥ラケルトさんの話で、今日の所は皆、和やかな雰囲気に収まったんだが‥
‥中に一人、涙を堪えるヤツが居た、って訳だ。
それというのは勿論‥タラムだ。
「あーーん!ラケルトさん‥ずっと‥ずっと好きだったのにぃ!」
その言葉を聞いていると‥思わずため息が出てしまう。
‥どうしてかって?それは‥‥うーん、なんて‥言うのかな。
えっと‥そうだ、報われない恋に対する‥切なさを感じているから‥‥かな。
‥と、ともかく‥
タラムが以前から、ずっとラケルトさんの事を想っていたのは知っていた。
ずっと好きで‥俺と食事をする時だって、ラケルトさんの事を良く話していたっけ。
‥でも、ラケルトさんの前だと‥全然そんな話なんてしなくて。
本当に、ずっと‥ずっと想っていたんだ‥。
‥‥ふぅ。
そして今‥ラケルトさんに恋人が居ると知って‥泣き崩れて。
でもこれで、タラムも‥ラケルトさんをすっぱりと諦めて、新しい恋を見つけられる‥‥のかもしれない。
‥少し時間は掛かるかもしれないけど、それでも‥
それでもタラムが元気になってくれるなら。
今日は‥今日だけは、タラムの「泣き言」にも「我が儘」にも付き合ってやろう。
‥あぁ、そうでなくとも「我が儘」には、いつも付き合ってるかな‥?
「ほら‥タラム。ラケルトさんの事は忘れてさ‥御飯でも食べて元気だしなよ」
そうだ‥タラムは美味しい御飯を食べるのが好きなんだ。
で、ここは「酒場」と銘打っている割には中々御飯が美味い。
タラムだって、この美味しい御飯を食べれば、きっと機嫌だって治るさ‥
‥なんて考えていた俺は‥甘かったのかもしれない。
「忘れるって‥リンクシェル活動の時は嫌でも顔を見るんだし‥そんな簡単に忘れられないよ!シエルのばかぁ!」
‥上手くなだめるつもりが‥ばか、と返されるとは。
ま、まぁ‥俺の言い方も少し悪かった‥のかもしれない。
‥と、ともかく、次は‥‥次は‥
‥‥‥次は何と言おうか。
言葉が出あぐねるこの状況。
泣き続けるタラムを、俺は無言で見守る事しかできないでいる‥。
‥しかし。
そんな状況を打破するような一矢が、打ち込まれたんだ!
「‥おまたせしました」
その声は、勿論俺からでもタラムからでもない。
テーブルの脇から聞こえてきた、その声と共に‥俺とタラム、二人の前に飲み物が並べられる。
注文していた料理の中で‥飲み物だけが先に来た‥という所だろう。
とりあえずはこれを飲んで、タラムの昂ぶる気持ちも抑えられれば。
‥‥そう考えていた俺だったが‥やはりまだまだ読みが甘かったらしい。
タラムはおもむろに顔を上げると、飲み物に手を伸ばし‥颯爽と‥いや、即時に飲み物を飲み干してしまった。
それこそ「一気飲み」と言っていい様な飲みっぷりだ。
そして‥更には。
「うわぁーん、ラケルトさんのばかぁ!マスター、おかわり!」
涙を流しつつ、空になったグラスを突き出すタラム。
‥まぁ、言いたい事は分からないでもないが‥色々と間違えすぎだ。
「‥えっと‥よろしいんで?」
そんな声が聞こえてきたのは、テーブルの横からだ。
そこにはさっき、僕達に飲み物を運んできたヒュームの男性が居る。
その表情は戸惑いを浮かべながら‥救いを求める様に、俺の方を見つめていて。
まぁ、それもそうだろう‥グラスを突き出され、更には突然の言葉を掛けられて‥戸惑わない筈が無い。
「あぁ、悪いね、給仕さん‥彼にもう一杯、パインジュースを」
そうだ‥まず始めに、彼はマスターじゃない‥ただの給仕、所謂ウェイターさんだ。
そして‥タラムがさっき飲み干したのはお酒じゃない‥ただのパインジュースだ。
つまり、彼はまだシラフな訳だが‥それでもあんな反応をしている‥と。
あぁ、このままでは‥と、考えを進める俺に「待った」を掛ける様に‥
更には、給仕さんが戻ろうとするのを引き留めるように‥タラムは声を上げる。
「ちがうもん!ボクはパインジュースなんていう子供じみたものは飲まないモン!」
‥突然の言葉に、俺は一瞬タラムの表情を見て‥
‥‥その表情が決して冗談で言っている様子では無いのに気付く。
なるほど、ジュースなんて子供じみているものじゃなくて‥例えば酒を飲むという事だろう。
それもいい‥嫌な事を酒で忘れる‥というのも良いだろう。
多少悪酔いしても、俺がちゃんと‥面倒見てやるから。
だから‥
「だから‥メロンジュースを下さい」
「って、メロンジュースなのかよ!」
タラムのその言葉に、思わずツッコミを入れてしまう俺だった‥。

とりあえず‥とりあえず。
俺のツッコミの方が、余程響いたらしい。
先程こちらを見て心配(?)していたタルタルさん達二人組が、再びこっちを見て‥今度は不思議そうな顔をしている。
‥まぁ、同じタルタルだし‥見たところ、一人はモンスターアーマー一式を装備している事から、タラムと同じ獣使いの様だ。
俺と同じ銀髪を、オニオンヘアーに纏めていて‥それがモンスターアーマーの色合いとマッチしてる‥上手いな。
ともかく、同じ獣使い同士‥もしかしたらタラムの知り合いかもしれないな‥いや、そんな訳は無いか。
そんなタルタルさん達に、俺は改めて会釈をすると、手を振って‥「本当に大丈夫です」と意思表示を示した。
‥あまり騒がない様にしないとな。
「うぅ‥ボクは‥とっても悲しいよ‥。うぅ‥」
その声に改めてタラムを見ると‥給仕さんが運んできた、メロンジュースをちびちびと飲みながら‥そんな事を言っている。
流石にメロンジュースが高いからか‥あるいは一気に飲む気分では無いからか。
ともあれ、まだまだ悲しみは引きずっている様だ‥
‥いや、そもそも何も対応を取っていないんだから、当たり前か。
しかし‥しかし。
対応を取るとは言っても、何をしてやればいい‥?何と言ってやればいい‥?
今、折れたタラムの間には‥無言という冷たい空気の固まりがある‥。
せめて料理が早く来れば、まだ場が繋がるのかもしれないけど。
しかし、お店は結構混んでいるし‥少し待たされることになるだろう。
とりあえず‥何か言葉を掛けるべきだろうか。
‥元気だしなよ?
‥くよくよするな?
‥俺の胸に飛び込んでこい‥は違うよな‥。
あれこれと言葉を考える俺に‥タラムがぽつりと呟いた言葉が聞こえてきた。
「はぁ‥せめて、悲しみを癒してくれる‥バラードが聞けたら‥」
‥なるほど、そうか‥音楽で雰囲気を、って事か。
ここは吟遊詩人の酒場‥ステージには吟遊詩人が居て、今も歌を歌っている。
でも、チップをはずむことで‥曲のリクエストだって可能だったハズだ。
早速俺は、ステージ上の吟遊詩人さん‥その歌の合間を狙い、声を掛けた。
「‥吟遊詩人さん、悪いけれど‥魔道士のバラードを頼めるかい?」
その言葉と共に、チップを吟遊詩人さんに投げる。
チップを受け取った吟遊詩人さんは、一礼して‥そして歌が始まった。
綺麗な声が、淡々と‥しかし時に情熱的に、詩歌を紡んでいく。
どこかもの悲しくもあり‥そして切なくもある、魔道士のバラード。
‥って、こんな曲で悲しみが癒せる‥の‥か‥?
しばらくステージの方を見ていた俺だったけれど、ふと‥タラムの方へと視線を移して‥
‥俺は唖然となった。
「うぅ‥ラケルトさぁん‥ボク‥ボク‥うううぅ」
って、さっきよりも余計酷くなってるじゃないか!
さっきまで上げていた顔を、テーブルに突っ伏して‥泣き声を上げているタラム。
ええい、ダメだダメだ‥‥なにか、他の曲‥
‥そうだ、もっと元気な曲‥心を盛り上げ、元気にしてくれる曲を歌って貰おう。
で、そんな元気になる曲といえば‥‥あれだな。
俺は吟遊詩人さんの方を再び見て‥そして曲の合間に声を掛け‥チップを投げる。
「吟遊詩人さん、今度は猛者のメヌエットを頼むよ!」
吟遊詩人さんは、俺からの再度の‥しかも早いリクエストに、少し驚いた様な表情を見せたが‥
ともあれ、そこはプロなのだろう‥改めて一礼すると、歌を歌い始めた。
先程のバラードとは、雰囲気が一変するような‥声高らかに歌う、力強いメヌエット。
聴いている俺だって、どこか元気が出てくるような‥そんな感じがする。
これなら‥これならきっと、タラムだって‥!
「うおお!きた!心にアツくきたよ!‥奪うよ‥ラケルトさんを奪うよ、ボク!」
って、ちょっと待てちょっと待て。
タラム‥元気になりすぎて、略奪愛っぽくなってる!?
だめだ、だめだ‥メヌエットはダメだ。
となるとなんだ?一体、何の曲が良いんだ‥?
えっと‥元気が沸いてきて‥でも、強すぎない曲って‥‥なんだ!?
‥えっと‥えっと‥ええい、ままよ!
「吟遊詩人さん!えっと‥その‥マンボ‥はだめだな、ピーアン‥そうだ、ピーアンを頼む!」
吟遊詩人さんは、まだメヌエットを歌う最中だったが‥悠長に歌い終わるのを待っている暇は無い。
俺がチップを投げると、吟遊詩人さんは‥それを慌てて受け止めて。
困惑の表情を浮かべながらも‥ピーアンを歌い始めた。
穏やかで緩やかなリズムにのって、歌われる詩。
ゆったりと‥少しずつ元気の出てくる‥そんな曲。
これだ‥これなら‥これならきっと‥いや、絶対にタラムだって‥!
タラムの方を見ると、どこか‥そう、穏やかな表情をしていて。
良かった‥タラム、落ち着いてくれた‥。
「あぁ‥やっぱり‥‥そうだ、ボクは心の奥で、ラケルトさんの事をずっと想い続けるよ」
「ああ、もういいもういい‥吟遊詩人さん、薬草のパストラルで良い!」
‥最後に自棄になった、俺のリクエストに‥
吟遊詩人さんもまた、自棄になってパストラルを歌い始めるのだった‥。

「あのね、ボク‥いろいろと考えたんだけど‥」
パストラルが効いたのか、または料理が来たからなのか、はたまた‥
とにかく、理由はハッキリとしないけれど、タラムの様子は落ち着いている。
‥さっきまでチラチラとこちらを見ていた、タルタルさん達も‥ようやく気にしなくなった様だ。
まぁ、流石に変な客だ‥とは思っているだろうけど。
ともかく、タラムはペペロンチーノを口元に運びながら、話を続ける。
「やっぱりボクにはね、あの人しか居ない‥って思うんだ」
‥その話の内容に‥思わず顔をしかめてしまう俺。
‥いや、その‥タラムの言う「あの人」っていうのは、恐らく‥ラケルトさんだろう。
それはつまり、最初の話に逆戻りするのか‥って思ったんだけど‥
「あの人って‥ラケルトさんか?」
「ううん、違うよ。‥‥ボクの大好きな人‥あこがれの人‥唯一の人‥クリストさん!」
なるほど、どうやらラケルトさんでは無いらしい。
そこはまぁ良いだろう‥うん、さっきまでの浮き沈みのループを延々繰り返すよりは。
でも‥大好きな人、あこがれの人、唯一の人‥‥って、ラケルトさんが唯一じゃなかったのか?
‥‥まぁいいだろう、それよりも問題は‥
「‥‥誰?」
誰だ‥クリストって。
リンクシェル内にはそんな名前の奴は居ないし‥
俺もそれほど有名人を知っている方じゃないけれど、クリスト‥という名前に心当たりは無い‥。
タラムの古い友人‥とかだろうか?
「獣使い仲間じゃ有名なんだよ。銀髪のオニオンヘアーが素敵でね‥
 トレードマークのモンスターアーマー一式との色合いが、凄く格好いいんだよ」
なるほど、なるほど‥
そのクリストさん‥って人は、獣使いなんだな。
で、銀髪のオニオンヘアー‥に‥モンスターアーマー‥‥って‥ごく最近、どこかで見た様な‥
‥‥そうだよ。
「‥タラムの後ろに居る人か?」
そうだ‥さっきから、こちらをチラチラと見ていたタルタルさん達‥
その片方が、タラムの言った様相まんまなんだよな。
だから、俺はその人達を指さすようにして、タラムに言ってみせたんだが‥
「‥‥‥え?‥‥‥わあッ、クリストさん!」
‥どうやら図星だったらしい。
タラムはその人を見て、慌てて席を飛び上がると‥そんな声を上げて。
‥いや、突然そんな声を上げるから、クリストさん‥びっくりしてるじゃないか。
「エ‥あ‥‥っト、どこかでお会いしましたっケ‥?」
ウィンダスの方でも、地方独特の方言を使っていて‥なんとなく懐かしく、そして親しみを覚える声。
でも、肝心の言葉の内容は、って言うと‥‥あれ、クリストさんはタラムのことを覚えて無い‥?
‥つまり、タラムが一方的にクリストさんの事を好きなのに‥
相手のクリストさんからは忘れられてるって、それはちょっと‥酷いんじゃないかな‥。
「いえ、初めてお会いします!」
「初めて会ったのか!‥ってか、話もしてないのに好きなのかよ!」
いや、そりゃ思わずツッコミたくなるだろ?
面識も無い、話した事もない‥そんな人が好きだなんて‥
「えっト‥好き‥っテ、一体‥?」
うおっ、しまった‥俺、つい‥言っちまった‥
そんな‥そんなつもりじゃ無かったのに‥しまったぁ‥。
い、いや‥いくら何でも、初めて会う人に好きって言われても、ウンとは言わないだろうし‥
第一、タラムが好きって言った訳じゃないもんな‥うん。
「あの、ボク‥タラムって言います。クリストさん、一目惚れです‥好きです!」
(いやいや、ここでこの流れで告白するのかよ!?)
‥ふぅ、なんとか今度はツッコミを抑えられたぞ‥
‥‥あれ、今のはもしかしてツッコんだ方が良かったのか‥い、いや、そんな事は‥
「はイ、ありがとウ‥タラムさン」
見ると、クリストさんはにこにこと微笑みながらそう言って‥
‥え?もしかして‥もしかして、その言葉って‥告白を受けた、って事‥?
そ‥そんなバカな‥そんな‥!
俺は慌てて席を立つと、二人の間に割って入った。
そして‥クリストさんに向けて、言葉を突きつける。
「ちょ、ちょっと待ってくれ、クリストさん‥
 あんたは‥タラムの事を何も知らないのに、それなのに‥告白を受けるのか?」
「えっト‥あなたハ?」
まるで詰め寄るような、俺の剣幕に‥いや、言葉に驚いたのかもしれない。
クリストさんは、俺の方を見てポカンとした表情をしていて‥
‥ああ、そうだった‥名乗りもしてなかったんだ。
えっと‥とにかく、言う事は言わなきゃ‥な。
「お‥俺はワクシエル‥タラムの‥友人だ。
 言っておくけど、タラムは‥その‥素直で‥誰にでもホイホイ騙されて‥気分だってどんどん変わるし‥
 その‥魔物との戦闘だって、見守っていてやらなきゃダメだし‥それに‥
 その‥えっと‥と、とにかく、大変なヤツなんだ‥それでもあんたは‥」
そうだ‥タラムは大変なヤツなんだ‥
タラムに付き合うのも‥見守るのも‥本当に大変で‥
でも‥でも、放っておけないし‥それに‥その‥
「なるほド‥でモ、手の掛かる人ほど愛しイ‥でショ?」
「う‥それは‥その‥‥」
クリストさんの、その言葉に。
なんだか‥俺の心の中まで見透かされてる様な、そんな気がして‥
‥俺は言葉が出なかったんだ。
そんな中、今まで黙っていたもう一人の人‥クリストさんと相席していた人が、口を開いたんだ。
「‥ふふ、クリスト、あまり人をからかっちゃ、ダメですよ」
優しい声‥まるで子供をあやす、母親のように‥その人はクリストさんにそう言って。
そして‥クリストさんは微笑んだんだ。
‥そう、悪戯を咎められた子供の様に。
「そうだネ。‥タラムさン、ごめんなさイ。オイラには、もう大事な人が居るからサ‥あなたの告白は受けられないんダ」
なるほど‥クリストさんには大事な人‥つまりこの相席の人が居て‥
でも、タラムの言葉に乗る様に‥悪戯っぽく話を進めていた、って訳か。
‥でも‥
「‥そう‥‥‥ですか‥」
それを聞いたタラムは‥やっぱりガッカリする‥よな。
少し俯いて‥また、悲しそうに‥
‥でも、そんなタラムに‥クリストさんは言葉を続ける。
先程迄の悪戯っぽい笑顔から‥少しだけ真剣さを帯びた、そんな優しい微笑みの表情で‥
「‥でもネ。あなたには‥もっと素敵で、そして‥愛してくれる人が居るでショ?」
「えっ‥それって‥もしかして‥」
クリストさんの、その言葉に‥タラムは俯いていた顔を、少し上げて‥そして‥
‥ゆっくりと、俺の方を見る。
もしかして‥俺の気持ち‥さっきの言葉で、分かっちまった‥かな‥。
その‥俺の‥タラムへの気持ちが。
タラムは俺の方を見て‥真剣な表情をしながら‥口を開いたんだ。
「‥もしかして‥やっぱり、ラケル‥」
「バカっ!俺だ‥俺がお前を愛してるんだよ!」
タラムが「ラケルトさん」って言い終わるより前に。
俺はタラムにそう言って、そして‥タラムの身体を抱きしめた。
‥しかし、やっぱり‥やっぱりタラムは分かって無かったんだ‥。
なんていうか、ニブい所があるから‥なぁ。
でも‥今は‥もう、俺だって引き下がれない。
ここまで来たら、言うしかない‥と思ったんだ。
だから‥俺はぎゅっと‥タラムの身体を抱きしめて。
「‥‥‥うん。ありがとう‥シエル‥‥好き」
タラムも、俺の身体を抱きしめながら‥そう言ってくれたんだ。
その‥タラムの言葉には、迷いとか‥驚きとか‥そういうものは全然無くて。
もしかしたら‥そう、もしかしたら‥ニブかったのは俺の方だったのかもしれない。
ともかく‥酒場の中で、抱きしめ合う俺達に‥
気を利かせてくれたのだろう、吟遊詩人さんの歌うノクターンが‥俺達の周りを静かに取り囲んでいて。
そんな心地よい音を耳にしながら‥俺はタラムの身体、その温かさを‥身体に感じていたんだ。
ただ‥そんな俺達の心地よい空気に、割入ってくる様な‥そんな声があった。
それは‥
「お客様、当店よりサービスの‥スッポンスープでございます」


 
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