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 ←その30『フィリスとモンクの兄弟 その5』 →新年のご挨拶
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その31『ワランツの思い』

 ←その30『フィリスとモンクの兄弟 その5』 →新年のご挨拶
「やぁ、お疲れ様‥ランちゃん」
長い時間を要した戦闘と‥そして事後処理を終えて、みんながぽつりぽつりと帰路につく‥そんな時に。
私の背後から、そう言って声を掛けてきたのは‥きっとウェインだね。
だって、私の事を「ランちゃん」なんてあだ名で呼ぶのは彼くらいだもの。
「うん、お疲れ様、ウェイン」
私は振り返るなりそう言って、にっこりと微笑んでみせる。
戦闘を終えて、一息ついたこの瞬間‥ホッとして微笑みが浮かぶのは、ヘンじゃないよね。
集中していた時間が長かった分、終わった後は気の緩みだって出るものなんだから。
‥ああ、でも私としては‥‥胸の中からこみ上げてくる、恥ずかしい気持ちの方がよっぽど強いんだけど‥。

「ランちゃんが来てくれたお陰で、戦闘も無事‥いや、ラクに終えることができたと思うよ」
そんな恥ずかしがっている私の事を、気遣ってくれているのか‥ウェインはねぎらいの言葉を掛けてくれるけれど。
‥言われれば言われるほど、私には「自分の失敗」が堪えてくる‥。
ああ、ホントに私って‥早とちりが過ぎるんだから。
「ううん、私なんて居なくっても、そんな‥」
そう‥今日のこの戦闘は、私が居なくてもきっと大丈夫だった‥無事に終えることができた筈なんだ。
それなのに私は、慌ててこの戦闘に加勢したんだ‥
しかも、その代償に‥自分が当初受けていたNM討伐、という作戦まで抜けてしまって。
NM討伐の方は、私の代わりとなる人が見つかったから良いようなものの‥それでも、迷惑を掛けたことに違いはないし。
はぁ‥私は何をやっているんだろう‥。
「そんな事は無いよ。‥君はもう少し自分に自信を持った方が良い。
 ‥まぁそもそも、君が『勘違いをした』と言うのなら‥責任はラケさんにもあるのだし」
私が、少し落ち込んでいるような‥そんな表情をしていたのかもしれない。
ウェインは私に優しくそう言ってくれて‥。
でも、そんな気遣いがまた‥‥ああ、そうだ、色々と言ってなかった事があったよね。
簡単にだけど、説明しておくね。
まずは‥そうだ、自己紹介すらしていなかったんだ。
私はワランツ・カランツ‥タルタル族で男性、冒険者として各地を旅してるよ‥あ、ちなみにモンクなんだ。
髪型は何の変哲もない‥言い換えれば良くある、ざっくばらんなぼさぼさ頭で、ちょっと茶色っぽいのが特徴‥って
それはまぁ、どうでもいいことなのかな?
で、今私と話をしているのは‥ウェイン・ジェイン、他人に独特なあだ名を付けるのが特徴‥かな?
あ、それと少し‥ふふ、ナルシストなのも特徴かもしれない。
そんなウェインと私は、同じリンクシェルに所属していて‥そしてついさっきまで、一緒に戦闘をしていたんだ。
あ、正確には戦闘していたメンバーみんなが同じリンクシェルのメンバーで‥とにかく、その戦闘も無事に終わった、って訳。
えっと‥ここまでは、まぁ良いとして。
問題は‥そう、私が「自己嫌悪」に陥っている理由、だよね。
さっきも言ったけれど、私はそもそも‥アルテパ砂漠にて、あるNMを倒す為の「作戦」に参加するつもりだったんだ。
作戦決行の前日、事前準備と‥体調を環境に慣らすためにも、私は現場近くのラバオという街に滞在していたんだけど‥
そんな中、リンクパールから、リーダーの声‥ウェインが言う所の『ラケさん』の、助けを求める声が聞こえてきたんだ。
‥その内容というのはこうだった‥リーダーの参加していたNM討伐作戦、そのNMが思いの外手強く‥援軍が欲しい、と。
それを聞いて、私はいてもたってもいられなくなって‥慌ててリーダーの許へと駆けつけた、って訳なんだ。
‥でも、いざ行ってみると‥どうやらそれは私の勘違いだったみたいで。
同じ作戦に参加していた、リンクシェルメンバーの‥別動隊に向けて放った言葉だったらしいんだ‥。
それなのに私は、よくよく確認もせずに‥早とちりをして、慌てて飛んできてしまって。
‥はぁ‥ホントに恥ずかしいよ‥。
「まぁ、ランちゃんが来てくれて、ラケさんも嬉しそうだったし‥ね?」
思わずため息をついてしまった私に、ウェインのそんな言葉が聞こえてくる。
‥リーダーが、嬉しそうに‥‥していたのかな?
私は思わず、応援に駆けつけた時の事を思い返してみる‥
確か‥リーダー自身、少し驚いたような素振りこそあったけど、喜んでいた様子は‥うーん、無かった様に思うんだけど‥。
でも、もし喜んでもらえたなら、私は‥
「おぅ、ワランツ!わざわざ来てくれて済まなかったな‥ホント助かったぜ!」
突然‥私の背後からそんな言葉が聞こえてきて、その言葉に‥そして声に、私は思わず背筋を伸ばしたんだ。
それが誰なのかは、声を聞けば分かる‥さっきから話題に上がっている人、そう‥
「リーダー!‥あの、私‥その‥」
私たちの所属する、リンクシェルリーダーの‥ラケイン・ハケインさんだ。
私は慌てて声のした方へと振り向くけれど‥リーダーの姿を見て、思わず言葉が止まってしまう。
戦闘を終えたばかりで、土埃とかは付いているけれど‥それでも綺麗な金髪。
更には、日頃からツンツンさせている髪型も、全然しんなりとしていなくって‥かっこよくて。
いつも自信の笑みを浮かべている所とか、ぱっちりとした目とか‥本当に‥‥あ。
‥あんまりジロジロ見てちゃ、失礼だよね‥えっと‥
「やっぱりお前さんの拳!良いモンだよなぁ。俺だって短剣ばっかじゃなくって、タマには拳で戦いたくなっちまうよ」
「あ‥ふふ、ありがとうございます」
何か言わないと、と思う私を余所に、リーダーは笑いながらもそう続けて。
お世辞だとは思うけど、やっぱりそう言われると‥うん、嬉しいよね。
その‥リーダーに言われたなら、尚更‥う、ううん、なんでもないよ。
「って、そうじゃねぇんだ。‥いや、セイルから聞いたんだけどよ、お前さんが来てくれたのは‥ぶっちゃけ、俺のせいだろ?
 俺がつい、リンクパールの方で喋っちまったから‥」
リーダーは、さっきまで嬉しそうだった表情を崩すと‥申し訳なさそうな、ばつの悪そうな表情をしはじめたんだ。
そんな‥違うのに、リーダーが悪い訳じゃ‥ないのに。
「あ‥いえ、でも‥その‥‥勘違いしたのは私ですし、それに‥」
「いや、いいんだ。お詫びと言っちゃあ何だけどよ、これから飯食いに行こうぜ?‥今日は俺のおごりだ、な?」
私の言葉を遮るようにして、リーダーは‥え?しょ‥食事に?
いや、食事は別に、リンクシェルでもよく行くからいいけれど‥
でも、おごりだなんて、私はそんなに‥
「え‥で、でも‥」
「ここは一つ、受けてくれよ。助けに来てくれた礼もあるんだ‥わざわざ予定を崩してまで来てくれたんだろ?」
渋る様子を見せる私に、リーダーは優しくそう言ってくれるんだもの。
‥そんな事言われたら、私だって‥
「それは‥そうですけど‥」
「だったら良いだろ?‥な?‥な?‥‥よし、決まりだ!」
リーダーの勢いに‥いや、思いに気圧される様に、私はこくりと頷いてしまって。
でも、私が頷いた途端、リーダーが見せてくれた‥嬉しそうな笑顔って言ったら。
‥嬉しい‥な。
「リーダー、その‥ありがとう‥ございます」
いろいろな気持ちを込めて、私はそう言ったんだ。
‥私を食事に誘ってくれたこと‥勿論、おごってくれる事にも。
‥私の加勢に「助かった」と言ってくれたこと。
‥私の早とちりを、「自分のせいで」と言ってくれたこと。
そんな全てのことに対して、私は「ありがとう」って言ったんだ。
そうしたら‥ふふ、リーダーってば、恥ずかしそうに頭を掻いていてね。
その様子って言ったらもう‥
「ハハッ、礼を言うのはこっちなんだがな。‥お、なんだ、ウェインも居たのか‥お前も行くか?」
リーダーも照れていたんだと思う‥頭を掻きながら、視線をあちこちと彷徨わせていて。
私から視線をそらした先に、ウェインの姿を見つけると‥ウェインに対してそう言ったんだ。
でも‥
「このボクが居るのに気づかないなんて‥ラケさんも仕方ないなぁ。
 ああ、ボクは用事がありますので。‥他の方も帰ったみたいですし、二人で行かれてはどうですか?」
最初は大げさに「酷いなぁ」とばかりに、両手を肩の所まで挙げて‥おどけた様子を見せたウェインだったけど。
やがてウェインは、再びいつもの「斜め45度のポーズ」に戻るとそう言って‥って。
えっ!?ふ‥二人‥で?
「ふ、二人でって‥」
突然の事に、考える間もなく‥私の口からはそんな言葉が漏れてしまう。
慌てて周囲を見回してみると‥た、確かに‥私たち以外の面々は、もう既に帰ってしまった後‥みたいだった。
一通り周囲を見回した後、同じように周囲を見ていたリーダーと視線が合って‥
「ん‥そうだな、二人で行くとするか。‥なっ?ワランツ」
リーダーも「しょうがないな」とばかりに笑って‥そう言ったんだ。
‥二人‥リーダーと二人だけで、食事‥それってもしかして‥!
あ‥い、いや、浮かれてちゃダメだし、妄想に浸るのだってまだまだ早いよね。
とりあえず‥色々と考えるのは後にしよう。
まずはちゃんと、リーダーのお誘いに答えないと。
「あ‥えと‥は、はい」
私は、リーダーに向けて慌てながらもコクコク‥と頷いて。
そんな私を見て、リーダーも一つ頷くと‥「よし、とりあえずはジュノに帰るか」と言って、懐から帰還用のアイテムを取り出したんだ。
私もリーダーと同じように、道具袋からアイテムを取り出して‥そして。
‥私たち二人は帰還用アイテムの魔法を発動させ、黒く光る渦に包まれる。
刹那の後、魔法の渦も‥そして私たちも消え去った、その場所には‥
一人残された、ウェインが居たんだけど‥
「‥ふぅ、これで少しは進展するのかな。‥いや、ラケさんも相当な朴念仁だからねぇ‥どうなるやら」
そんな事をつぶやいているなんて、勿論私たちには知る由もなかった。

「そういや、最近は‥」
「そうですね、確かに‥」
ジュノにある、マーブルブリッジ‥所謂食事処、だね。
その中でも奥めいた場所にある、テーブルの一角に私たちは座っていたんだ。
私とリーダー‥二人が向かい合って席について‥あ、勿論注文はとっくに済ませたよ。
今はこうして、注文した料理が来るのを待ちながら‥リーダーと何気ない話をしていて。
‥何気ない話‥いつもリンクパールや、パーティの際に話すような、何の変哲もない話。
でも、今は‥それが特別な話に聞こえる。
それはやっぱり、周囲にみんなが居ない‥私とリーダー、二人だけの話‥だから?
傍から見れば、きっとなんとも思わない、普通の時間‥でも、私にはこの時間ですら‥。
‥っと、今はリーダーとの話に集中しよう。
うん‥折角の大事な時間なんだもの‥ね。
「お、料理が来たな‥!今日は俺のおごりだからな‥ドンドン食えよ」
それぞれ注文した料理が来はじめて‥リーダーは機嫌良さそうに言うけれど‥
ふふ、ドンドン食べていってるのはリーダーの方だ。
お皿が運ばれてくるなり、次へ次へと箸を伸ばして‥とっても美味しそうに食べてるんだもの。
でも‥リーダーの食べ方は決して下品な食べ方じゃあなくって‥えっと‥そうそう!
野性味溢れるというか‥ふふ、わんぱくな子供みたいに美味しそうに食べる、っていうか。
格好いい‥可愛い‥?二つを兼ね備えているような、そんな食べ方で。
‥あ、そうだった、一つだけ‥言い忘れていたことがあったんだけど‥
あのね、さっきも言ったけど‥私は男‥なんだけど、その‥‥男の人が好きなんだ。
おまけに、その‥好きな人が居て、その人っていうのは‥
‥言わなくても分かっちゃう‥かな?‥そう、リンクシェルのリーダー‥ラケインさんなんだ。
勿論、リーダーがそれを知っている訳も無くて‥私だって誰にも言ってない‥ううん、言えないよね。
もし‥もし、私がリーダーを好きな事が、バレてしまったら‥
リンクシェルのみんなに‥あるいは‥リーダー自身に。
そんな事になったら、きっと‥‥考えるだけでも、怖い事になっちゃうもの。
だから‥今はまだ、私の胸の中にだけ止めておけばいい‥って思うんだ。
そう‥今は、まだ‥。
と、ともかく、そんな訳だから‥その‥こうして二人きりで食事ができるのは、凄く嬉しいし‥
リーダーの一挙手一投足すら、その‥可愛かったり、格好よかったり‥って見えちゃうのかもしれない。
‥って、考え事はここまでにして、私も食べよう‥お腹は減ってきてるものね。
「はい、お言葉に甘えて」
私は、リーダーの「どんどん食えよ」の言葉にそう答えると‥
ふふ、テーブルに並べられた、色とりどりの料理を「どれにしようかな」なんて考えながら見回して。
とりあえず‥私は手近にあったウィンダス風サラダから手をつけはじめたんだ。
「そういやぁ、ワランツと二人で飯食うのって‥初めてだよな?」
サラダの具材‥ラテーヌキャベツを頬張った私に、リーダーからそんな言葉が投げかけられて‥
私は口をもごもごとさせながらも、思わずドキッとしてしまう。
‥なんて言えばいいのか‥もしかしたら、リーダーは私の事を意識してるのかな‥?なんて考えてしまって。
そんな筈は無いのに‥そう、きっとそんな筈は無いよ‥うん。
そんな都合良く、リーダーが私の事を‥その‥‥もう、考えるだけ無駄、無駄。
そういう事は考えずに、何気ない言葉を返しておこう‥うん。
「ふふ、普段はみんなと一緒ですもんね。確かに‥リーダーと二人だけで食べるのって、初めてかも」
「だよな?‥って、ワランツ‥ん~、二人きりになったんだから言うけどさ、
 良かったら、俺の事『リーダー』じゃなくて名前で呼んでくれよ」
え‥えっと‥ふ、二人きりになったんだから‥って、それって‥
あー、いや、それは思い過ごしだよね、うん、リーダーはそういうつもりで言ったんじゃない筈だ。
それよりも‥「名前で呼んでくれ」かぁ。
‥確かに、リンクシェルではリーダーの事、「ラケイン」って呼ぶ人も多いけど‥
そう呼ぶのって、なんだかその‥って、照れてる場合じゃないよね。
リーダーだって、そう呼んでくれ‥って言ってるんだし。
「わ、わかりました‥。それじゃあ‥えっと‥ラケイン‥さん」
わかった、と自分で言った割には‥
‥「ラケイン」と言うのがなんだか‥その‥照れくさくって。
消え入りそうなくらい、小さな声になっちゃったけど‥。
でも、ラケインさんにはちゃんと聞こえたみたいだった。
「おいおい、俺達確か同い年だろ?呼び捨てで良いって。『ラケイン』でさ。
 ‥もう一つ言うなら、ウェインとかケルンを相手にしてる時みたいに、気安く喋ってくれたらありがたいんだけどな」
私の言葉に、ラケインさんは「かたいこと言うなって」とばかりにそう言ってくれて。
あ‥後半はどことなく、照れた素振りも見えたんだよ。
ふふ、私から少し視線を逸らして、照れくさそうにトルティーヤをぱくぱくと齧っているところとか‥無性に可愛くて。
そこまで言われたら‥ね?私だって、勇気を出して‥って言ったらヘンだけど、ちゃんと言わないと。
「うん‥わかった。ありがとう、ラケイン‥」
今度は‥ちゃんと詰まらずに言えたかな?うんうん。
‥普段の会話も、意識しないで言えるようにしないとだけど。
「ん、こっちこそありがとな。やっぱさ、そういう風に気安く話してくれるのって‥嬉しいからさ」
そう言ったラケインさん‥いや、ラケインの顔は、気のせいかな?とっても赤くなっているように見えたんだ。

「‥しかしまぁ‥何だ。ワランツは成長したよな」
食事もほぼ食べ終えて‥今はお互い食後のメロンジュースを飲んでいた、そんな時。
それまで交わしていた、何気ない話から‥少しだけ空気が変わったような、そんな様子でラケインは話し始めたんだ。
そう‥それまでうっすらと浮かべていた笑顔が、少しだけ‥翳りを見せるように。
「せ、成長って‥?」
ラケインの言った言葉、「成長」の意味を考えて‥私は首を捻りながら聞き返した。
だって‥ね?ラケインと会ったのは、14の時だったけど‥
私はタルタル族なんだから、16歳になった今迄、身体的に成長はしていない‥と思うし。
「あぁ、いやな、2年前の出会った頃と比べたら‥って話だ。
 そうだな‥あの頃のお前はまっすぐで‥いや、今だってまっすぐなんだけどよ。
 今のお前は、まっすぐな上に強くなって‥頼もしく見えるんだ。特に戦っている時とかさ」
ラケインが、少し恥ずかしそうな様子を見せながら言った、その言葉に。
‥私は心の中で、強い高鳴りがするのを感じた。
だって‥だって。
そんな、私が頼もしく見える‥だなんて。
そんな事を言われたら、私‥ラケインの目の前で舞い上がってしまいそうな位に、嬉しい。
あ、勿論それだけじゃないよ。
ちゃんと「2年前に出会った」って覚えていてくれたこと‥それだって、私にとっては嬉しいことなんだ。
たかだかそんな事で‥なんて言われてしまいそうだけど、それは違うと思うんだ。
そもそも、私の所属するリンクシェルには、そこそこの人数が所属していて‥えっと、30人弱かな。
その1人1人と初めて会ったときの事なんて、覚えられないと思うし。
でも、ラケインは私と会ったときの事を覚えていてくれた。
それって、もしかして‥もしかして‥!
‥い、いや‥また私の早とちりなのかもしれない。
ラケインが私のことを‥なんて、きっと私の都合の良い解釈に過ぎないんだ。
だから‥落ち着いて、落ち着いて。
「私は、その‥強いかどうかはわからないけど‥
 ラケインに『頼もしい』って言われるのは‥嬉しいな。‥ありがとう」
当たり障りのない言葉‥かもしれない。
でも、嘘じゃない、本当のことで‥特に「ありがとう」という言葉には、めいっぱいの心を込めて言ったつもりなんだ。
本当は‥本当は、もっと言いたい言葉があるけれど‥
きっとそれはまだ、言うべき事じゃあ無いから‥。
そんな私の言葉に、ラケインは‥‥あれ?
いつのまにか、ラケインの表情からは‥恥ずかしそうな様子が消えていて。
なんて言えばいいのか‥どことなく真面目そうな‥そして、どことなく寂しそうな表情に変わっていたんだ。
どうしたんだろう‥?
「それに比べて俺は‥成長してるのかねぇ、なんて思う事があるんだよ。
 昔に比べて、腕は上がっているのかとか‥無意味に毎日を送ってきたんじゃねぇか‥ってな」
ラケインさんの言葉を聞いて、さっきの表情の意味がわかった‥けど‥けど。
違う‥そんな、そんな事ないよ!
「そんな‥そんな事無い!ラケインは、いっつもみんなの為に頑張っていたもの。
 腕だってそうだよ‥「後進のシーフの為にも、頑張らにゃあ」って、努力してたもの。
 ‥そんなラケインの姿、とっても格好よくて‥私‥」
いつも、リンクシェルメンバーみんなの前では明るくて‥元気で‥強気で。
そんなラケインで、ずっと居て欲しかったから‥なんて言ったら、私のわがままになるのかな。
でも、事実‥ラケインは成長していると思うから。
人間としても‥そしてリーダーとしても。
だから‥私はラケインの弱気な言葉に、思わず‥強い言葉が出ちゃったんだ。
それでも‥「私‥」の後に続けたかった言葉は‥口の中で消えてしまって、出てはこなかったんだけど。
でも‥でも、私のそんな思いは、ラケインに伝わった‥のかもしれない。
「ハハッ、そうか‥?‥ありがとよ。
 しっかし、なんだか不思議だな‥ワランツが相手だと、何だって話せそうな‥そんな感覚になっちまう」
ラケインの顔に、かすかに浮かんでいた、少し寂しそうな表情も。
すぐに消え去って‥いつもの笑顔に戻ったんだから。
本当に‥良かった。
「ふふ、そう言って貰えると‥嬉しいな」
私はそう言って、ワランツに微笑むと‥照れ隠しにメロンジュースに口を付ける。
メロンの甘い味と香りが、口に広がって‥ああ、美味しい‥。
そんな美味しい味を、口いっぱいに感じながら‥私は少しだけ、ある事を考え始める。
ラケインの言った「ワランツが相手だと、何でも話せそうな‥」っていう言葉。
‥私が相手だと、何でも話せるって‥それって‥わ、私に‥心を許しているというか、何というか‥その‥
もしかしたら‥もしかしたら‥!
いや‥でも、そんな訳‥‥ちょ、ちょっと待って。
‥今日、ラケインと色々なお話をして‥私はいくつかの「もしかしたら」を考えたけれど‥。
私自身、その「もしかしたら」に対して、「違う」って一刀両断してきた。
‥そんな事、あるハズが無いって。
でも‥よくよく考えてみると、「もしかしたら」が続きすぎてる‥様な気がしなくもなくて。
たとえば‥
私の早とちりを、「自分のせいだ」と言ってくれたこと。
私を二人きりで食事に誘ってくれたこと。
私に「名前で呼んでくれ」と言ったこと。
私になら何でも話せる、と言ってくれたこと。
いろいろな要因が浮かび上がってきて‥私の感じる「もしかしたら」の思いは変わっていく。
‥「もしかしたら」じゃなくて「きっとそうなんだ」‥って。
だったら‥‥私の気持ち、言ってしまえば良いんじゃないかな。
そう、私の気持ちを‥ラケインに。
‥勿論、そう思う一方で‥「でも、受け入れられなかったら?」と、警鐘を鳴らす自分も居て。
もしそうなれば‥ラケインと顔を合わせるのが辛くなって‥
声だって聞くのが辛くなって‥結果リンクシェルにすら居づらくなる‥かもしれない。
でも‥でも。
そんなリスクを抱えていると分かっていても尚、私はラケインに‥伝えたい。
私の気持ちを‥伝えたい。
だから‥と、私が決心した、その時。
「おっと、しんみりした話は終いだ。それよりも、俺、この前面白いモノを見たんだよ」
ラケインは、そういえば‥とばかりに話を切り出すと、少しだけ悪戯っぽく笑って、口早に言い始めたんだ。
真剣な話から、急に空気が変わった事で‥なんとなく私も「気持ち」を伝えづらくなって。
‥も、もうちょっと‥様子を見ようかな。
とりあえずは、ラケインの話に耳を傾けよう。
「面白いモノ‥?」
私は少しだけ首を傾げつつ、ラケインの話に相づちをうつ。
‥一体何の話だろう、って。
「あぁ、あいつの事なんだよ‥ほら、俺の天敵!ラケルト・ハケルト!」
ラケインは、悪戯っぽい笑みを浮かべながら、その名前を口にしたんだ。
‥えっと、軽く説明しておくね。
ラケルト・ハケルトさん‥っていうのは、私たちと同じタルタル族の男の人で。
なんて言えば良いのか‥ラケインと「色々と似てる」人なんだよね。
たとえばほら、名前がまず似てるでしょ?それから髪型も同じで‥メインジョブだって同じシーフだし‥
でもね、ラケイン曰く「あいつが俺のマネをしてるんだ!」‥なんだって。
どうしてそこまで意識するのかは分からないけど、なんでも子供の頃に色々とあったんだとか‥。
そんなこんなで、ラケインが「自分の天敵だ」‥って言っている人なんだけど‥本当はいい人なんだよね。
偶然二人が会う事があっても、ラケルトさん自身は、ラケインに向けて嫌そうには接していないし‥
私がお話しした限りでも、悪い人そうには見えないし‥まぁ、二人はウマが合わない、っていった所なのかな?
とにかく‥そんなラケルトさんの事で、「面白いモノを見た」って‥一体何を見たんだろう?
考えを巡らせる私に‥ラケインは話を続けていく。
「この前ウィンダスに居た時にな、ラケルトのヤツをたまたま見かけたんだが‥いや、びっくりしたぜ?
 あいつなぁ‥恋人が居たんだよ」
「‥恋人‥ですか」
ラケインの面白い話というのが‥想像とは大きく違って‥なんて言えば良いのか、それほど「面白い話」では無くって‥
私は思わずそんな腑に落ちない言葉を返してしまう。
‥いや、だってその‥ラケインにとって、ラケルトさんは好きではない人で‥
その人に恋人が居るのが分かった、ってなっても‥
‥あ、そうか、まだ話に続きがあるのかもしれないね。
「あぁ、そうだ。‥もっとも、その恋人ってのが‥男!だったんだよ。
 ‥いや、びっくりしたぜ?人気が少ないトコとはいえ、男と腕組んで‥もたれかかるようにして歩いてやがったんだからな」
私はその言葉‥思いがけないラケインの言葉に、思わず‥声が出ない。
‥いや、その‥ラケルトさんに男の恋人が居た、っていうのは‥まぁ、びっくりする話だけど‥それよりも。
問題は‥そう、ラケインがそれを「面白いことだ」って言った事‥だ。
‥それってやっぱり‥その‥「男が男と付き合うなんて考えられない、あり得ない」って考えているから‥?
だとすると、私の「思い」って‥やっぱり‥‥届くはずがない、のかな‥。
一旦そう考え始めると、私の中でいろいろな「思い」が‥音を立てて崩れていくのが分かる。
さっきまでの「甘い期待」は、儚くも崩れ去って‥「苦い現実」へと変わっていって。
そんな驚きと‥そしてショックとで、言葉が出ない私を尻目に‥ラケインは言葉を続けていく。
「驚いただろ?いやぁ‥まさかあいつがなぁ?男のくせに男が好きだなんてなぁ?ハハッ、笑っちまうぜ」
その言葉が‥私にとっては‥胸をえぐられるような痛みになったんだ‥。
聞くだけで‥耳が痛い‥心だって痛い‥そんな風にさえ感じてしまう言葉。
いつしか私は、自然と‥自分でも気付かないうちに、小さな声を漏らしていたんだ‥。
「そんな‥そんな事、言わないで‥」
ほんの‥ほんの小さな声で‥私の声なんて、誰にも聞こえていない‥そう思ってた。
でも‥それは違ったみたいなんだ‥私の言葉が、ラケインには‥聞こえていたようだった。
ラケインは話を止めると、いかにも「どうかしたのか?」と聞く様な表情で‥私に声を掛けてきたんだから。
「え‥?なんでそんな‥って、もしかして、お前‥」
ラケインのその言葉に‥そして少しトーンの下がった声に、私は思わずビクリと震える。
もしかしたら、「私の気持ちに気付かれてしまったのか?」って‥考えたから。
でも‥そんな私の予感は外れたみたい。
「お前‥もしかして‥もしかして、お前もラケルトの事‥!?」
そう‥悪い方向で。
そんな‥そんなハズが無いのに!
確かにその‥ラケルトさんとは親しく話をしてる事もあったけど‥でも‥でも!
そんな‥そんな風に‥思われるなんて‥。
「違う‥違うのに‥そんな‥私は‥‥‥う‥ううぅ‥」
驚きと‥悲しみと‥切なさと‥いろいろな気持ちが私の中で渦を巻いていて。
気がついたときには‥涙が零れていたんだ。
ラケインさんの前で‥しかもこんな時に泣いちゃだめだ、って思っていても‥
涙は次から次へと溢れてきて‥止まらない‥止まらないんだもの。
「お、おい‥‥わ、悪かった、俺が悪かったから‥。‥‥その‥泣き止んでくれよ‥」
ラケインも、私が急に泣き始めたことに‥慌てたみたい。
席から身を乗り出しながら、私にそう言って‥謝ってくれて‥。
でも‥違う、違うんだ‥。
確かに、その‥ラケインは勘違いをしたけど‥それが悪いんじゃないもの。
‥勘違いをされるような、そんな事を言った自分‥態度を取った自分が悪いんだもの‥。
だから‥だから、早く‥涙を止めなきゃ。
私がそう思ったから‥という訳じゃあ無いと思う‥思うけど、涙はすぐに止まって。
私は目を擦るようにしながら、涙を拭いて‥そして‥‥ラケインをまっすぐ見たんだ。
ラケインの顔は‥困惑したような、そんな表情をしていて。
そりゃあそう‥だよね。
きっとラケインは、私がどうして泣き出したのか‥その理由だって分からないだろうし。
だから‥だから。
「ごめん‥なさい」
私の「ごめんなさい」に、ラケインは驚いた様な表情を見せる。
そしてすぐさま‥私に向けて口を開いたんだ。
「な、なんでお前が謝るんだよ。‥悪いのは‥」
「違う‥違うの」
そんなラケインの言葉‥きっと「悪いのは俺の方だ」と続けようとした言葉を‥私は遮る。
‥だって、それは本当の事だもの。
ラケインは悪く無い‥それに‥
「‥違う‥って‥」
「確かに、その‥私がラケルトさんの事を好き、っていうのは違うけど‥。
 でも‥それを差し置いても、その‥私には謝らなきゃいけない事が‥あって‥」
もう‥もう。
なんだか、自分の気持ちを‥隠しておけないような、そんな気がするから‥。
だから、ラケインに‥伝えようと思ったんだ。
‥こんな場だけど‥こんな状況だけど‥でも‥
「謝らなきゃ‥いけないこと?」
尚も不思議そうな表情をして、私を見るラケイン。
そんなラケインに向けて‥私は口を開く。
‥どう転んでも、これから‥大きく状況が変わっていく事になる‥そんな言葉を言うために。
私は‥ラケインの目をじっと見つめながら‥口を開いたんだ。
「私‥‥ラケインが‥‥ラケインの事が‥‥好き‥です‥」


 
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